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「白鵬」連れて国技館➀

2016年09月13日 | 読書
 『白鵬のメンタル』(内藤堅志  講談社+α新書)


 初めての大相撲観戦、国技館行きを決めたので、何か「予習」をしようと考え、取ったのがこの新書。読み始めようとしたとたんに「白鵬休場」の報道があった。それはないよと思った。間違いなく現役最強力士の姿を見られないとは…。楽しみはいくらか減じたが、それに勝るいくつかの楽しみはあると勇んで両国へ。



 秋場所初日、満員御礼。初めての聖地にはたくさんの発見があったが、それはさておき、取組は波乱の幕開けだった。大相撲を見ている方なら、誰もが注目している稀勢の里。タクシーの運転手、夕食時の隣席の人たち、翌日の寄席での落語のマクラ…頻繁にその敗戦が語られた。それはまさしく「メンタル」だった。


 著者はスポーツトレーナーとして10年以上も白鵬を見続け、実際にその能力開発に携わっている。当然、「白鵬礼賛」的な内容であることは否めない。しかし、その点を割り引いても、なるほどと納得できた。この新書の副題は「人生が10倍大きくなる『流れ』の構造」。まさに様々な勝負を決する「流れ」が語られている。


 「流れ」とは実に平凡な言葉である。ここで言う流れとは身を任せたり反発したりする外的なことではなく、あくまで内的な自分で作り出す流れを指す。いうなれば、流れを自ら作り出せる者が才能を育て、成功することが結論だ。そのための手立てが白鵬を例に述べられている。メンタルを強くする流れのことだ。


 「感覚を言語化すること」は間違いなく大きなポイントだ。もちろん前提は多いが、「流れ」のなかでは最も大きいのではないか。私たちが力士に持つイメージとは距離があるかもしれない。しかし勝者に必要な「型」や「武器」も、言語化によって意識づけられ、稽古の習慣化によって技能となる。土俵で結果が出る。