(20180204 「佐藤信淵」幟はためいて)
2018読了14~「村上さんのところ」へ五日間③
『村上さんのところ』(村上春樹 新潮社)
学生(小から大)や教員からの投稿が結構あった。「学校」「教育」をダイレクトに訊く内容もある。この作家は、その類に関してあまり積極的に意見を述べない印象があるし、実際に分量は少ない。しかし世界中で読まれている日本人作家が、少しそっけなく教育について語っている文章は興味深い。
Quote 078
道徳というのはまわりの大人が率先して見せるものであって教えるものではないような気がします。いくら教えても、大人がそれを実行していないようでは、子供は納得しませんよね。
Quote 337
学校を拒否するのは敗北ではありません。ただの宣言です。その力を良い方向に向けなくては。
Quote 458
高校3年間を過ごすにあたって、ひとつだけやるべきこと?自らを健全に懐疑することではないでしょうか。
これらに加え、国語の授業が苦痛な12歳の小学生には「適当にやり過ごして」と語り、子どもを読書好きにさせたいと願う教師には「本当に本好きなのは1割」と言い切っている。「村上さん」の幅の広さは相当なことが窺える。結局、今この国が陥っている、人工培養的、即効主義的な現場に対するアンチテーゼだ。
具体的な表現はないが、自己省察という観点が強いと思った。実際に教育課程でも重視されているはずし、授業にそういう場もあるが、教える側の「本気度」がどれほどかが決定的であろう。「悩める教員2年目」の読者に対して「どこから切り取られてもいいような先生になってください」と願う深意を噛み締めたい。
Quote 338
教育というのは、あなたが子供たちに与えるだけではなく、あなたがあなた自身に与えるものでもあります。責任は大きいですよ。