すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

更衣着(きさらぎ)の本読み

2018年02月21日 | 読書
2018読了16
 『ぱんぷくりん』(宮部みゆき・黒鉄ヒロシ PHP文芸文庫)


 手練れの作家宮部が「気がふさいで」いる時に、身近にある縁起物などを題材に「楽しい話」を書いた。おそらく編集者がそれに目をつけ、黒鉄に漫画をつけてもらい、ちょっとユニークな絵巻のような本に仕上がった。「宝船のテンプク」「招き猫の肩こり」と題だけでもイメージの広がる、実に奔放な物語であった。


 「縁起物」とは何か。辞書の意味は「吉事の到来を祝い祈るための品物」。それらが事件に巻き込まれる、また反乱(そこまで大袈裟ではないが)を起こした時、それはいかにして収まるものか。収まり方から見えたのは、人間にとって「吉事」とはきっと、縁起物に込められる気持ちそのものではないかという想いだ。



2018読了17
 『世にも美しい日本語入門』(安野光雅・藤原正彦 ちくまプリマ―新書)


 このシリーズでは「世にも美しい数学入門」を読んだ記憶がある。日本語の美しさを語るのが、画家と数学者であることに大きな意義がある。それは世代的、個人的な経歴等にも大きく関係あるが、どちらも「美」を、しかもかなり対照的な美を追求してきたはずだ。表現、思考の言語と真正面から対峙してきた両者だ。


 日本語の持つ造語力の素晴らしさはよく言及される一つだが、改めて気づかされた。数学で「確率」を「確からしさ」と言い換えた頃があったが結局淘汰されて今は使わない。いかに本質をつく簡潔な言葉が強いかのいい例だ。翻訳言語に限らず「真似→工夫→独創」の文化を作りあげた日本人の底力を見る思いがした。