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求められるのはタフさ

2018年02月17日 | 読書


2018読了14~「村上さんのところ」へ五日間④
 『村上さんのところ』(村上春樹 新潮社)


 かつて飲食店を経営し、物書き以外の音楽、猫、ランニング等々の多彩な趣味嗜好を持つ。また当然ながら海外文学や映画などにも造詣が深い。毎年「ノーベル文学賞候補」になり(「正式な候補」はないと著者は記すが)迷惑そうだ。お気に入りの作家にカズオ・イシグロの名を挙げていたのは、さすが?と思った。


 知ってはいたが、本当に音楽の幅は広くその話題もずいぶんあった。ジャズ、クラッシック、ロック…かなり意識的に聴き込んでいる。単なる趣味と呼べない範疇にあるのだ。「新しい音楽を聴くことが億劫になってきて」という質問に対して、次のようにさらっと応えられる高齢者(笑)は、そんなにいないのではないか。

Quote 034
 積極的に常に新しい音楽を聞き続けるという努力(かなりの努力です)をしていかないと、耳は確実に衰えます。


 「村上さん」独特の性的表現に関しては読者の立場によって、様々な反応があるものだ。不倫をしていて…という内容が目立つことも特徴か。そういう傾向に不安を持つ若いファンもいたりして面白い。女子高生にダイエットのことを訊かれ、「体重を減らす三つの方法」はこれしかないと応えたのはチャーミングだ。

Quote 048
 ①食べ物を減らす(適正な量にする)
 ②日々適度な運動をする 
 ③恋をする
 最後のやつはけっこうききますよ。


 宗教、カルト、原発(「核発」という語を使用)のことなど重い話題で締めつつも、ややオヤジギャグっぽい表現があったり、深刻な相談に対してもふわっとスルーしていく回もあったりして、退屈しなかった。編集後記で「村上さん」の「一に足腰、二に文体」という言葉を知った。一番求められるのは「タフさ」である。