すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

現場愛にあふれる姿

2018年11月01日 | 雑記帳
 町図書館主催「小さな朗読コンサート」が開かれ、児童文学作家のくすのきしげのり氏の話を聴いた。学校から引率され中学1年生が前半の朗読コンサートに参加した。生徒による朗読、作家自身の朗読も確かによかったが、小学校教員経験者であるくすのき氏の語りかけが抜群だった。現役教員に届けたい内容だった。



 中学生から仕事の話を訊かれ、自分が徳島に居て活動を続け世界中の人とつながり合って本づくりをしている点を知らせ、こんなふうに語った。「今の世の中は、クリエィティブな仕事はどこにいても出来る。秋田でもできる。だからこそ、人と会うことを大切にしてほしい」。問題を見据えた、勇気づけのある言葉だ。


 影響を受けた本について尋ねられたくすのき氏が、中学生は知らないだろうけれど、と挙げた著者は、森信三佐藤一斎だった。バックボーンを垣間見た思いがして、納得した。作品に必ず盛り込みたい要素として「子どもの笑顔」そして「信じられる大人」の二つであることに教育者としての確固たる信念を感じた。


 キャリア教育は現場でも確かに根づき、学校外でもその語が結構流布しているが、常に忘れていけない点を確かめる時間にもなった。生徒を引率してきた教師から「子どもへの声かけ」について問われたくすのき氏が、応えたことは「子どもに、将来何になりたいかと一緒に、どんな人になりたいかを問う」ことだった。


 つまり「何に」は仕事や職業を訊いているが、「どんな人に」はいわば人格を問うていると言っていい。「優しい」「人の役に立つ」「友達が多い」「父のように頑張る」…内面に持つ願いを表出させその観点で子どもを見る。そうすれば日常の些細な出来事であっても数多く評価できるはず…。現場愛にあふれた姿だった。