すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

23.7㎏出発、2冊到着

2020年05月09日 | 読書
 連休中に何度目かの古本処理をした。今回はダンボールひと箱。それでも大き目なので、念のため重量を測ったら23.7キログラム。かろうじて無料ラインに収まった。手元から手離す本があれば、またどこかから呼び寄せる本もあり、賑わいを避けている世間とは裏腹に、毎日プラットフォームに行き交う人ありだ。


 『社会を動かす企画術』(小山薫堂  中公新書ラクレ)

 10年前の発刊で、ちょうど著者がTVで『小山薫堂 東京会議』を始めたときと重なっている。お気に入りの番組なのでよく観ているが、そのテイストを強く感じる一冊だと思った。大雑把に「企画」というけれど、その根はこの新書の「はじめに」に書かれてある、この一節に尽きるように思えた。

 「自分の仕事に、世の中の『徳』をどう考え出せるか。」

 すべてのアイデアはそこに通じているような気がする。もちろん、それを面白がるエンジンを心に持たねば出来ない。それは誰にでもあるものだが、起動させておかないと冷え切ったり錆びついたりする。だから常にアイドリングしていることが必要なのかな。言葉もお金もそんなふうに使いたい。



 『金曜日の本』(吉田篤弘 中公公論新社)

 ずっと著者の小説を読んできた。「」の人だと勝手に思っていたが、実はいわゆるスマートな感覚とは別次元だなと感じていた。それが自らの幼少年期を描いたエッセイを読み、訳が分かった。昭和の匂いをぷんぷんさせた姿が、当時の様々な周囲の意匠とともに思い浮かべられる文章だった。

 それにしても巧いと思わせられる表現がいくつもあった。放課後に仲間としていたドッジボールの輪をふと離れて校舎に忍び込み、ひとけのない図書室に入る。もともと読書好きだった著者は、棚に並んだ本の背表紙の言葉を目で追っていく。そして、その様子をこんなふうに綴るのだ。

「ほとんど聞こえない静かな声で本は語りつづけるようだった。だから、図書室や図書館はいつも静かなのかと納得した。」