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ちょっと、ちょっとの顛末

2020年05月12日 | 雑記帳
 『いきな言葉 野暮な言葉』(中村喜春 草思社)は、芸者から通訳になり長く米国在住したという異色経歴の著者が、花柳界の言葉などを取り上げて使用例を示した本で、書名に惹かれて購読した。90年代の発刊、昭和テイストが色濃く反映された中身だったので斜め読みペースだったが、こんな言葉で立ち止まった。

 「ちょっと」

 ごく普通の言葉という前置きもしながら「芸者仲間の暗黙の了解」と表して、なかなか粋な使い方を伝えている。そう言えば…と改めてこの「ちょっと」を辞書で引いてみると、今さらながら面白いと感ずることが多い。まずは漢字表記。「一寸」は普通に読めるし使う人もいるが、もう一つあった。「鳥渡」と書く。


 調べてみるとどちらも当て字であり、「一寸」は意味から、「鳥渡」は音からとされている。「チヨウ」と「ト」ということだ。こんなふうに書いている人は残念ながら見たことがない。クイズなら出そうなレベルだ。意味は、考えてみればわかりそうなこととはいえ、広辞苑では副詞として五つに分類されている。

 ① わずか。少し ②(逆接的に)存外。かなり。 
 ③しばらく ④ほんのついでに 
 ⑤(否定の語を伴って)少しのことでは。そう簡単には。



 ちょっといいでしょ。家のハナミズキ 2020.5.12

 他の辞典には「感動詞」として「軽く相手によびかけるときのことばとして用いる」も載っている。これはずいぶん頻度が高い。使い方としては同等もしくは目下へということになろうか。言い方でずいぶんニュアンスが変わる。例えば「ちょっと、ちょっと」などは、場を想像すると実に様々な心情が適用される。


 ちょっと(として)した驚きを超えて、ちょっと(として)感心した。ちょっと(して)考えてみて、ちょっと(として)書けると思ったのだが、ちょっとそうはいかなかった(として)。