すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

結局毎年ソージャネーカ

2020年05月05日 | 読書
 「連休巣籠り読書」とかStay Home Readingなどと題してみようかと考えたが、結局毎年ソージャネーカということに気づいた。
 ゴールデンウィークは「山菜とり」と「読書」と「片付け」と「町内祭り(当番時)※ただしこれも今年から時期が変わった」だけなのだ。
 この期に及んで変わらぬ暮らしを送れる幸せよ。
 まずは「小説編」から。


 『出会いなおし』(森 絵都  文藝春秋)

 六篇からなる短編集。さすがの筆致だと唸る。正直「テールライト」という一つだけは少し馴染まなかったが、あとは場面の選び方といい展開といい、まさに名手と呼びたい。表題作はもちろんだが、それぞれの作品が「出会いなおし」という書名にしっかりとつながっている。

 「年を重ねるということは、同じ相手に、何回も出会いなおすということだ。会うたびに知らない顔を見せ、人は立体的になる」

 人生とは出会いなおしの連続、言うには簡単だが、その意味を自分に引き寄せて考えられるか。まず「出会い」を疎かにしないことが大切だ。しかしそれに気づくのは大抵の場合、時が過ぎ去ってから…。ただ「なおす」心を失わなければいつだって可能だ。そんな読後感の残る一冊だった。



 『続・横道世之介』(吉田修一  中央公論社)

 『横道世之介』は吉田作品の中でも大好きな一冊だ。最近やや難解な感じをうける小説もあるので、この時代にある軽快さが懐かしくなった。前作は映画も面白く観た印象がある。この続編を読了してからも、録画してあった映像を見直してみた。「人生のダメな時期」の価値がまぶしい。

 この「続」は、一つの舞台として2020東京五輪がありなんとなく複雑だが、世之介の存在はそんなこととは関係なく、関わり合った人々の中に生き続ける。話の中でマラソンに出場する「亮太」が、世之介に子ども時代に掛けられた何気ない一言の重さが沁みてくる。

 「…いいか、亮太。弱い人間っていうのは、弱い人からおもちゃをとろうとする人のことだぞ。逆に、強い人間っていうのは、弱い人に自分のおもちゃを貸してあげられる人のこと。分かるか?」

 今、このシンプルな姿勢はなにものにも替え難い。