和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

中断読書。

2009-09-05 | Weblog
古本ソムリエの日記を見ていたら、
草森紳一著「本の読み方」の書評がありました。

そこに、

「草森紳一は、読書についても、彼らしい考えを持っている。読書は中断が面白いという。読書は、中断の連続であり、別な所へ引きずりこまれたり、考え込んだりする、そこのところがいいのだというのだ。草森氏にとっては、これこそが一日たりとも本を手から離せない大きな理由なのだそうだ。」


私は中断するとそこで、即そこで途絶読書(笑)。
そこが、ちがうなあとおもいながらも、
「読書は中断が面白い」という言葉は、
私みたいなパラパラ読みにはお墨付き。
もっとも、私にはこれしかない。
一冊最後まで読み通す実行力がない。
という、ないないづくしの私であります。
それでもいいのだよという、お墨付き。
ということで、ありがたや。ありがたや。
ハイ、ありがたい言葉。
草森紳一著「本の読み方」は、これにて、買わずに御免。
ということにいたします。
ということで、これでいいのだ。
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キュウリ。

2009-09-05 | 幸田文
司馬遼太郎著「風塵抄」に、28「表現法と胡瓜」という文あり。

昨日、なめこ味噌汁をとりあげたので、きょうは胡瓜(笑)。

司馬さんの文の最後の方に黄色い胡瓜について、
「戦国末期ぐらいまでの日本は、胡瓜は黄に熟れてから食べたらしいのである。
当時、滞日したイエズス会士ルイス・フロイス(1532~97)というポルトガル人の宣教師が、その文章のなかで、【胡瓜はヨーロッパでは未熟の青いのを食べるのだが、どういうわけか、この国では黄に塾してから食べる】とくびをひねっている。」
とあります。そしてそのあとに、

「・・・・江戸時代になると、青いままで食べるようになった。その証拠がある。胡瓜は、夏の季題である。いまとはちがい、胡瓜のシュンはみじかく、これが出はじめると八百屋の店先が黄でなくみどり色であふれた。以下は、辞典で知った当時の俳諧だが、

    胡瓜いでて市(いち)四五日のみどりかな

という句があるそうである。胡瓜の青さの寿命はみじかい。・・・」


司馬さんの文の中頃には、こうもあります。

「中国の現代史で、プロレタリア文化大革命というのは、毛沢東が演じた病的な政治現象だった。このため中国の発達は五十年遅れた、といわれている。
その時期の最後のころ、私は中国に行った。場所は中国領シルク・ロードのあたりである。そばに、タクラマカン大沙漠がひろがっていて、うっかりこの沙漠に水なしでまぎれこむと、人間がスルメのように乾いてしまうのである。なにしろタクラマカンとは【入ると出られない】(ウィグル語)という意味がある。ところで、そのむこうに、中ソ国境がある。
『この間も、ソ連からきたスパイをつかまえました』
と土地の共産党幹部がいった。スパイというのは、ウィグル人の老人とその孫の少年で、この二人は沙漠をこえてきた、とその幹部がいう。どこかとぼけた話なのだが、スパイである証拠は、胡瓜だという。袋に食べのこしの胡瓜が入っていたというのである。右はプロ文革当時の思い出の一つである。それはさておき、沙漠の旅の必携品は、胡瓜であることをこのとき知った。胡瓜が水筒がわりになる。
胡というのは、中国人が古来、周辺の異民族全体に対してそうよんだ。胡という語感に、デタラメとかトリトメナイというひびきが古来あり、いまでも中国語で、フーホワ(胡話)といえばたわごと、フーイヤン(胡言)といえばでたらめ話という意味になる。」


河童に胡瓜という連想が、おもわずはたらきました。

さて、司馬さんの文のはじめが、魅力がありました。
こんな箇所があります。

「・・この欄に書くべきことを思いつかぬままテレビをつけると、
『酢の物は、歯ぎれがかんじんです』
と、まことに本質を射ぬいたことばが、とびこんできた。
土井勝さんの料理の時間だった。
私は料理がわからないものの、
この人の表現力には、毎度感心する。
たれにとっても、表現は本質的であるほうがいい。
それに、短ければ短いほど、ことばというものは光を増すのである。
さらには、論理に密着しつつ、感覚的であるほうがいい。
右の場合、歯ごたえまで感じられそうである。」

ついつい、おもしろくて後ろから前へと引用してしまいました。
料理と表現。
というのは、なにやら面白そうだなあ。
幸田文からはじまって、台所・料理と結んでゆくと
なにやらアンソロジーができそうな気がするのでした。
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