和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

点々々と。

2013-06-15 | 詩歌
竹中郁少年詩集「子ども闘牛士」(理論社)に
枇杷即興と題した詩があるのでした。

その詩は、角川書店の「竹中郁全詩集」にも
はいっている。
ちがいは、旧仮名とのちがいなのでしょうが、
最後の行がはっきりと違っておりました。

少年詩集では

「膝の上 点々としずく滴(したた)る」

とあるのですが、全詩集は

「膝の上 点々々としづく滴る」

となっており、「々」がひとつ余分にあるのでした。
うん。私は、けっこう食事の際に、こぼして食べる方で。さすがに
枇杷を食べる際には、最初から、新聞のチラシを下に敷いて
皮をむき食べるのでした(笑)。

ということで、全詩集にある方の詩を引用

   枇杷即興

 子はみな寝た
 妻はたつた今風呂へ行つた
 机の上をかたづけて
 ほつと一息

 何かたべる物はないかな
 ひとりで捜る厨(くりや)のたな
 何かないかな おや あつた
 枇杷の実の二粒三つぶ

 二十年(はたとせ)まへ
 いま吾家のある処は
 かつて虚弱(かよわ)かつた息子のために
 父上がテニスコートとして給はつた土地

 息子は父に叛いて
 けふ乏しい才に詩を書いて售(う)る
 テニスの球に興じながら何気なく捨てた種は
 庭に大きく成木して見事な実を誇る

 それも これも
 二十年の時のうつろひ
 枇杷の実をしづかにむけば
 膝の上 点々々としづく滴る



ちなみに、この詩「枇杷即興」は
昭和19年2月刊行の第六詩集「龍骨」にありました。
コメント (2)
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