和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

白墨の板書。

2015-04-01 | 短文紹介
名古屋のチョーク「フルタッチ」の製造会社
羽衣文具さんが廃業なのだそうです。
検索すると、3月31日付で廃業のご案内が
載っておりました。

ということで、
学校の白墨にまつわるエピソードを
外山滋比古著「思考力の方法 聞く力篇」
(さくら舎)より引用。

「かつては習字、書道が重視されていたから、
師範学校でみっちり書道の勉強をさせられた。
手本は文部省関係の書家(昭和ヒトケタの
ころは鈴木翠軒という書家であった)の書い
たもので、全国統一されていた。
卒業するころには、みんなそろって手本
そっくりの、美しい楷書の字が書けるように
なっていた。こどもたちは、先生の書く字を
見て、先生を尊敬した。うちの親たちが我流
で書く字などと比べて、天と地の違いがある。
習字の時間には、先生が大筆に墨をふくませ
て字を書く。その美しさは、何もわからない
一年生にもちゃんと伝わる。
そのころはひどい就職難で、大学を出ても
つとめるところがなくて、小学校の代用
教員をする人がいた。そういう先生は
楷書の書き方を知らない。
白墨の板書もだらしなく、すわりがわるい。
うっかりすると、行書のくずれた字を書く。
こども心にも、これはダメだと思ったり
するのである。
こどもたちは、水茎の跡(筆跡)うるわしい
正教員の先生の字とひき比べて、バカにした。
いまはほとんどなくなったが、すこし前まで、
戦前の師範学校教育を受けた人がいた。
まったく未知の人でも、字を見ただけで、
『この人は師範学校出身』とわかるのである。
美しく風格のある律儀な文字は、師範学校を
出ていないと書けない。
字を書くことにかけては、昔の師範学校は
世界的にも比を見ない教育をしたのだが、
話すことばにはまったく関心がなかった。」
(p105~106)



コメント (2)
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