和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

兼好の「虚言論」。

2020-07-23 | 本棚並べ
徒然草の第73段を、沼波瓊音は評して

「兼好の心は又緊張して来て、ここに綿密なる
『虚言論』を説いた。面白い。上から見たり、下から見たり、
側面から見たり、と云彼の観察は、実に敬服に値する。・・・」

と解説をはじめておりました。
徒然草は、気になる一冊ですので、
気がつくと、つい古本を買っています。
はい。読まないのにね。

この機会に、第73段の数行を、何人かの訳で引用してみます。
まず原文

「げにげにしく、所々うちおぼめき、よく知らぬよしして、
さりながら、つまづま合せて語る虚言(そらごと)は、
恐ろしき事なり。・・・・」

沼波瓊音の訳(大正14年初版)だと
「ここに一つこう云う嘘の話し方がある。それは、
さも本当らしく、すべて明瞭にわざと云わないで、
所々不明に云って、よくは私も知らぬがと云う態度で、
しかし、不明瞭のやうに話しながら、要所要所はチャンと
辻褄を合せて話す、と云うこの虚言に、聞く人をして
大抵信ぜしめるから、一等怖しい事である。」

橋本武訳(平成1年)では
「ところがいかにももっともらしく、
ところどころは話をぼかし、自分もよくは知らない
のだがというゼスチャーをとりつつ、しかしながら、
話のツジツマを合せて語るウソは、誰でもひっかかり
やすいので恐ろしいことである。」

橋本治訳(「絵本徒然草」)では
「本当らしく所々をぼやかして、よく知らぬふりをして、
そのくせ端々の辻褄を合わせて語る作り話が恐ろしいんだな。」

永積安明訳では
「いかにももっともらしく、ところどころぼかして、
よく知らないふりをして、それでもつじつまを合せて
語る嘘偽りは恐ろしいことである。」

大伴茫人訳では
「もっともらしく、所々不審そうに、よく知らないようなふりをして、
それでいながら、話のつじつまを合わせて語る嘘は、かえって
人が信じてしまうので恐ろしいものである。」

安良岡康作(やすらおかこうさく)訳は
「また、いかにもほんとうらしく、
話の所々を不審がって、よくも知らない風をし、
そのくせ、話の端々をつじつまを合わせて語るうそは、
誰でも信用するので、恐ろしいことなのである。」

はい。どの現代語訳がピッタリするのかどうか。





コメント
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