山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

南部町の渓谷を探索するが・・・危険!  令和2年10月18日

2020年10月19日 | シダの仲間
 南部町の渓谷の中に珍しいシダがあるとの情報をいただいた。しかしその場所はかつての遊歩道が数ヶ所で崩落していて数年前から通行不能となっている場所である。行けるのかどうか、かなり心配で、ネットでいろいろ調べたがここ数年の記事は沢登りの人たちの遡上記録以外はほとんど出て来ない。行けなければ諦めるしか無いが、久しぶりのヘルメット装着と10m、30mの2本のザイルを持って自己責任でこの渓谷に入ってみる。


    久しぶりのヘルメット装着とザイルを2本持ってのバリアンスルート装備で渓谷に入る。


    倒木があるが途中までは渓谷の遊歩道が使える。


    こんなところにこんな網目模様の美しい植物が生えていた。


    キヨスミヒメワラビ


    尖った白い鱗片が特徴的で、南部町の渓谷沿いでは良く見かける。


    タチシノブもたくさん生えていた。


    問題の崩落地がここである。向こうに遊歩道の柵が見えるがこの斜面はとてもではないが進めない。

 現れた崩落地をそのまま直進することは危険すぎて出来ない。そこで少し戻って緩そうな斜面から河原に下りれないかどうか探ってみる。途中までは行けるが最後の渓谷に下りるところは断崖絶壁である。ザイルで懸垂下降したとしてもその下はゴルジュの深い淵になっている。下りられそうもない。道に戻って崩落地を大きく上に回り込んで越えることにする。


    渓谷の河原に下りられそうな場所を探っている時に見つけたエビネ。


    苔の生えた倒木に生えていたエビネ。10株以上生えていた。来年は花を見に来てみたいがそれなりの覚悟とヤマヒルが・・・。


    クモキリソウも生えていた。


    崩落地を回り込んで下りると反対側に細い沢があった。


    その脇に生えていたのはエビネでは無くてオモト。


    そしてこちらの沢の中にもこの葉が数株生えていた。

 崩落地を越えるにも斜面が急でもちろん踏み跡など無く一苦労である。そして遊歩道にたどり着きその先に進むが、またまたスッパリと崩れ落ちていて遊歩道は崩壊していた。河原まではまだ40~50mくらい下りなければならない。落ちたらかなり危険、ここで30mザイルを取り出し、脆そうな支点しか取れないので3ヶ所で固定してザイルを頼りに崖を15mほど下降する。その先はなんとかザイル無しで下りられそうだ。下りたは良いか登れるのか?少しばかり不安がよぎる。


    ザイル下降した先にあった遊歩道の残骸。かつては普通に下りられたのだろう。


    降り立った渓谷。深いゴルジュでとてもではないが側面からは降りられなさそうだ。


    大きな滝が流れ落ちている。別の世界にでもさまよい込んだ様な景色だ。


    先ほど立ち寄った小さな沢も側面から滝になって流れ落ちていた。


    花の終えたアケボノソウ

 さて、だいぶ手間と時間がかかったがなんとか目的の渓谷までは降りることが出来た。時刻は午後2時、帰りの崖登りに苦労するであろうから3時には引き返したい。探索時間は1時間ほどである。目的のシダは見つかるであろうか?


    たくさん生えていたこのシダ


    イヌチャセンシダ


    裏側の翼を確認。この渓谷はイヌチャセンシダの宝庫だった。


    後ろに見えるのが滝だったが白飛びしてしまった。このシダは苔の生えたこんな渓谷沿いの湿った場所を好んで生育している。


    目的のシダは数株だけ出会うことが出来た。手前にあるシダと向こうのサジランに隠れているシダ。


    オクタマシダ。一見するとコバノヒノキシダに良く似ているが、こちらのほうが大型、かつ葉が厚くて固い。


    別株。微妙に高い位置に生えており三脚がうまく立たずブレてしまった。


    別角度から撮影。既に痛んでしまっていて状態があまり良く無い。


    裏側からは向こうに滝が入る良い角度で撮影出来た。本日のベストショット。


    包膜のある長楕円形のソーラスは裂片の中央付近に付着する。裂片の形は切れ込み方がコバノヒノキシダに比べて不規則である。

 なんとか目的のオクタマシダに出会うことが出来た。もう少し周辺を探索したかったがあっという間の1時間で3時を過ぎてしまった。たぶんもっとあるはずだし、葉も痛んでいたので是非とも再訪したい、と言いたいところだが、ここまで下りるにはそれなりの覚悟をしてこない来れない。しかし素晴らしい渓谷なので、シダの状態が良い夏のシーズンにヤマヒル対策を施しながらなんとか再訪してみたいと思う。


    手強い渓谷だったが収穫は十分だった。



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ヒメスズムシソウ(ラン科)

2020年10月19日 | ラン科
 亜高山帯から高山帯の日当たりの良い草地に生育する多年草である。花期は6~7月。生育地での個体数は少ない。山梨県では2017年に発見され、2019年に専門家を交えた調査と遺伝子解析が行われヒメスズムシソウと確定された。そして2020年1月に山梨県指定希少動植物種(指定種)として追加指定された。全国的には4~5ヶ所での生育が確認されているが山梨県に生育している個体は個体数、生育状況とも良い状態にある。


    ヒメスズムシソウ 平成29年7月撮影 発見された当初の個体。


    同上 ジガバチソウに似るがヒメスズムシソウは唇弁が下向きに反り返る。


    同上 


    令和1年7月撮影。上記と同じ場所の個体。個体数は変わっていないが、手前にある草がむしり取られている。撮影のためにむしる者が居るのは残念である。


    同上


    同上 時として数株固まって咲くことがある。

 きわめて稀少な種であるので今後の保護対策が重要であろう。


 ⇒山梨県の希少野生動植物種と指定種・特定指定種について

 ⇒山梨県の絶滅危惧の植物 ~科別分類~

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ムシトリスミレ(タヌキモ科)

2020年10月19日 | その他の植物
 亜高山帯~高山帯の湿り気の多い岩場や草地に生育する多年草の食虫植物である。花で虫を捕食するのではなく粘性のある葉の表側で捕食する。花期は6~7月。紫色の花は一見スミレのようで美しいが花の中はグロテスクである。山梨県では八ケ岳に生育しており個体数はあまり多く無い。


    ムシトリスミレ 平成29年7月 八ヶ岳で撮影


    同上 拡大。粘液の付いた葉で虫を捕える。


    同上 草地の中に生えた個体。


    平成28年6月 八ヶ岳で撮影。岩の隙間に生えた個体。


    同上


    平成28年6月 八ヶ岳で撮影。草地の中に生えた個体。


 ⇒山梨県の希少野生動植物種と指定種・特定指定種について

 ⇒山梨県の絶滅危惧の植物 ~科別分類~

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タガソデソウ(ナデシコ科)

2020年10月19日 | ナデシコ科
 山地の落葉広葉樹林の林床に生育する多年草である。あまり群生せずにパラパラと咲いており、目立たない花である。花期は5~6月。山梨県での生育地は北杜市の山域の極一部に限られているが個体数はそこそこにある。


    タガソデソウ 平成27年5月 北杜市で撮影


    同上 この年は比較的たくさん咲いた。


    同上 タガソデソウの花。地味な花で目立たず、絶滅危惧種とは思えない。


    平成27年5月 駒ケ岳神社の境内に咲いていた花。今はこの場所では見られない。


    平成25年6月 北杜市の山域で撮影。


    同上

 ➡山梨県の絶滅危惧のナデシコ科およびサクラソウ科植物一覧

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