Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

生き延びたトリスタンとイゾルデ

2021年08月24日 06時30分35秒 | Weblog
第16回〈世界バレエフェスティバル〉―ベジャール振付「椅子」上演にあたって
 「2.老人:セミラミス、お客さまですよ。さあ、急いで。お待ちかねだよ、お客が。
 家内はけっしてうそはつきませんですよ。
 そりゃ、わたしどもは年寄りですが、恥ずかしい真似はいたしません。
 お茶をお飲み、セミラミス。あなたがわたしのイゾルデになってくださったら。そして、わたしがあなたのトリスタンに。美しさは心の中にこそあるのです......おわかりでしょう。


 ウジェーヌ・イヨネスコの「椅子」に基づくバレエ作品。
 「95歳の老人と94歳の老婆が、おびただしい数の椅子が運び込まれた舞台で過去を振り返りながら、人生の意味についての重大な発表をするために姿の見えない客を呼び集めるという設定」らしいが、「年老いたトリスタンとイゾルデ」というのは絶妙である。
 Liebestod (愛の死)を生き延びて95歳・94歳になった二人は、時間の中で迷子になってしまい、美しい過去の瞬間を探し求めているようである。
 これはもはや、バレエというよりは、バレエを裏側から眺める演劇のようなものである。
 プログラムの中にこの種の”アンチ・バレエ”をぶち込んでくる主催者とフェリ&ロマンには拍手を送りたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする