「吉本興業はこの日「当社は2024年2月22日をもって、プラス・マイナス岩橋良昌(いわはし・よしまさ)とのマネジメント契約を解消しました」と発表。 経緯について「岩橋はX(旧Twitter)等のSNSにおいて、関係者の名誉を毀損する不適切な投稿行為や配信が認められたことから、当社はマネジメント会社として、その都度面談のうえで注意指導を繰り返し実施してまいりました。当初は2月21日にも岩橋と面談いたしましたが、その直後に当社からの注意、要請に反する投稿を行うに至ったことから、これ以上のマネジメント契約の維持は困難と判断し、やむなく契約解除通知をするに至りました」と説明した。」
毎年実施されている法テラスの研修では、「毒入りシャンプー問題」というのが出てくる。
テーマは、
「私がスーパーでシャンプーを買うと、必ず毒が入っているんです。訴えたいのですが、どうしたらよいですか?」
といったたぐいの相談にどのように対処すべきかというものである(こういう相談をする人は、たいていの場合、職場や家庭で孤立しており、相談する相手がいないことが特徴であるが、この点をまず押さえた上で、丁寧に話を聞き取り、問題点を把握する必要がある。)。
もちろん、定まった正解というものはないのだが、講師の先生は、例えば、以下のような対応は誤りであると指摘する。
・「ご指摘の件は、法的な問題ではありませんので、この窓口では対応しかねます。」
・「幻覚や妄想ではないかと思いますよ。病院に行かれたらどうですか?」
特に、「病院に行ってみては?」というのはタブーである。
そう言われて病院に行く可能性は皆無に近いし、病識のない相談者が逆上したりする(懲戒請求してくる)おそれもあるからである。
結局のところ、うまく誘導して医療(又は福祉)につなげるべき問題と思われる。
例えば、「よく眠れていますか?」とか、「お体に調子の悪いところはありませんか?」などとヒヤリングしていき、自発的に病院に行くよう誘導をするわけである。
だが、「言うは易く行うは難し」というのが実情であり、近隣トラブルなどのそこそこ大きな事件に発展し、(遠い)親族や行政が動き出して初めて問題が解決に向かうことも多いようだ。
こうした観点から言うと、あくまで私見ではあるが、今回の吉本興業の措置には問題があると思う。
例えば、社員に何らかの病気(双極性障害など)の疑いがあるというのであれば、場合によっては自傷他害の恐れがあるため、雇用主としては、医療につなげるべきではないかと思うのである(もちろん、うまく誘導する必要がある。)。
親族であれば、医療保護入院を検討すべき状況だというのに、相談すべき親族や友人がいない人物を会社が見放してしまうと、最も必要な医療へのアクセスが絶たれてしまいかねない(実際、自殺してしまうケースもある。)。
ところで、先日私は、「自由と正義」の最新号を見て、唖然とした。
それは、一緒に仕事をしたことのある先輩弁護士が、弁護士会からの度重なる督促にもかかわらず書類を提出しなかったなどという理由で、業務停止という重い懲戒処分を受けていたからである。
あくまで私の個人的な印象であるが、その方については、事件処理におかしいところがあるというのではなく、打ち合わせの内容などを「たちまち忘れてしまう」というので困った経験があった。
はっきり言えば、若年性認知症などのために、記憶に障害が生じていることが極めて強く疑われたのである。
もっとも、本人に病気の自覚があるという気配はみられなかった。
これも、周囲が本人に通院等を勧めていれば、もっと適切な対応が出来たという気がするのだ。
なので、書類の不提出などという理由で懲戒をしてしまうというのは、ちょっと酷ではないかと思ったのである。
まとめると、理解困難な言動を見せる人に対しては、一応「病気」を疑ってみて、必要に応じて医療へのアクセスを確保してやるというのが、なすべき対応ではないかと思うのである。