「されど我らが日々」とか「ノルウェイの森」「二十歳の原点」に通じるような
あの時でしか感じられないような焦燥感に満ちた作品
「死ぬと分かっていたらしたいことはなんですか?」
寝床には「万葉集」の文庫本が置いてある
時々指差しで適当なページを開いて良さそうな歌を見つけて
覚えるとはなしに味わうと、おおらかなストレートな表現が
伸び伸びとしていて心地よいと感じる
実は万葉集のなかで一番好きな歌は、少し女性っぽいかもしれないが
坂の上郎女の
「夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものそ 」
有名な「茜さす、、」の額田王の歌も音もリズムいいが、ある映画とセットになって
こちらのほうが印象に残っている
最初にこの歌を見たときの本は最後の「そ」が「を」と印刷されていた
「夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものを」
個人的にはこちらのほうが切ない感じで好ましく思うけれど、どうやら「そ」
のほうが正しいらしい(残念)
ところである映画とは森田芳光監督の「それから」
松田優作と藤谷美和子が主演の映画で、淡々としかし徐々に緊張感を感じさせる映画だ
この万葉集の歌のように「知らえぬ恋」を代助と三千代がお互いに秘めているとして
映画を最初から見始めると、、、それはそれは切ないものとなる
ストレートに感情を表せない、、その仕草だけで感じてほしい、、
そのところが、受けての想像力を刺激してとても余韻のあるものとしている
どうも何事もストレートにわかり易すぎる表現よりは、ちょいと考えさせたりするほうが
好きなようだ(京都人はそういう傾向があるとか、、もっとも京都人ではないけれど)
ところで万葉集の中からもう一つ、山上憶良の
「銀(しろかね)も金(くがね)も玉も何せむに勝(まさ)れる宝子に及(し)かめやも」
これは、初めて教科書で読んだ時、大人たちはそう感じていてくれるのか、、と
嬉しく思ったことを覚えている
今年は元号の関係で万葉集が話題になるらしい、、
話題にならないよりは良いが、変に日本はすごい!のキャンペーンに使われないといいのだが