おそらく今年読んだ最後の本になるのが
「平安人の心で源氏物語を読む」山本淳子
来年の大河ドラマの予習を兼ねて手に入れた
多くの人が死ぬ戦いのシーンでは落ち込みそうになった今年の「どうする家康」よりは
紫式部がヒロインの来年の大河ドラマ「光る君へ」は安心して見られそうだ
今でも思うが、読んでおいてよかったと実感するのが「源氏物語」
(現代語訳で瀬戸内寂聴さんのもの)
ストーリーは浮気者の光源氏の話と思いきや、女の品定めとか嫉妬とか悪霊が出たり
年増の女性をものにできるか、、などというとんでもない話もあれば
父として息子にかける思いとか、母の子どもに対する思い
恋愛の上では結果的に光源氏がしっぺ返しを受けるようになる話やら
まるでトレンディードラマのような宇治十帖など、、
そしてその時代のしきたりや趣味などがとても面白くて、
なるほど、これが後世に残るのは十分理解できると思ったものだ
この本は解説本だが、読む前にこの本に接するよりは一通り物語を読んだあとに
読む方が良いと思われる
自分は源氏物語を雑な読み方をしたと思っていたが、この本を読んでみると
思いの外いろんなことを覚えていたことに驚く
これはゲームを解説本の力を借りずに試行錯誤でクリアしたほうが
覚えているのと似ているかもしれない
そして予想外に覚えていたことは、ちょいと誇らしい気もした
それにしても深読みとか味わい読みというのはあるもので
ずっとこの分野に関わっていた専門家の解説は興味深い
タイトルの「平安人の心で」というのは、源氏物語が「あの話か、、、」
と当時の人は想像できただろうという思いのもと解説されている
あの時代の人達には冒頭の光源氏のお母さんの桐壺の存在は、当時の一条天皇の定子
(清少納言が女御として務めていた)に対する思いを想像させるものだったようだ
そしてそれは定子の辞世の和歌
「知る人もなき別れ路に今はとて 心細くも急ぎたつかな」
(知る人もない世界への旅たち この世と別れた今はもう
心細いけれど急いでいかなくてはなりません)
と、桐壺の辞世の歌
「限りとて別るる路の悲しきに いかまほしきは命なりけり」
(もうおしまい。悲しいけれど、この世とは分かれて旅立たなければなりません
私が行きたいのはこんな死出の道ではない、生きたいのは命なのに)
がどこか似ているテイストなのは、著者によれば偶然ではないらしい
ところで、ゆっくり味わうべきかもしれないこの本だが
今年の傾向で焦って読んでしまいそうなのが不安
何かに追われている訳ではないのに、何故焦っているのだろう