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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

アメリカ海軍 空母ジョージワシントン火災と空母キティーホーク維持

2008-05-24 19:25:21 | 国際・政治

■航空母艦『ジョージワシントン』で5月22日、火災事故

 報道などによれば、8月に横須賀基地配備となる原子力航空母艦『ジョージワシントン』(1992年就役、満載排水量102000㌧)が、太平洋上において火災事故を起こしていたことが発表された。ジョージワシントンの火災事故は軽微なもので、原子炉区画などには影響無いとのこと。

Img_0992_1  事故は22日0750時(現地時間)頃、ノーフォーク海軍基地を4月に出港した同艦は、南米沖の太平洋を太平洋岸のサンディエゴ海軍基地に向けて航行中に艦尾の空調・冷凍区画から火災が発生、消火には数時間を要し、1名が火傷を負い、23名が消火作業中のヒートストレスにより手当てを受けたとのこと。事故発生時には、随伴するフリゲイトに対して洋上補給を実施していたが、被害は無いとのこと。『ジョージワシントン』は、真珠湾で日本に前方展開中の『キティーホーク』と交代式を行い、横須賀海軍施設に向かう予定。デビット・ダイクオフ艦長によれば、ダメージコントロールは有効に機能したとのこと。

Img_1056_1  米海軍の航空母艦には、飛行甲板、そしてその一層下に居住区を挟んで航空機格納庫と艦尾にエンジン整備区画など、その下層にも二層の居住区があり、その下の水線よりも下の区画には機関区間などを内蔵しており、その後部は電子機器などの修理や機関管理を行う作業場が配置されている(参考:世界の艦船536号)。火災は、後部の居住区に影響を与えたという報道があるので、報道を信じれば水線より上の区間で発生したと考えられる。ニミッツ級空母には、最大で2900㌧の弾薬搭載能力があり、航空燃料1320万?と原子炉2基を搭載している(参考:世界の艦船600号)が、報道写真などをみると一層上の航空機格納庫が煙に霞んでおり、消火活動を終了した消火要員が撤収している様子が写っている(ただし、報道によれば、今回の航海では3200名が乗り組んでいると報道、乗員は航空関係要員を含め5900~6000名とされるので、弾薬や航空燃料の搭載は、あくまで最大搭載量として参考までに掲載した)。他方、誘爆防止のスプリンクラーを作動させた形跡などは無いため、火災規模はそこまで大きくなかったということが見て取れる。

Img_0977_1  航空母艦で火災、しかも原子力推進方式ということで、日本のマスメディアでは横須賀配備途上の航海中ということも併せて否定的な報道が為されている。他方で、原子力航空母艦を含むアメリカ海軍航空母艦は第二次世界大戦の戦訓から消火作業の能力が重視されており、可燃物である航空燃料は艦底の貯蔵庫から飛行甲板までの導管が艦外に導設され、着艦失敗に伴う航空火災なども想定している米海軍航空母艦が火災で大きな損害を被ることは可能性として非常に低い点を留意しておきたい。

■空母キティーホーク 米本土配置後も現役に?

 ジョージワシントンと交代するかたちで、除籍されるとみられていた通常動力空母キティーホークに関する話題。

Img_1173  星条旗紙(米軍の機関紙)によれば、原子力空母『エンタープライズ』が炉心交換などで長期整備に入る2012年以降数年、アメリカ海軍の航空母艦勢力が現行の11隻から10隻に減少する可能性があり、米海軍全般の任務遂行能力維持の観点から問題があるとして、『キティーホーク』を維持した場合のコストについて、アメリカ下院の軍事委員会が調査を行うことに承認していたとのこと。

Img_1107  『キティーホーク』は1961年4月に就役しており、艦齢延長工事(SLEP)も限界に達しているとの指摘があるが、『エンタープライズ』も就役が1961年11月であることから、艦齢の延長は必ずしも不可能では無いともいえる(ただし、十数年に一度、数年間の炉心整備に伴い任務から外れる原子力空母と、一年程度の整備で現役に戻り稼動状態を続ける通常動力空母を同列に論じるには、一考の余地があるかもしれない)。なお、米海軍では、『キティーホーク』に関して予定通り除籍するとしている。

HARUNA

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