北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

中国四川省へ国際緊急人道支援任務 航空自衛隊C-130H輸送機派遣

2008-05-29 13:55:39 | 国際・政治

■中国へ航空自衛隊輸送機派遣を検討

 犠牲者が刻一刻と増加する中国四川省地震災害、家屋倒壊も多数に上った中国では、テントの不足が深刻化しており、中国側の自衛隊機による物資輸送の要請を受け、政府は航空自衛隊のC-130H輸送機の派遣を検討しているとの事(私事ながら超絶多忙な中で一筆)。

Img_8109  国際緊急援助隊派遣法に基づく派遣となるが、中国国内への自衛隊機派遣は、航空自衛隊の政府専用機を除けば初めてのこととなる。現在、派遣が検討中と報じられるC-130H輸送機(昨夜の時点ではチャーター機による輸送も検討されていた)は、自衛隊の保有するテントや毛布などの物資を搭載し、北京や成都に輸送するとされ、被災地への直接輸送任務には充てられない模様。

Img_4439  正直なところ、成都といえば第二次世界大戦中はB29の発進基地として用いられた場所であり、相応の反日感情があるのでは、と一瞬頭をよぎったのだが、レスキュー隊を中心とした国際緊急援助隊救助チームや医療関係者を中心とした国際緊急援助隊医療チームは現地で歓迎され、任務を遂行、または遂行中である。

Img_9535  今回、輸送する物資は、自衛隊が全国で備蓄中の天幕や毛布、これには民間のものも含まれるとされる。新聞報道では言及されていないようだが、一応天幕は需品器材として防衛装備にあたる。これは、ややもすれば武器輸出三原則に示された“防衛装備の共産圏供与”という内容になる。一応、そのまま供与は問題があるということから、外務省の国際協力機構(JICA)に送り、JICAが送るというかたちを採る。本来は、緊急援助物資はJICAが備蓄しているのだが、ミャンマーサイクロン被害に伴う供与により、在庫が品薄となっていたため自衛隊の装備品を物資として引き渡すこととなった。

Img_4330 中国側の支援要請の背景については色々とみることができる。輸送機そのものについてならば日本のC-130に対応するA12輸送機派生型が多数あり、イリューシンI?76も14機(更に34機の増強予定)があるわけで、稼働率が相当低いのか、それとも日本との信頼を醸成するという政治的意図があるのかは微妙なところだ。

Img_3054  政治的意図と記したのは、北京、成都までの輸送を要請しているということで、2005年のパキスタン地震における山間部への陸上自衛隊ヘリコプター派遣のような、被災地への直接支援は行わないと、現時点では報道されている。しかし、被災地への直接支援が目下緊急の課題であり、これは中国側の面子の問題があるのか、それとも派遣自体が目的なのかが分かれるところ(まあ、米軍のC-17が成都に派遣されている報道をみると前者の方が可能性は高い)。

Img_9471  今回の中国側の要請では、人的支援の要請は行われなかった。四川省の震災を教訓として、日米中(場合によっては六カ国協議参加国)の合同防災演習を今後実施の方向で検討し、補完的地域機構として、若しくは信頼醸成措置の一環として検討しては、と考えたりもする(防災演習が憲法上行使が禁止されている集団的自衛権行使にあたるかは微妙な問題ではあるが)。

Img_3048  四川省地震の被害は、犠牲者以外にも被災者や経済的損失を加えれば天文学的な被害額を残す、文字通り中華人民共和国建国以来の激甚災害という位置づけであるが、他方で、負傷者の搬送能力や耐震強度、災害派遣に関する技術の限界など人民解放軍の限界を示す結果ともなった。こうした中で、昨日の自衛隊派遣要請という異例の事態となった訳である。

HARUNA

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