北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

NATOはウクライナを如何に迎え入れるか【1】NATO外相会談経てストルテンベルクNATO事務総長発言

2023-05-20 20:03:14 | 国際・政治
■これが欧州の総意か?
 ゼレンスキー大統領訪日と共に広島で開催中のG7主要七カ国首脳会議がウクライナを議題としてます。

 NATOはウクライナ戦争後のウクライナ安全保障にどのようにアプローチするのか。NATOのストルテンベルク事務総長は、4月5日に行われたNATO外相会合に際し、その記者会見の場でNATO全体の立場としたうえでウクライナについて現時点での加盟申請受付については言及せず、将来的にNATOへ加盟させる可能性について示唆しました。

 ウクライナが仮に2022年の時点でNATOに加盟していた場合、ロシアのウクライナ侵攻によりNATO条約第五条が発動し、第三次世界大戦が勃発していたところでした。具体的には加盟国一国への攻撃がNATO全体への攻撃とされる条文があり、NATOは自動的に参戦します、また加盟していたならば即応戦闘群が駐留していた可能性も高いのです。

 全面戦争、特に今回の事態はフォークランド戦争やアメリカ同時多発テロのような限定戦争ではなく緒戦の段階で首都キエフを狙う全面戦争となっています。この場合、NATOの欧州連合軍最高司令部は、どの程度策源地攻撃を見込むかは別として、即応戦闘群支援にアメリカ、イギリスやフランスとドイツイタリア軍を増強展開していたのは必至でした。

 抑止力の観点からは、第三次世界大戦も辞さない厳しい姿勢で相手の侵略を抑止する、政治的選択肢から外したうえで外交交渉という選択肢を強いるという理解があるのですが、一方で相手がこれを軽視したうえで開戦となっていた場合は、戦場でロシア軍とアメリカ軍が戦闘となっていた確実な状況があり、これは現在以上に厳しい状況だったでしょう。

 ストルテンベルク事務総長の発言は、現在のロシア軍侵攻が仮にひと段落したと仮定したうえで、おそらく現在の朝鮮半島南北軍事境界線のような状況、大量の兵力が対峙する状況を予見したうえで、NATOに加盟させ、再度戦闘が再発しない状況、NATOによる抑止力を行使したい、と認識があるのかもしれません。これは欧州の立場なのかもしれない。

 欧州の立場というものは幾つかの段階に分けて考えるべきですが、一つは“ウクライナ支援疲れ”というもの。つまり“次にロシア軍が戦力を立て直してウクライナへ侵攻した際に2022年と同じ規模のウクライナ支援を行う余地がない”という認識に依拠し、今度は戦争が起きないようにNATOがロシア軍に備え強力な抑止力を提示する、というものです。

 ウクライナのNATO加盟可能性示唆、ストルテンベルク事務総長の発言は“いつまでに”という期限を区切ったものではなく、その上で“ウクライナが独立国であり民主主義国である必要”を合わせて提示しています。これはロシア占領下のウクライナが亡命政権などを樹立しても加盟申請ができないことを意味しているのでしょう。しかしそれだけなのか。

 フランスは第二次世界大戦中にドゴール亡命政権がフランスの国家継承を宣言し、連合国に参加しています。ストルテンベルク事務総長の発言は、ウクライナが今後劣勢となった場合を想定、これは東部バフムト攻防戦でさえ苦戦するロシア軍には想像が難しいのですが、頑張ってキエフ攻略に進み、この場合に亡命政権ができても加盟不能、という認識か。

 亡命政権という視点はもう少し突飛すぎるかもしれませんが、民主主義制度の定着をストルテンベルク事務総長が明示した背景にはもう一つ、現在のウクライナでは汚職の問題があり、コメディアン出身のゼレンスキー大統領も汚職撲滅を掲げしがらみのないことを理由に支持を集めている、言い換えれば現在の制度ではまだ汚職が残っている、とも。

 民主主義制度の定着、その定義に汚職対策を含めているのであれば、即座にはウクライナがNATOに加盟できない理由であり、特に現在は戦時内閣を組織し議会制を停止した体制での戦闘を行っている、戦時国家状態であることから、現在の戦闘をひと段落しロシアとの停戦交渉を妥結させたうえで国内改革を行うまで加盟申請はできない、とも受け取れる。

 モラトリアム的ではあるけれども、本音としては今の段階で介入した場合、NATOのF-35はモスクワ上空を乱舞することで一気にウクライナ戦争の方をつけることができるものの、それは全面核戦争の懸念に直結するゆえにNATOとしてはウクライナ加盟を現段階で行わせることは出来ない、その為に理由付けを行い加盟申請を実質拒否している、構図か。

 集団安全保障機構であるNATO,そしてもう一つはウクライナ政府が堅持し国民の支持を集めるクリミア奪還と東部二州占領地奪還の問題です、NATO加盟各国の懸念には仮に停戦した場合で上記地域がロシア占領下のままの場合、ウクライナがこの地域の奪還を行うことを懸念し、その為にNATOに加盟させ行動を制限させる意図があるのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】葵祭,青空の京都は新緑溢れる五月の鴨川をわたり下鴨神社へ向かう京都三大祭歴史行列

2023-05-20 14:41:09 | 日記
■上皇猊下も天覧
 晴れてよかったという言葉を改めてかみしめるのです。

 葵祭、行ってきました。例年五月のこの季節は忙しくなってしまい、まあ毎年観ようと思えばみられるし、ねえ。と悠長に構えていましたらやってきたのは歴史行列ではなくCOVID-19の災厄、そう、もう丸々三年間、葵祭の行列そのものが無かったという。

 上皇猊下と上皇后陛下が天覧されるという葵祭、考えてみれば凄いことなのだなあ、令和時代を迎えられて良かったと感慨深いのですが、それと同じくらい感慨深いのは、果たして撮影する事は出来るのか。撮影場所も大切なのですが、先ず現地へ行けるのか、と。

 月曜日は忙しいホントに忙しい、残念だ、かなしい、せめて火曜日ならナア。こう思っていたところに不幸中の幸いと云いますか、月曜日が雨天となり、火曜日に順延となりました。火曜日も忙しい、残念だなあ、というよりも順延が決まったので猛烈にお仕事した。

 火曜日は午後からなんとか時間を確保できたのだけれども、引き継ぎを早めに終われば行列の開始には間に合わないけれども、正午近くになんとか行けるかもしれない、すると1030時に京都御所を出発するところは間に合わないけれども、葵橋のあたりまでは行けるか。

 河原町今出川のあたりならば、間に合いそうか。大規模な交通規制が敷かれる京都市内ですが、脇道は確実にぬけられる幾つかの経路が有りますので、移動経路を慎重に考える。すると、行けたのだけれども府警さんが、立ち止まって撮影しないようよびかけている。

 行列を視られただけでも良かったと考えまして、わたしも行列のように、立ち止まらずに歩きながら撮影、と。望遠レンズで圧縮効果を狙うのも良いかもしれませんが、しかし歩きながらでもなかなか良い絵になるものなのですね。それにしても晴れてよかったです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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G7広島サミット開幕-ゼレンスキーウクライナ大統領訪日G7サミット出席と単独"広島ビジョン"核軍縮の課題

2023-05-20 07:00:12 | 国際・政治
■臨時情報-G7広島サミット
 バイデン大統領が一時米国債務上限問題により来日が危ぶまれた際にはG7サミットの前途を憂慮しましたが、杞憂でした。

 ゼレンスキーウクライナ大統領が、G7広島サミットへ出席するべく訪日します。驚きました、いや今回のG7サミットは前回の伊勢志摩サミットよりも遥かに厳しい警戒態勢が敷かれ、これは何かあるのではないかという声をお聞きしたのですが、当方は昨年の安倍元総理暗殺事件を受けての警備強化だろう、と踏んでいたのです。しかし、そうではなかった。

 ゼレンスキー大統領は本日土曜日に日本へ到着し、日曜日に演説するという。戦時下の大統領訪日は過去に例がなく、この為に不測の事態が在ってはならないということでの警備強化といえるでしょう。核兵器廃絶や気候変動対策と金融危機という問題はありますが、ウクライナ戦争が拡大し核戦争となっては気候変動対策さえできない、サミットの主題だ。
■防衛装備供与の覚悟を
 日本はウクライナ支援に武器を含まない事で中立を保とうとしていますが、肝心なロシアがこの日本の姿勢を中立と評価していない点は忘れるべきではない。

 日本はそろそろ腹を決める時ではないか、具体的には一個中隊でも90式戦車を供与するとか、ウクライナ本土防空に一発でも必要なホーク地対空ミサイルなどの供与の決断です。90式戦車、まだ本州では第9戦車大隊や第10戦車大隊に第13戦車中隊と、ひとつ前の74式戦車は残っているところですが、北海道ではいよいよ90式戦車の退役が始りました。

 90式戦車、ウクライナへ供与しても使うのは当面の間だけですので、用途廃止した車両を解体せず、整備した上でウクライナ軍へ引き渡せばよい、増強小隊の5両でも中隊所用の13両でも、自衛隊で用途廃止した車両は更に税金を掛けて解体します、それくらいならば、日本はロシアから中立国と見做されていないのですし、装備を供与して良いのではないか。
■単独声明“広島ビジョン”
 核兵器国が核兵器を維持している背景には核抑止力の均衡というものもあり厳しい立場であることも多少留意すべきなのでしょうが。

 核軍縮について、岸田総理大臣は単独声明“広島ビジョン”をまとめました。これは核兵器国を含めての合意形成が事実上不可能である点を踏まえてのものでしょう。ただ、“広島ビジョン”は単に核軍縮を題目的に掲げるのではなく、“不透明な核武装”を排して透明性を確保することにより、先ず核軍拡の停止を盛り込む、実利的な施策が含まれるという。

 不透明な核武装、これは米ロに関しては保有核兵器が戦略兵器制限条約などにより明確化されていますし、イギリスはポラリス交換協定により弾頭の数が管理され、フランスも明示している、しかし中国は核弾頭数を200発以上と発表した後に明確な数字は伏せており、少なくとも1000発弱、数年内に大台を超えるとされています、この透明化ならば、G7の合意も得られるのかもしれません。

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