北大路機関

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【日曜特集】小牧基地オープンベース2019【4】KC-767空中給油展示とOH-6のはやい帰投(2019-11-09)

2023-05-14 20:21:35 | 航空自衛隊 装備名鑑
■KC-767空中給油輸送機
 初号機の岐阜基地到着を見上げたものですからKC-767はある意味で特別な機種といえるかもしれません。

 KC-767空中給油輸送機とF-2戦闘機による給油展示、小牧基地航空祭の一つの名物です。いや実際に給油している訳ではないのですが、こう密集して編隊を組んで飛行してくれますと、空中給油機の配備されている基地なのだ、という実感がわく。他の基地でもやるが。

 F-2戦闘機などは北大路機関創設当時は支援戦闘機、という呼称が残っていましたが、もともとF-86戦闘機がF-104戦闘機の配備開始により陳腐化した際に、500ポンド爆弾を搭載して反跳爆撃を行い日本に接近する敵艦隊を叩く装備として、支援戦闘機区分が生まれた。

 ソ連のミサイル巡洋艦に500ポンド爆弾片手に亜音速のF-86戦闘機で戦うのは恰も台湾沖航空戦やマリアナ沖海戦のような状況になりそうですが、ロプチャー型戦車揚陸艦位が相手ならばなんとかなるのか、いやならない、としてF-1支援戦闘機が開発されています。

 F-1支援戦闘機は、限界がいろいろある航空機で、まず超音速練習機が基本型であるので重量のある対艦ミサイルを二発搭載すると機動性がかなり厳しい、基本設計が1960年代なので中距離空対空ミサイルが搭載出来ない、まともな電子戦装備を搭載していない、など。

 ASM-1空対艦誘導弾、ただ射程40kmのミサイルを搭載しているので攻撃が成功する可能性は十分あった、そしてF-1を置換えるF-2戦闘機は射程を150km以上に伸ばしたASM-2空対艦ミサイルを4発搭載、中距離空対空ミサイルも搭載でき、区分が戦闘機となる。

 KC-767空中給油輸送機とC-130輸送機の空中給油展示、恐らく、なのだけれども先月実施したスーダン政情不安邦人輸送任務で、このKC-767空中給油輸送機とC-130H輸送機の空中給油を、実任務で行っている。これにより現地への移動時間を半分以下に短縮した。

 C-130H輸送機は、これでも導入当時は“航続距離が長い!周辺国に脅威を与える”とか“外国を侵略するつもりだろう”とか、いや内局や大蔵省の官僚からも“俺の目の黒いうちはC-130は導入させない”と反対論が在った機体ですが、性能を見ればフツーの輸送機です。

 戦略輸送機・戦域間輸送機・戦術輸送機、輸送機というものは旅客機を転用した人員輸送機や連絡機を除けばこの三種類に区分でき、戦車はじめ重装備を積んで世界中にどこでも行けるが長大な滑走路が必要な戦略輸送機、An-124輸送機やC-5B輸送機などがこれ。

 戦域間輸送機は、世界中ではないがかなり遠くまで飛行でき戦車程度や装甲車ならば搭載出来るとともに野戦飛行場でも充分発着できるという装備、C-17輸送機と共に生まれた定義で、Y-20輸送機とIl-76輸送機にA-400M輸送機とC-2輸送機が含まれるものです。

 C-130H輸送機はその一つ下の戦術輸送機で、戦域といういわば一つの戦闘地域内で運用するというものです。過去自衛隊が初めてモザンビークへPKO部隊を派遣した当時は五日間掛けて現地まで飛行しました、飛べる距離が短いので何度も着陸する必要があるのです。

 アフリカへ日本からC-130輸送機で向かうのは、所用時間的に普通列車だけで快速に乗らず鹿児島から北海道の稚内まで行くようなものです、行けない距離ではないのですが、普通はテレビ番組や学生や好事家の電車に乗る為の旅行以外では、やらない選択肢ですよね。

 スーダンへは空中給油機を使う事で経由地に着陸する事無く移動したのだと思う、現地までの到着は28時間くらいでしたので、これはまあ、語弊はあるが寝台特急なは、寝台特急トワイライトエクスプレスを乗り継いで鹿児島から札幌まで移動する様な所要時間という。

 1980年代の“航続距離が長い!周辺国に脅威を与える”とか“外国を侵略するつもりだろう”と云っていた方々は、こういう状況ならば、非戦闘員は平和憲法を守るために自決せよ、とでもいうのだろうか、飛んでくる銃弾にケンポーキュージョで落とせとでもいうか。

 邦人輸送任務は、課題はあった、今回はスーダンの首都ハルツームから輸送拠点となったジッダまで700kmを避難民がチャーター車両で自走して移動する事が出来たのですが、もし戦闘地域がもっと広範囲広がっていた場合は陸上輸送も自衛隊が検討する必要があった。

 輸送防護車というオーストラリア製ブッシュマスター耐爆車両を陸上自衛隊は8両程度装備していますが、今後のこうした状況を考えると、ブッシュマスターと同程度の車両を普通科連隊の高機動車の後継車両として大量配備し、派遣する体制も必要ではないかと思う。

 C-130H輸送機、そしてこれは良い輸送機なのだけれども、老朽化がかなり進んできています、なにしろ自衛隊が導入して40年を経た。後継機が必要だ。数が必要な輸送機だからC-130J-30を15機揃える選択肢と、少数のC-2輸送機で置換える、どちらになるのだろう。

 小牧基地からは美しい山が一つ見えます、岐阜県の伊吹山です。そしてこの岐阜県には岐阜基地があり、その岐阜基地に隣接して川崎重工岐阜工場が、ジェット練習機と輸送ヘリコプターに観測ヘリコプター、哨戒機とそして輸送機の製造を担当している。C-2もね。

 UH-60救難ヘリコプターが離陸準備を開始します。この離陸準備の様子をかなり後ろの方から撮影したのだけれども、やはり基地というのは水はけを考えて航空機格納庫は一段高い位置に建設されているのですね。最前列の方が飛行機が見やすいのが分るのだけれど。

 発着の様子を格好よくカメラで写真に収める、という航空祭の醍醐味はあるのですが、しかし純粋に発着ならば、平日に何とか休みを確保するならば日常訓練を公園や県営名古屋空港から撮影出来ない事はない、すると航空祭らしい撮影位置は、と考えてしまうのだ。

 C-130H輸送機の機動飛行が行われます。C-130H輸送機というのはアメリカのロッキードマーティンが製造、いや開発当時はロッキード社でしたが、戦術輸送機の決定版というべき装備でした、そのひとつ前の決定版という輸送機はC-46輸送機で、良い輸送機でしたが。

 C-46輸送機、よい輸送機じゃないか、とKC-46空中給油輸送機を見上げながら云わない様に、別物です、KC-46空中給油輸送機はボーイング767が原型機ですがC-46輸送機は民間ではDC-3という旅客機が基本で、まあ2tの貨物を搭載出来る使いやすい輸送機です。

 戦術輸送機、C-46の難点は貨物扉が側面にあるためジープなどを輸送できない事でした。いやいまでこそ胴体の後部にカーゴハッチを配置する選択肢が輸送機の基本ですが、その為の主翼の配置など、C-130輸送機が開発されるまではかなり右往左往していたのですよ。

 C-123輸送機の開発当たりでアメリカは覚悟を決めたのですが、それまでは真剣に旅客機型の輸送機で重装備を運ぶ、DC-6輸送機などが検討されていた、要するに旅客機型の機体に統一して機種を整理したいという考えが在ったのでしょうが、体系として二分化してゆく。

 C-130輸送機の凄い点はC-130Eなど初期の機体から自衛隊が運用するC-130H輸送機、そして最新鋭輸送機として自衛隊に採用が期待された1990年代のC-130J輸送機、その胴体を更に延伸して嵩の在る装備を搭載出来るC-130J-30など、進化を続けた点があげられる。

 野戦飛行場は勿論草地のような場所でも発着できるよう着陸装置が兎に角頑丈で、逆に言えば完成系の航空機である為に、改良は出来ても置換える後継機の開発に苦労している、いやアメリカでも無尾翼化するとか、一定角度まで主翼を可動させ短距離型などを考えた。

 しかし、完成した形のものを別の形にするのは難しいです、例えばノートパソコンとか、新機種は出ても液晶を固定化するとかキーボードをマウス入力だけにするとか、そういう改造は出ませんしタブレットPCもノートパソコンを置き換えるには至らない、それと同じ。

 OH-6D観測ヘリコプターが、飛行展示とは無関係に離陸を開始しました。まだC-130H輸送機は飛行を継続している、いや機動飛行の後には編隊飛行をもう一回行いそうな飛行経路でしたので、慌てて航空祭プログラムを見るが、航空祭プログラムを視ましても、ない。

 航空祭プログラムは入場の際に手荷物検査を終えた少し先などで配っているのですが、こういう時の為に入手しておくと即座に確認できます、そしてカメラバッグに仕舞ったままにしておいて、奥の方や底の方に五年前渡河のプログラムが出てくるとか、多いですがね。

 OH-6D観測ヘリコプター、もしかして帰投フライトなのかもしれない。そしてこの2019年というのはOH-6D観測ヘリコプターが全機用途廃止される年度ですので、これは撮影しておきたいものです。いや、だから早めに帰投フライトを済ませるのかもしれないけれど。

 帰投フライトは航空祭を行う基地の側としてはかなり難しいもので、外来機で珍しい機体や退役が迫る機体や米軍機が来ていると、かなりの来場者がその離陸を撮ってから帰ろうとする、しかし基地側としてははやく後片付けを終えてしまいたい、難しい状況になる。

 OH-6D観測ヘリコプターは早めに帰る事としたのでしょう。そして、このOH-6D観測ヘリコプターは、自衛隊に必要な航空機なのですが後継機が選定される事無く廃止されてしまいました。無人機でも対応できるという言い分はありますが、無人機では後継は無理だ。

 着弾観測だけならば無人機で行えるのでしょうが、陸上自衛隊が二人乗りのOH-55観測ヘリコプターの後継にOH-6D観測ヘリコプターを導入したのはもう少し幅広い運用を考えて。その次にOH-1観測ヘリコプターを導入したのは敵戦闘ヘリコプターの迎撃に備えて。

 OH-1観測ヘリコプターが開発され、もっとも当初計画の250機大量生産は難しいのではないか、とは思ったのですが130機くらいは量産されると考えていました、また技術研究本部と川崎重工はデータリンク能力付与を実験していましたし、改良型も提案していました。

 斥候にしても情報収集にしても、結局は人間が視た印象、敵が居そうか、どの程度準備をしているのか、こうしたものはまだ、特に光学情報だけでは把握できません、無人機が不要だとは云わないのですが、同じくらい有人の情報収集手段も重要だ、と考えるのです。

 MQ-8ファイアスカウトのような無人機を本気で導入するならば、まあそんな手もあるよね、と書くところではある。MQ-8ならばOH-6と同程度の行動半径がありますし、連絡機野球間輸送には対応しませんが、物資輸送能力と、そして対戦車戦闘能力が若干ありますし。

 OH-6D観測ヘリコプター、しかしこれは“官僚は間違いを犯さず”の原則からOH-1観測ヘリコプターの調達失敗を文面から受け入れられず、まあ困るのは内局じゃないし、と区分ごと廃止するよう行政的に決定し、現場に押しつけたようにも思えてならないのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】近鉄本線の菜の花が咲く中に特急通過と急行一本普通一本毎時停車駅ホームの牧歌的な風景

2023-05-14 18:11:41 | コラム
■菜の花と近鉄電車
 こういう日曜日の過ごし方もあっていいと思う、あまり考える事無くお城を巡って電車で移動して焼肉でというような。

 近鉄青山町駅、伊賀線の伊賀神戸駅から名古屋方面へ一駅の立地なのですが、特急列車以外すべて停車するという駅ながら、それ程乗降客が居ないということで、伊賀神戸駅でも列車本数が少ない中で青山町行の急行が来まして、興味本位で乗ってみよう、と。

 上本町から77kmという青山町駅、特急以外は全部停車するという事で何気なく行ってみたのですが、びっくりしたのは時刻表で、昼間の時間帯は一時間に急行が一本と普通列車が一本、要するに全部停車するのではなく急行を停めないと誰も利用しないダイヤという。

 上本町に出るまでは急行を利用しますと滅茶苦茶な所要時間ということはないのですけれども、それにしても菜の花が咲いている牧歌的な田園風景の中を列車が行き来している情景とともに、全然本数の無い時刻表を見ますと、近郊線でさえないという印象をうける。

 お昼ご飯でも頂こうかと、なにか青山町という駅名に期待していたのですが、聞いてみると駅前に喫茶店、少し離れたところに北京があるだけ。北京というと大都会を期待するかもしれませんが街中華のひとつでして、京浜急行の青物横丁駅のようにはまいりません。

 アーバンライナーの通過、実はお昼御飯がまだでしたので、北京というのも良いかな、と街中華に期待しましたけれども、よくよく聞いてみますとこれもランチタイムのあとはディナータイムまで暖簾を下ろしてしまうようでして、それならばと春の風を愉しみました。

 青物横丁駅ならば東横インもあるのだしなあ、そんな事を想いつつ、まあ食べるお店は遠いですし僅かしかありませんが、自販機で缶コーヒーを買い求めて間をおいて時折くちに含みつつ列車がやってきましたならば撮影する、そんな日曜日の昼下がりをすごしました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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バフムト後退-ロシア国防省が認める,ルガンスク占領地ミサイル攻撃とロシアブリャンスク近郊でSu-34撃墜

2023-05-14 07:00:41 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 有事の際に日本もウクライナ軍の様に上手く政治と国民と防衛力が協力できるのかという思いと共に、最新情報です。

 CNN報道によればロシア国防省は12日、バフムト北部地域での後退が事実であると認めました。バフムトはロシア民間軍事会社ワグネルなどが攻撃を続けていましたがワグネルは部隊当たりロシア正規軍数倍の弾薬を消費しており、ワグネルの要求を受け限られた弾薬をワグネル優先により支給した結果、補給の限られたロシア軍部隊が後退したかたち。

 バフムトはロシア側がウクライナ東部における交通要衝であると主張し、無理な攻撃を継続していました。そしてこの攻撃は5月9日のソ連対独戦勝記念日までにバフムトを陥落させる狙いがあると推測、この日までに陥落させられなかった事からロシア軍は戦線の後退に移行した可能性があります。ただ、東部地域交通要衝はバフムトだけではありません。
■ルガンスクへ反撃
 2014年以降ロシア勢力圏となっている占領地へ反撃です。

 ルガンスク占領地へウクライナ軍は長距離攻撃を実施しました。ルガンスクは2014年からのウクライナ東部紛争においてロシア軍占領を受けていた地域であり、ルガンスク人民共和国を自称している地域です。長期の占領から2022年ロシアウクライナ戦争以降はロシア側が装甲車両や戦車を修理する重整備工場などが置かれていますが、ここが攻撃された。

 ルガンスクはウクライナ軍の長距離打撃装備であるHIMARS高機動ロケットシステムより運用されるM-30やM-31GMLRSの射程外にありますが、今回の攻撃ではADM-160デコイミサイルと併用した大規模な攻撃であり、囮として防空網をかく乱するADM-160は残骸が回収されました。9年前に事実上占領した占領地への攻撃はロシアには衝撃でしょう。
■Mi-8とSu-34が撃墜
 戦闘機などが撃墜されるのはこの戦争の常ですが報道によれば両国国境付近のロシア側でとなれば話は別です。

 ウクライナ北部地域のロシア側ブリャンスク近郊において、ロシア軍Mi-8ヘリコプターが1機乃至2機とSu-34戦闘爆撃機1機が撃墜されたとのこと。Mi-8ヘリコプターの墜落はロシア国営通信が報じていますが、撃墜か事故かについては発表されていません。またタス通信はブリャンスク州内でSu-34が撃墜されたと報道、Su-35も撃墜との報道もある。

 S-300地対空ミサイルによる攻撃の可能性があります。これは推測ですがS-300はこれまでキエフ防空など縦深の奥に展開していました、しかしNATO援助のペトリオットミサイル供与により首都防空に目処が立ち、射程の長いS-300ミサイルを前線付近へ前進させる事で、地対空ミサイルによる航空優勢確保という選択肢を執り始めたのかもしれません。

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