北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】オーストリアウラン延命にハンガリープーマ量産とスロバキアCV-90採用,BMP-3改良型登場

2023-05-02 20:00:56 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 装甲戦闘車の各国での採用状況を見ますと戦車部隊を持たない機械化旅団へも歩兵の能力の一端として標準装備されていますので、自衛隊も650両程度は生産再開すべきとおもう、これは重戦力のコンパクト化とは無関係に必要な装備だ。

 オーストリア軍は主力戦車と装甲戦闘車の延命改良に関する5億6000万ドル規模の改修計画を発表しました。オーストリア軍は現在では旧式となっているレオパルド2A4主力戦車とオーストリアスペイン共同開発ASCODウラン装甲戦闘車を陸軍機械化部隊の主力に位置付けており、レオパルド2はM-60A3の後継、オランダから導入した中古車両です。

 ウラン装甲戦闘車はスペインと共同開発した装甲戦闘車でスペインではピサロ装甲戦闘車として正式化、特筆すべきはASCOD装甲戦闘車はエンジンやトランスミッションなどの冗長性が高く、採用国は自国兵站体系に合わせ独自の動力系統や通信システムなどを搭載でき、近年では改良型がエイジャックス装甲偵察車としてイギリスに採用されています。

 オーストリアにおけるウラン装甲戦闘車は2002年から採用開始され、102両が第13装甲擲弾兵大隊と第35装甲擲弾兵大隊に装備されています、今回の近代化改修では老朽化部品の換装とともに砲塔システムや光学照準器と電動駆動システムなどが一新される計画で、改修はGDELS傘下となったオーストリアのシュタイア社にて2030年に完了します。

 ハンガリーではドイツのラインメタル社によるリンクス装甲戦闘車の低能率量産が開始されました。リンクス装甲戦闘車はラインメタル社がプライベートベンチャー開発した新型装甲戦闘車で、装甲戦闘車としては異例の50tという重量級の車両に機関砲などを搭載、重装甲である点を除けば新技術をあえて避け手堅い設計を採用した装甲戦闘車です。

 リンクス装甲戦闘車はラインメタル社によるプライベートベンチャー設計ですが、ドイツ軍へ納入されるプーマ装甲戦闘車よりも防御力が高く取得費用を抑えているとして、ハンガリー軍が新しい装甲戦闘車として選定、2020年9月に20億ユーロ規模の生産契約を結びました。ハンガリー軍は最終的に200両以上のプーマ装甲戦闘車を導入する計画だ。

 ラインメタル社はハンガリー国内に合弁企業を創立するとともにザラゾーン工業団地のザラエゲルセグに現地工場を建設、2023年からリンクス装甲戦闘車46両とベルゲパンツァー装甲回収車9両を製造します、一方でドイツ国内で製造されたリンクス装甲戦闘車のハンガリー軍への引き渡しは2022年10月に一号車が納入、既に訓練が開始されている。

 スロバキア国防省はCV-90装甲戦闘車152両の調達に関する契約を締結しました、この契約はBAEシステムズ社とのあいだで交わされた正式なものであり、契約金額は13億ユーロ、米ドル換算では13億7000万ドル規模に達するとのこと、スロバキア陸軍では新しく導入されるCV-90装甲戦闘車をもってあたらしい重機械化旅団を新編する構想です。

 CV-9035,今回導入されるのはCV-90Ⅳという新世代型であり、セラミック増加装甲を追加したⅢよりも更に性能が強化され、火器管制装置は行進間射撃に対応するとのこと。CV-9035の名の通り主砲はスウェーデン軍に採用されている40mm機関砲ではなく、エリコン35mm機関砲が搭載される計画であり、スパイク対戦車ミサイルの搭載も計画される。

 スロバキア政府はBAEシステムズ社との間でスロバキア国内の運用基盤構築を強く要望しており、このためスロバキアの防衛大手ZTSスペリアル社が運用支援に当たるとともに、一部の構成部品をライセンス生産させる方針です。なお、今回採用される車体にはイスラエルのエルビット社製アイアンフィストアクティブ防護装置が搭載される見通しです。

 ロシアのロステック社は2023年1月23日に改良型のBMP-3装甲戦闘車をロシア軍へ納入しました、これはロステック社が装甲車両のロシア軍納入を発表するのは2022年8月以来半年ぶりというもので、ロステック社は昨年8月に納入の際、ウクライナ侵攻に伴う欧米経済制裁の影響がない点を誇示しましたが、その後の納入発表はありませんでした。

 改良型のBMP-3装甲戦闘車はその改良点として防御力強化とSODEMA主砲照準装置の搭載、またロシア製RWS遠隔操作銃塔の搭載を発表しています、増加装甲は中空式の追加装甲の更に外側に鳥かご状のスラッド装甲を追加したもので、ウクライナ侵攻の戦訓を反映したという事から、いかに対戦車火器による損耗があったかをしめしているもの。

 増加装甲は車体正面部分と側面部分にスラッド装甲とともにつっかされていますは、車体上面部分の装着はなくトップアタック式対戦車ミサイルへの不安は残ります、他方RWS遠隔操作銃塔は極めて小型のカメラを搭載していることから、いわゆるRWSではなく1970年代に各国が装備したリモコン式遠隔操作機銃の性能に留まる可能性があります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【G3X特報】第33普通科連隊創設記念-久居駐屯地祭二〇二三.三重県津市の駐屯地祭(2023-04-09)

2023-05-02 07:00:05 | 詳報 陸海空自衛隊関連行事
■軽装甲機動車
 久居駐屯地祭特集は今回観閲行進の様子をお伝えしましょう。

 久居駐屯地、観閲行進では軽装甲機動車が行進します。この軽装甲機動車、始めてみましたのは2002年の富士総合火力演習、富士学校の装備でしたが次にみましたのは同じ年の伊丹駐屯地祭で、当時は撮影場所などをあまり考えなかったものですから凄い場所で撮った。

 第33普通科連隊、伊丹駐屯地祭にて撮影しました部隊も配備間もない第33普通科連隊の軽装甲機動車でした。お恥ずかしいのは20年以上前なのですが、今でいう一般スタンド席側で観閲行進を撮影したものですから、折角の車列を真横から間延びした構図になってしまった。

 イラク戦争がその翌年に勃発しまして、まあその翌年という2003年に北大路機関が創設されたのですけれども、自衛隊が復興人道支援ということでイラクへ派遣することとなった。かつて1992年に自衛隊はカンボジアPKOに派遣されていますが、間に合わなかった装備が。

 高機動車、1992年のカンボジアPKOでは任務は施設科部隊が主力であったのですが、当時配備されて間もない高機動車は派遣に間に合わず、結局汎用車両としてジープといいますか73式小型トラックでは心許ない状況では民生車のパジェロをUN塗装として使った歴史がある。

 軽装甲機動車は、こうした意味でイラク派遣という、軽装甲機動車が必要な状況に間に合った装備というものでして。この点は使いやすく、まあ、演習場では横転しやすいとか、高機動車よりも加速性がわるいなど隊員さんからは指摘はあるのですが、数は揃った装備でした。

 JLTV,さてアメリカ軍は現在ハンヴィー高機動車の後継装備としてJLTVというかなり大きな四輪駆動装輪装甲車を配備開始しています、これはM-ATVというMRAP耐爆車両を原型として汎用車両に資するように改良を加えたものなのですが、これが今後米軍の基本装備となる。

 ハンヴィー高機動車は、米軍がイラク戦争の治安作戦において相当数がIED簡易爆発物により破壊され、戦死者が凄いことになりました。最初はM988という非装甲型が破壊されていたとおもいましたが、M1114という装甲型も破壊されており、やはり後付け装甲には限界が。

 軽装甲機動車、富士総合火力演習ではCH-47輸送ヘリコプターにより空輸されていました、ここが機動性の高さを示したところではあるのですが、そろそろ後継車両が必要になるのではないか、少し頑丈にしてCH-47でも搭載できる限度に挑戦する装甲車が必要ではないか。

 高機動車についても、もちろん汎用車両として運べる車両という高機動車の必要性は理解するのですが、第一線への普通科部隊の小銃班、つまり歩兵機動車両としては、高機動車の後継にもう少し硬い車両、装甲車両を広範に配備してもよいのではないか、と考えるのですね。

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