北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【11】ヘリコプター搭載護衛艦くらま・ひゅうが(2012-10-08)

2023-05-21 20:11:44 | 海上自衛隊 催事
■専守防衛変容とその背景
 観艦式の写真を紹介すると共にアーカイブを作成しタンカーと護衛艦や都市部と護衛艦という写真をまとめているのですが。

 日本の安全保障体制、戦後レジームからの脱却を掲げた安倍総理大臣時代は、結局憲法改正まで到達する事はできませんでしたが、結局のところ戦後秩序というもの、東西冷戦と二つの超大国という関係性の中にあって唯一日本国憲法は担保されていたといえます。

 アメリカの同盟国としての日本ですが、冷戦時代に在ってはフィンランドのような重武装中立という選択肢をとっていたならば、日本の中立性というものはもう少し変わったのかもしれない、フィンランドと日本は同じ枢軸国であったのですから。しかし実際は。

 第二次世界大戦における決定的な敗戦から、重武装の武装中立国家を目指す、という選択肢はそもそも中た訳ですし、国土が広く人口の少ないフィンランドに対して、四方を海に囲まれる日本はエネルギー源一つとって中立政策を行える程自給自足の目処はありません。

 エネルギー問題は、そもそも日本が第二次世界大戦において南方へ進駐した最大の要因でもある訳で、結局、殻に閉じこもるかたちでの重武装中立ではなく、シーレーンに依存する国際公序とともに生きてゆくほかなかった、という条件下での平和憲法が出来上がる。

 転換期を迎えている事は理解しているのですが、一方で安全保障環境の転換期とともに、今の日本国憲法が成立つ前提を維持する為の努力が、見方を変えれば憲法に抵触する、政治の領域を超える段階まで進んでしまっているようで、解釈改憲の範疇を超えていないか。

 2012年の観艦式、これこそ平和国家の専守防衛を経済大国が具現化した姿、といいえたのですが。防衛力を2012年の水準、これは、くらま現役に戻せとかF-4ファントムを再生しろというわけではなく、防衛力と防衛力整備指針の内容そのものが変容していまして。

 反撃能力のような射程の長い装備の大量整備とか、MLRSを全廃するという政治決定や戦闘ヘリコプターを廃止するという指針が示され、専守防衛型の防衛力をそのまま廃止して、そのリソースで反撃能力を整備しようとする今の指針は、大丈夫なのかと危惧するのです。

 2012年と2023年では周辺情勢の緊迫化も進んでいるために、装備の種類ではなく数で、と但し書きをつける必要はあるのですけれども、まず、装備の数を2012年の段階、対戦車ヘリコプター、多用途ヘリコプターも戦車も火砲も戻してみてはどうか、と思うのですね。

 専守防衛の装備が充分あって、そこで初めて有事に際して、限定戦争を仕掛けられた場合には専守防衛の防衛力を駆使して撃退しつつ、相手が全面戦争に打って出ようとする状況を反撃能力という抑止力が、牽制する形で相手が全面戦争という選択肢を封じる、という。

 前よりは潜水艦は多くなった、けれども哨戒機も掃海艇も削減された、そして全体として余裕がなくなっている。専守防衛が事足りて初めて反撃能力を考えるべきであり、そして反撃能力ではなく元々的基地攻撃能力という呼称を用いていたのだから、なにかちがう。

 もっぱら相手本土を、壊滅的打撃に用いる装備ではないのだけれども保有するならば、所謂防衛戦闘における逆襲部隊と混同させるような名称を用いるべきではないのでは、とも思うのです。政治は理解しているのか、国民は理解しているのか、金額だけ見ていないか。

 戦車凄いとか護衛艦かっこいい、という段階の関心事でも、長く見ていますと防衛力というものの在り方はおぼろげでも見えてくるものですので、予算が増える、という話を聞きますと、どうしてもこう考えるのです。関心を持てば調べる公開情報はいくらでもある。

 反撃能力、一方で将来の台湾海峡有事における日本の立ち位置、中立という事はみじんも考えることができない実情に立ち至れば、相応の覚悟というものが求められます。中立が難しいのは第一に在日米軍基地が攻撃されるということ、特に日米共用基地が、です。

 佐世保基地や鹿屋航空基地に新田原基地と共用施設が多いために確実に自衛隊も攻撃されるためです、不随被害も出るでしょうし、沖縄本島などはかなり基地周辺の着弾だけではなく、浮流機雷の漂着による船舶被害や人的被害を見込まなければならないかもしれない。

 そして、台湾海峡有事においてそもそも警戒しなければならないのは、東南アジアと日本を結ぶ海上交通路を台湾の喪失は、太平洋戦争における沖縄の失陥と同じ結果をもたらし、シーレーンという視点で完全に孤立してしまうのではないか、という危惧があります。

 日本国家は最早以前のような自由主義陣営として、つまり個人の自由と価値観を個人の尊厳により決定するという立ち位置で居続けることは出来なくなる、こうした認識が必要です。それもありではないか、と思われる方は、そういった生活に慣れていないからです。

 考えてみてください、あなたのスマートフォンのなかみを検閲されるのを手始めに、自宅も公共の場所であり、令状のない創作、自宅とは国家のものであり個人の行動はすべて国家が統制する、そしてどう思おうが幸せであるとして政治を支持しなければならない。

 大陸の手法では、それができない人間を不適格者として再教育させる、再教育の施設は日本の今の刑務所とよく似ているが、自発的に入っているといい、どのようなことを思おうと地震の意志で入り満足しているという言葉しか外部には許されない社会となる構図だ。

 COVID-19の中国における対策を見ていますと、個人の尊厳に対して政治が無制限の公共の福祉のためのあらゆる措置を付託された国家権力が暴走した場合の不自然さは見えています、いや、逆にこれがあるからこそ、個人の尊厳、財産などではなく生命が問われる。

 台湾などは安全保障と防衛への危機感をあらわにしている。結果的に、東南アジアとのシーレーンを遮断され、太平洋への権威主義への防波堤となっていた台湾が基地となれば、太平洋上での中東からの石油シーレーンさえも脅かされることとなる、ということです。

 つまり中立でいるには、核兵器でも保有して本当の意味で中国の軍事圧力にモノを言える国となるのか、軍事圧力とは核攻撃の恫喝も含めてですよ、もしくは覚悟を決めてアメリカとともに台湾有事を起こさせないための圧力、実力で戦争をさせない覚悟が必要という。

 権威主義国家の政権はある日突然倒れる、これは民主主義国家の政権が選挙により後退するものとは正反対のものなのですが、これ故に例えば実際に戦争というものが始まった場合、権威主義国家は簡単に引く事ができません、それはロシアウクライナ戦争を見る通り。

 覚悟を以て戦争の始まりを防ぐ事が出来れば、始らない戦争で緊張関係を維持することは冷戦の様で厳しい国際関係が続く事を意味しますが、戦争が始まってしまい出口戦略を権威主義国家へ用意する事よりも遥かに容易いといいますか、被害者がすくなくなります。

 歴史を見ますと回避できる危機を譲歩という形で丸く収めようとして結果的に大戦争となったのが第二次世界大戦です、これを繰り返してはなりませんが回避できる危機を力押しで封じ込めようとして起ったのが第一次世界大戦、こちらも繰り返してはならないのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【京都幕間旅情】葵祭,下鴨神社へ向かう行列-京都三大祭を迎える2019年と2023年とでかわったこと

2023-05-21 18:11:50 | 日記
■葵祭を,撮る
 祭事行列の撮影はやはり自衛隊行事の観閲行進の撮影とは違うものなのですね。市街パレードではここまで長距離を移動しませんし戦車も来ません。

 葵祭、実は新しいカメラ機材の性能を試してみたい、という理由もありまして、一寸無理して時間を捻出したのです。それは、EOS-M5ミラーレスカメラ、従来のEOS-M3ミラーレスカメラを補完する新しい装備として導入したのです、EOS-R10はもう少し先に。

 EOS-M5,良いカメラなのはスペックからは判るのだけれども、なにしろミラーレス機種に良い思い出は無い、店頭で試すだけではわかりにくく、特に使い慣れたEOS-7Dとは根本から操作方法が違い、何処をどうもったら誤作動が起こるのか、これを使って熟知したい。

 M3とM5,まずボタン操作の位置がかなり変わっているので、習慣の様に指を動かしますと恐らく失敗する、しかし、誤操作がどういうときにおこるのかは使てみないと判りません、誤操作が起る背景が分っていれば、操作時に注意する事でそもそも起らないのですからね。

 ダイヤルスイッチ、結局のところいしきせずにカメラを保持しようとして押してしまう事が多き、気づけばM3ではISO感度が12800に誤操作で切り替わって写真を台無しにすることが在った、そしてMFにカメラを保持しようとしてもった際かえてしまう事も。

 電源の位置がM3とM5では違うのだけれども、M5の切替レバー方式はEOS7Dと同じ位置なのだと解釈していた、けれども、EOS7Dは電源を入れたままでもシャッターボタンに指を掛けなければ自動で電源が落ちて、しかしシャッターを押す事で即座に撮影できる。

 M5は電子光学ファインダーの接眼検知装置に不用意に触れる事で電源が復帰してしまい、これが電池の電力を大量消費する事に気付いた。使ってみないと判らない事がある、使い勝手は数値化できないだけに、慣れる為には場数を踏まなければならないのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウクライナ情勢-ロシア軍の不可解な旧ソ連製ロケット廃棄関連施設攻撃と軍事目標へのミサイル攻撃開始

2023-05-21 07:00:51 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 G7広島サミットへのウクライナゼレンスキー大統領出席という大きな出来事が本日はじまるのですが、先ずはウクライナ情勢から。

 ロシア軍は今月に入り、ソ連時代の施設を中心に長距離ミサイル攻撃を加えています、具体的にはソ連崩壊後のウクライナ域内に配置されたソ連製大陸間弾道弾などを廃棄する“1992年ブダペスト合意”に基づく処理施設などがミサイル攻撃を受けています。その意図するところは不明ですが、軍用施設ではないものの大規模な爆発が発生しています。

 ミサイル攻撃は5月1日と5月13日に発生しています。5月1日には東部のドニプロペトロウシク州パブログラードに所在する旧ソ連ミサイル固体燃料保管施設、もう一つ5月13日には西部フメリニツキー州のテルノビリに所在するロケット廃棄場です。ロシア国内ではウクライナ軍兵器集積場を破壊したとする意見がありますが、確認されていません。

 旧ソ連ミサイル廃棄施設に対する相次ぐ攻撃は何らかの意図が考えられます、一つは“ロシア側は本気でウクライナに大量破壊兵器があると信じている”、もう一つは“大規模な爆発を引き起こし偽情報を流す”、または“軍が大統領に報告する見栄えの良い標的を狙った”というものです。なお、ウクライナ軍によるこれら物資の軍事転用は確認されていません。

 イギリス戦争研究所は5月14日の報告書において最近のロシア軍ミサイル攻撃について“戦略目標を明確に確定した”と皮肉交じりに分析しています。具体的には、2022年2月から2023年3月にかけて、発電所やアパートに美術館や学校など、よくわからない目標に対して高価な巡航ミサイルを用いた攻撃を行っていました。これが変わりつつある。

 ロシア軍は新しい軍事目標として兵器工場や軍用物資集積所など軍事目標に対する攻撃を開始し、ウクライナの戦争遂行能力を削ぐ行動に出ています。ただイギリス戦争研究所はもちろん、世界中の有識者にとり解明できない謎は、ウクライナ軍を攻撃せずに何を攻撃していたのか、という不可解さです。本来は最初に攻撃すべき目標なのですから、ね。

 ロシアウクライナ戦争について、ロシア軍は地上軍に大きな損耗を強いられ、黒海艦隊にもかなりの損害が及んでいますが、航空宇宙軍の航空機は大半が無傷です。ただ、長距離巡航ミサイルについては2022年2月から一年間で大半を射耗しており、追加生産が完了したものを備蓄しこの一週間は使用数が急激に増えた、今後の空軍攻勢については未知数となっている。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする