北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】イギリスNSMミサイル導入と26型フリゲイト建造,スウェーデンコスター級掃海艇2隻の延命

2023-05-16 20:23:57 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は海軍関連の情報を。

 イギリス海軍はハープーン対艦ミサイルの後継としてNSMミサイルの導入を決定しました。イギリス海軍では2023年にも終了するハープーンミサイル艦対地型の後継装備を模索しており、今回対地攻撃能力を有することが実証されているNSMミサイルを採用したかたち。ミサイルは射程185km、飛行モード次第で射程が350kmに達するとされています。

 NSMミサイルはネイバルストライクミサイル、ノルウェーのコングスベルク社が開発し、空対地型のJSMミサイルは高高度飛行モードにより最大射程が555kmに達するとされています。ノルウェー製ですが、アメリカ海軍がLCS沿海域戦闘艦やコンステレーション級フリゲイトに採用、ドイツやポーランドなどNATOで採用も広がる新世代の艦載装備です。

 NSMミサイルの特色として、ミサイル本体のステルス形状が挙げられます。これはミサイルの上面部分がステルス設計となっていて、上下は対称ではありません、この設計の意図はシースキミングという海面近くを飛行する際に上空からの発見を回避するステルス設計であり、またミサイルの迂回機動など発射位置を秘匿する飛行経路の任意設定も可能です。
■レナサトクリフヒグビー
 アーレイバーク級の建造が順調に進んでいるのですがここまで同じ型式の水上戦闘艦を継続的に建造するのは史上初めてです。

 アメリカ海軍は11月30日、イージス艦であるミサイル駆逐艦レナサトクリフヒグビーを受領しました。DDG123として建造されたレナサトクリフヒグビーはフライト2A、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦はバランスのとれた艦隊防空駆逐艦として設計されていますが、初期型のフライト1はヘリコプターを搭載出来ない点が難点として認識されています。

 レナサトクリフヒグビーのフライト2Aは艦載機2機を搭載する能力を有しています。しかしアーレイバーク級は現在より新しいフライト3へ建造が移行していて、レナサトクリフヒグビーは多数のイージス艦を建造した実績のあるインガルス造船所において最後に建造されたフライト2Aとなっています。同造船所は複数のフライトⅢが建造中となっています。
■三つの空母戦闘群
 ロシア軍ウクライナ侵攻以来NATOは紛争拡大抑止の為に定期的な空母部隊集合をおこなっています。これは今後北東アジア地域においても同様の動きが出てくるのかもしれません。

 NATOは11月23日、三つの空母戦闘群をイオニア海へ同時展開させるアペルト22-2作戦を実施しました。これはロシア軍のウクライナ侵攻が長期化するとともにロシア軍ミサイルがNATO加盟国周辺地域において飛行し着弾するという緊張が続いており、圧倒的な海軍力の優位性を誇示するべく地中海のイオニア海へ空母を多数同時展開させたものです。

 アペルト22-2作戦に参加したのは、アメリカのジョージHWブッシュ空母打撃群、フランスのシャルルドゴール空母戦闘群、そしてイタリアのカブール空母戦闘群となっています。なかでもイタリア海軍は10月にNATO即応部隊海軍演習マーレ22に主力部隊として参加した直後の空母カブールの参加であり、極度の緊張とともに即応体制を誇示しました。
■シャルルドゴールにE-2D
 航空自衛隊でもE-2Cを置き換える事となるE-2Dですが艦載機として小型である点は搭乗員には使い難いかもしれませんが運用の柔軟性は高まります。

 フランス海軍は空母シャルルドゴールに搭載するE-2D早期警戒機を初の実戦任務へ参加させました。これはNATOエアシールディング作戦として実施されている、ロシア軍ウクライナ侵攻に伴うNATOへのロシア軍攻撃警戒監視任務の一環として参加したもので、NATO加盟国は共同で陸上基地から早期警戒機や早期警戒管制機などを派遣しています。

 シャルルドゴールに搭載されたE-2D早期警戒機は11月26日、地中海上で飛行甲板から発艦、そのままルーマニア上空に展開し7時間にわたる警戒監視任務を実施したとのこと。フランス海軍は空母艦載機としてE-2C早期警戒機を運用してきましたが、2020年にE-2Dを後継機として取得すると決定、現在3機の調達契約を結び装備化を進めています。
■イギリスNSMミサイル搭載艦
 45型駆逐艦が日本に初の親善訪問を行ったのは十年以上前でしたか。

 イギリス海軍はNSM艦対艦ミサイルの搭載艦艇として23型フリゲイトと45型防空駆逐艦を明示しました。NSMミサイルはノルウェーのコングスベルク社において生産され、BAEシステムズ社とハブコック社を経てイギリス海軍の艦艇へ搭載されることとなります。NSMミサイルは環太平洋地域ではオーストラリアとカナダ、アメリカで採用されています。

 45型防空駆逐艦は現在イギリス海軍に配備されている唯一の駆逐艦で満載排水量は7350t、6隻が建造され運用中です。23型もイギリス唯一のフリゲイトで16隻が建造されたものの3隻が中古艦として海外供与され現在13隻が運用中、満載排水量は4300tとなっています。NSMミサイルは対地攻撃能力を有しており、艦隊の戦力投射能力を大きく高めます。
■海底パイプライン海底監視
 隣国が多数の深海調査船を持っている日本にとっても余所事ではないのですよね。

 イギリス国防省は海底パイプラインなどの海底監視能力強化を推進中です。これは2022年9月にバルト海で相次ぎ発生したノルドストリーム2海底ガスパイプライン攻撃事件をうけ、海底通信ケーブルなどの重要インフラを防衛する切迫した任務に対応するもので、深海無人機などの導入を既存の装備計画変更による資金により進めるという構想という。

 深海6000m程度までの海底監視能力を想定しており、まず最初の段階として2400万ポンド以内の費用で深海用無人機を調達、更に中古商船を改修し新しく多目的海洋観測艦を導入し海底パイプラインや海底通信ケーブルの監視に当てるとのこと。このために既存の2億5000万ポンドの建造計画を変更して、更に一隻を建造、能力構築予算に充てる計画です。
■グラスゴーの進水式
 もがみ型護衛艦をみますと素早く建造してしまった点が。

 イギリス海軍は26型フリゲイト一番艦グラスゴーの進水式を挙行しました。グラスゴーはスコットランドのロング湖畔にある造船所において建造が進められており、2017年に起工式を迎え2022年12月に進水式を挙行したかたち、このまま計画では2024年に海軍に引き渡され公試を行った後、2026年に海軍での運用が開始される計画となっています。

 26型フリゲイトは現在イギリス海軍に装備されている23型フリゲイトを置き換える計画ですが、1990年代に建造された23型フリゲイトに対してイギリス海軍の艦隊規模縮小とともに一隻あたりの任務増大を受け、満載排水量は5割増大した6000t規模、この派生型は、GCSグローバルコンバットシップとしてオーストラリアやカナダなどに配備されます。
■高速戦闘支援艦
 ダイドー級として低速だが安価な補給艦を揃えたのでいよいよ整備するのは高速補給艦へ。

 イギリス海軍が導入する空母戦闘群用高速戦闘支援艦について11月16日、スペインのナヴァンティア社案が採用されました。ナヴァンティア社は北アイルランドのハートランドウルフ社と共同で高速戦闘支援艦を建造するとしています。高速戦闘支援艦は全長216m、3隻を建造する計画で総費用は16億ポンド、2025年から建造を開始する計画です。

 海軍では2032年までに3隻を竣工させる計画という。ただ、どの程度をスペインで建造するのか、雇用流出防止の観点からイギリス国防省は今後交渉するとしています、こういうのもイギリスでは造船業の不振が深刻であり、ハートランドウルフについても2019年には閉鎖の危機から大規模ストライキが行われ、国内建造を求める産業界の要望があるのです。
■ニュージーランドP-8A
 対潜一辺倒のP-1とことなりP-8Aは色々な用途に使えますからね。

 ニュージーランド空軍はP-8A哨戒機初号機の引き渡し式を挙行しました。これは12月9日にシアトルのボーイング社工場において実施されたもので、ニュージーランド空軍が進める4機のP-8A哨戒機導入計画の鏑矢となるものです。ニュージーランド空軍では現在P-3K2哨戒機6機を運用していますが、長期間の運用で老朽化が深刻となっていました。

 P-8A哨戒機について、ニュージーランド空軍は現在P-3K2哨戒機を配備しているオハケア空軍基地への配備を計画しています。近年ニュージーランド軍は長年重視していた南氷洋の警戒監視とともに中国海軍の南太平洋地域での活動活性化を受け航空哨戒能力の強化をすすめています。ボーイング社によれば4年以内に残る3機を引き渡すとのことです。
■艦艇三割以上出航不能
 人員不足は日本でも挙げられるところですがニュージーランドの場合は水兵を無茶苦茶な任務に充てた結果がこれ。

 ニュージーランド海軍は深刻な人員不足により艦艇の三割以上が出航できない状況にある、国防軍のケビンショート元帥が厳しい状況を明らかにしました。この三割というのは9隻の哨戒艦のうち3隻が無期限でデボンポート海軍基地に係留されている状況ということであって、海軍労働環境の悪さから人員が海軍に応募しないことがその要因とされている。

 ウェリントン、オタゴ、ハウェアの3隻が無期限出航不能となっているとのことで、現在海軍は16.5%の定員割れに陥っているようです。労働環境の悪さとはCOVID-19拡大期に乗員の多くを検疫施設運営に転任させたものの、その多くの乗員が復職する事無く離職してしまい、その後に哨戒艦を運用する際、乗員を確保できないことが理由とされています。
■コスター級掃海艇延命
 スウェーデンを見ていると問題は老朽化というよりも掃海艇の建造能力が失われているところにありそうで、日本の将来を見ている。

 スウェーデン海軍は老朽化が進むコスター級掃海艇2隻の延命を決定しました、コスター級は現在5隻が運用されており、機雷掃討に加えて爆雷を搭載し沿岸部における対潜掃討任務にも対応しています。これら5隻は2010年までに延命工事が行われていますが、その改修もすでに10年以上を経ており、今回改めてさらなる延命改修が行われるとのこと。

 コスター級掃海艇はスウェーデンのサーブ社において建造、サーブ社は延命改修についてもオプション契約を提示しており、これを今回公使することとなりました、その金額は3億5000万スウェーデンクローネといい、これは米貨換算では3300万ドルに相当します。スウェーデン海軍はバルト海における機雷掃討能力の強化を理由として説明しました。

 機雷掃討能力について、2022年より課題となっているのはロシア軍ウクライナ侵攻に伴う欧州安全保障環境の激変ですが、バルト海にはロシアバルチック艦隊の基地があり、そしてもう一つ、ロシア海軍は帝政ロシア時代からソ連海軍時代を含めて機雷戦を重視しているという背景があります、機雷はもっとも費用対効果の高い兵器とも考えられています。
■ロバートスモールズ
 艦名は艦番号でおぼえるので艦名だけ変えられると本当に混乱するのです、艦番号からかえてみてはどうなのだろうか。

 アメリカ海軍はタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦チャンセラーズビルをロバートスモールズに改称する決定を行いました。チャンセラーズビルは1989年に竣工したミサイル巡洋艦、計画では2026年に退役予定です。艦名を変更した背景にはいわゆる“黒人人命尊重運動”と関係、南北戦争で南軍に徴兵され脱走し連邦軍へ合流したアフリカ系兵士の名です。

 チャンセラーズヴィルの戦い、ミサイル巡洋艦チャンセラーズビルの名も実は南北戦争に由来するもので、1863年にヴァージニア州において南軍のリー将軍が北軍のフッカー将軍を破った戦いが由来です。古戦場の名はエセックス級空母に採用されタイコンデロガ級巡洋艦に受け継がれた名もありますが、チャンセラーズビルは初の命名となっています。


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ウクライナ情勢-ドイツ政府戦車等21億ユーロ追加支援とストームシャドウ発射,ロシア第4自動車化狙撃旅団司令部攻撃

2023-05-16 07:00:52 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ロシア軍が本格的に二世代前のT-55を投入した報道を見ますと日本も三月に廃棄した74式戦車をウクライナに供与した場合で充分活躍できそうに思えるのです。

 ウクライナ軍事支援へドイツ政府は13日、戦車を含む合計21億ユーロ規模の追加軍事援助を発表しました。これには第二世代型のレオパルド1主力戦車30両、マルダー装甲戦闘車20両、ゲパルト自走高射機関砲15両、大型無人偵察機200機、射程25㎞のIRIS-T空対空ミサイル4基、装甲車両及び輸送車両200両、弾薬などが含まれるとのこと。

 ゲパルト自走高射機関砲は先月、ロシア側の発表により無人機攻撃を受けたとされ、公開された映像ではレーダーが停止した待機状態のゲパルトへ小型無人機が命中する様子が映されていました。ただウクライナ側は命中を認めつつ、破損個所を修繕し戦線へ復帰したとの事、ゲパルト自走高射機関砲は戦車に随伴するべく各所に装甲が施されています。
■ストームシャドウ
 ウクライナ軍は供与を受けた射程の長いストームシャドウ巡航ミサイルを早速投入した可能性があります。

 ルガンスクへのミサイル攻撃にはイギリスより供与されたストームシャドウミサイルが使用された可能性が高いとのこと、これは現地での撮影画像にストームシャドウ一部と形状が酷似した破片が確認されており、事実であればこれまで各国がウクライナへ供与した装備の中で最も射程の長いストームシャドウがいち早く実戦へ投入されたこととなる。

 ウクライナ軍は2014年以来親ロシア派占領下にあるルガンスクへのミサイル攻撃を維持しています。ルガンスクは人口40万規模の都市でロシアが2021年に一方的に本土へ併合したルガンスク州の州都です。ここへウクライナ軍がミサイルにより反撃した際、アメリカが供与したHIMARSでは射程外であることからその手段に様々な憶測が流れていました。
■第4自動車化狙撃旅団
 バフムト攻防戦は明らかにロシア軍の攻勢限界から戦況が一転し始めている。

 バフムト南西郊外においてロシア第4自動車化狙撃旅団の指揮所が攻撃を受け大きな損耗を被った、同旅団は第124旅団とも呼ばれ、ロシア国営タス通信によれば旅団長と副旅団長及び参謀長など数十名が戦死したとのこと。詳細は不明ながら旅団司令部が全滅したわけではなく、負傷し後送中に戦死したと伝えており、後方連絡線は保たれている。

 第4自動車化狙撃旅団、旅団長はヴァチェスラフマカロフ大佐と副旅団長にエフゲニーブロスコ中佐が補職されています、旅団司令部が攻撃を受けた状況は不明で可能性として、前線が突破され司令部まで到達された、若しくは前線指揮へ旅団司令部が全員前進した、または通信電波を標定され重要指揮所と見做され集中砲撃を受けた、などの可能性がある。

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