北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】もがみ型用水中無人機OZZ-5とMCM機雷戦艦一番艦オーステンデ

2023-05-09 20:10:16 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回は各国の機雷戦への取り組みを纏めてみました。

 海上自衛隊は三菱重工より護衛艦もがみ型用水中無人機OZZ-5の受領を開始しました。OZZ-5型水中無人機はFFM多機能護衛艦として建造される護衛艦もがみ型の機雷戦を担当する装備であり、これによりオーガニック方式という、水上戦闘艦からの機雷戦闘が本格的に可能となります、これまでは艦載ソナーによる機雷探知など限られていました。

 OZZ-5型水中無人機は、全長4mで幅0.5m、重量は950㎏で速力は非開示となっています。その特色は複合ソナーシステムによる高解像度開口ソナー能力であり、NEC製低周波ソナーとフランスのタレス製高周波ソナーを組み合わせ、視程の悪いもしくは濁った海域での機雷探知、海流や障害物が存在する厳しい状況での探知能力が確保されています。

 もがみ型護衛艦にはAuDC自動検知分類能力などを含めた機雷戦情報処理装置も搭載されており、2023年3月末に最初の一機が納入され2024年内に5基が海上自衛隊へ納入される方針です。タレス社によれば日本政府の方針とともにOZZ-5型水中無人機は国際防衛装備品市場にも提供されるものとされ、この種の装備は広い需要も見込まれています。

 ベルギーとオランダが導入するMCM機雷戦艦の一番艦オーステンデが進水式を挙行しました。これはフランスのナーバルグループが建造を担当する将来機雷戦艦艇であり、高度な機雷掃討能力を持つ一種の水中無人機母艦というべき艦艇で、ベルギーとオランダの両国が共同して開発し、両国が合わせて12隻を建造、量産効果向上を期待するもの。

 オーステンデはベルギー海軍向けの一番艦で12隻の先陣を切りコンカルノーで進水式を迎え、ベルギーのリュディヴィーヌデドンデル国防相とカイサオロングレンオランダ国防相が進水式に臨席しました。進水式とともに数隻が既に起工式を迎えており、両名はこの後に同じ造船所で行われたベルギー向け三番艦トゥルネーの起工式も視察したとのこと。

 MCM機雷戦艦は満載排水量2800t、全長は82.3mと従来の掃海艇や掃海艦と比較した場合破格の大きさであり、武装も管制式ボフォース40mmMk4機関砲など充実しています、この大きさの背景には複数の大型水中無人機と無人掃海艇を管制する能力が付与されており、ベルギー海軍は6隻を導入予定、2018年に11億ユーロの予算を計上しています。

 アメリカのHII社とオーシャンアエロ社は次世代の水中無人プラットフォーム開発の協同を発表しました。HII社は既に水中無人機REMUS-MK18Mod1およびREMUS-MK18Mod 2をアメリカ海軍へ納入し、第五艦隊などで運用実績を重ねていますし、この実証実験であるデジタルホライゾン演習に参加し高い能力を示したとのことです。

 水上無人機としてオーシャンアエロ社は世界初となる再生可能エネルギー型自律式水上無人艇トリトンを完成、太陽光及び波力や風力を動力源とした無人哨戒艇であり、極めて長期間にわたり外洋での哨戒任務や情報収集任務に対応し常時情報を伝送する無人艇として完成しています。HIIとオーシャンアエロ社はこれをもとに水中無人機を開発するという。

 水中無人プラットフォーム、HII社には現在世界中で600機以上の水中無人機化稼働しているとともに機能も多様であり、なかには深海6000mまで潜航可能という無人潜水艇の開発実績があります、自律航行し例えば長期間にわたる機雷探知や機雷掃討と重要海域への機雷敷設の監視、例えば潜航する潜水艦の探知能力などが想定されているとのこと。

 シンガポール海軍はMRCV多目的戦闘艦計画の概要を決定しました。MRCV多目的戦闘艦は旧型でマストの形状がかわいらしいと話題のビクトリー級コルベットを置き換えるものとなります。ビクトリー級コルベットは有力な水上戦闘艦ですが建造は1986年とまもなく竣工40年を迎えるものであり、MRCV多目的戦闘艦はその後継艦となる計画です。

 MRCV多目的戦闘艦は無人機母艦であり無人艇母艦であるという点が特色で、機雷を掃討する機雷処分弾薬や水中を探索し不審水中物体発見から救難用にも用いる水中無人機、また一隻の水上戦闘艦が広範囲の警戒監視を行う上で必要な水上無人艇の管制能力、水中無人機の母船となる水中無人船、無人ヘリコプターや固定翼無人機の運用能力等を担う。

 MRCV多目的戦闘艦は単に水中無人機などの母艦というだけではなく艦砲やVLSを搭載した水上戦闘艦であり、日本が量産する護衛艦もがみ型のような多機能水上戦闘艦を志向しているものです。この6隻の建造にはすでに同国で実績があるシンガポールのSTエンジニアリング社が担当、計画では6隻を建造する構想で2028年に一番艦竣工を目指す。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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スーダン停戦交渉難航,双方が勝利確信し継戦-仲介のサウジアラビアとアメリカの調整,邦人更に退避へ

2023-05-09 07:00:44 | 国際・政治
■臨時情報-スーダン情勢
 邦人退避は順調に進みましたが残された現地の人々には過酷な状況が続いています。

 スーダンの政府軍とRSFとの戦闘が続く中、外務省によれば、3日、新たに邦人2名がスーダンから出国し周辺国であるウガンダに到着したとの事です。今回、自衛隊による邦人輸送任務は終了しているため、出国には国連の支援を受けたと発表されました。スーダン国内では人道支援や医療支援など、簡単に出国できない事情での邦人が少数残っています。

 外務省は海上自衛隊海賊対処任務航空部隊基地の置かれているジブチ航空拠点へ設置している現地事務所を維持し、スーダン国内に残る邦人との連絡を維持したい構えです。そして、今回出国した2名の邦人出国は、やはり、予想以上の長期化が挙げられるでしょう。

 政府軍とRSFとの停戦協議は、5月6日からサウジアラビアの仲介で停戦交渉が行われていますが、サウジアラビアのジッダでの停戦交渉は双方が妥協せず全く進んでいません。こういうのも、政府軍とRSFと双方が停戦を表明し、しかし第一線部隊の戦闘継続により停戦が破棄される状況が繰り返されており、指揮系統さえ不明瞭となっているのです。

 内戦となる懸念、政府軍とRSF双方が引かない理由は、政府軍とRSF共に十分な戦力があり双方が勝利を確信している状況が停戦を拒否する状況という。政府軍としては初動で奇襲を受けたものの戦車など重戦力と空軍を保有するために時間がかかれば有利という認識、RSFは相手の空軍基地などを着実に攻撃し戦力を削いでおり勝てる見通しがある、と。

 サウジアラビア政府は5日、アメリカのブリンケン国務長官とファイサル外相が電話会談を行ったことを発表、また8日にはアメリカの特使として安全保障政策担当のサリバン大統領補佐官がサウジアラビアを訪問しムハンマド皇太子と会談しており、サウジアラビアではアラブ首長国連邦やインドの安全保障を担う高官との協議もおこなわれている。

 邦人退避は今回の2名を加えて59名とその家族8名の合計67名となりました、スーダン国内の戦闘は大規模な戦闘ではなく散発的な戦闘が続く状況であるようですが、ハルツームなど主要都市では停電と断水、そしてなにより医療機関の閉鎖などにより正確な被害が把握できない状況、このまま共倒れを覚悟した内戦となれば、巨大な人道危機です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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