北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】F/A-18&F-35対潜哨戒機転用アメリカ海軍研究とボーイング社F/A-18E/F生産ライン2025年閉鎖決定

2023-05-23 20:01:01 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回は一寸驚きですが温故知新と云いますか昔の方式が再検討されている話題を中心に。

 F-35戦闘機を対潜哨戒に用いられないか、冷戦時代にアメリカ海軍や海上自衛隊が構想した研究を2020年代に再度アメリカ海軍と海兵隊において再検討が始まっているようです。この研究はアメリカ海軍のコリンフォックス中佐とトレバーフィリップスレバイン中佐、アメリカ海兵隊のウォーカーミルズ大尉らが連名で共同研究を進めているものです。

 “Use Emerging Technology for ASW”新技術による対潜戦闘、と銘打った研究ではF-35戦闘機やF/A-18E戦闘攻撃機を用いるというもので、これは現在対潜哨戒に用いられているP-8A哨戒機では今後西太平洋海域において想定される敵対戦闘機が展開する競合空域において、敵戦闘機の発射する長射程空対空ミサイルを前に生き残れない懸念があるため。

 MQ-9無人機へソノブイと中継装置を搭載し、無人機主体の対潜戦闘を展開する研究は既に進められていますが、今回の研究ではF-35戦闘機やF/A-18E戦闘攻撃機にソノブイと中継装置を搭載し、短時間でソノブイバリヤーを展開、またその最中に航空攻撃を受けた際には空対空戦闘を展開し撃退する、という対潜対空同時任務を想定しているようです。

 F-35戦闘機を対潜哨戒に用いる研究は、冷戦時代に海上自衛隊が研究した“F-4ファントムによる対潜戦闘”という概念と重なるものがあります。これは当時運用していたP-2哨戒機やS-2哨戒機では当時顕在化していたソ連原子力潜水艦の機動力に対応できないという課題があり、超音速飛行能力を持つファントムを対潜哨戒に用い速度で対抗するもの。

 ファントムに赤外線探知装置と磁気探知装置、そしてロケット弾を搭載する、この研究は第四次防衛力整備計画検討段階に出された数多の対潜能力構築案の一つで、実現はしていません。ただ、潜水艦に搭載するサブロック対潜ミサイルなど、浮上中の潜水艦を魚雷よりも早い装備により先行前に無力化するという発想であり、これと重なることとなります。

 A-6イントルーダー攻撃機、アメリカ海軍もS-2哨戒機ではソ連潜水艦の機動力に対抗できないという視点からジェット機の運用が研究され、この結果生まれたのが速力の大きなS-3バイキング艦上哨戒機です。S-3が既に退役した今、空母艦載機であるF/A-18Eに対潜能力を持たせるのには、短期間に固定翼ジェット哨戒機を空母に配備できる利点もある。

 アメリカのボーイング社はF/A-18戦闘機製造ラインを2025年に閉鎖する決定を発表しました。今後新たな追加発注があった場合に限り2027年まで製造を延長するとしています。ボーイング社では今後、新たな航空機のフルレート生産が開始されるのに合わせ、製造ラインを確保しなければならない状況がありF/A-18の時代が終焉を迎えるという構図だ。

 F/A-18戦闘機製造ラインは、T-7Aレッドホーク高等練習機、MQ-25スティングレイ艦上無人機、F-15EXイーグルⅡ戦闘爆撃機などに製造が転換することとなり、スーパーホーネットの生産は終了するものの、基本設計でははるかに古いF-15イーグルの改良型であるF-15EXイーグルⅡ戦闘爆撃機の製造が継続されるのはなにか感慨深いものがあります。

 ボーイング社によれば新規製造は終了するものの既存のF/A-18E/F戦闘攻撃機とEA-18G電子攻撃機の近代化改修は継続されるとのこと。この生産終了はドイツ空軍のF/A-18E戦闘攻撃機決定が撤回され、F-35戦闘機へ転換したことが終了を速めた可能性もあるでしょう。またこれによりF/A-18のさらなる改良型の開発も今後行われないこととなります。

 航空自衛隊が2018年に検討していたEA-18G電子攻撃機導入検討はボーイング社のF/A-18シリーズ2025年製造ライン閉鎖により事実上不可能となります。EA-18G電子攻撃機導入検討というのは政府部内の検討と航空自衛隊部内での電子戦専用機導入を求める声に対応したものですが、検討段階にとどまり導入検討段階までは進みませんでした。

 電子攻撃機導入検討という段階であれば、概算要求に旧式化したF-15戦闘機を電子攻撃機へ改造する電子戦ポッドを開発する検討は為されていますが、初期のF-15戦闘機は1981年より導入が開始され既に運用開始40年となっています。一方で、日本としてはEA-18Gと共にアメリカ海軍がF/A-18を対潜運用に充てる研究にも注目すべきかもしれません。

 荒唐無稽な案ではありますが、P-1哨戒機を今後中国軍の長射程空対空ミサイル脅威が及ぶ沖縄付近の戦場に投入するには、空挺空ミサイルを撃墜するレーザー砲を追加するか、空対空戦闘能力を持つ哨戒機が必要となります、すると航空自衛隊のEA-18Gと海上自衛隊のF/A-18Fを90機程度日本でライセンス生産してはどうか、とも考えてしまうのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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G7広島サミット閉幕-核軍縮は後継装備開発等進まぬ結果と平和維持軍等出口戦略無きロシアウクライナ戦争

2023-05-23 07:00:03 | 国際・政治
■臨時情報-G7広島サミット
 G7広島サミットはゼレンスキー大統領出席と核軍縮の討議が禁忌ではないことを実績として残した点が大きな一歩でした。

 G7サミット、ロシア制裁強化と制裁抜け道排除、なによりも制裁堅持においてG7はまとまる事が出来ました。ただ、もう一歩進んで“停戦が実現した場合の平和維持”への取り組みが議題とならなかった事は残念でした。停戦した場合でも、その停戦がロシアに再侵攻を準備させる期間に利用される事が在ってはなりません、平和維持軍駐留が必要となる。

 ゼレンスキー大統領が出席したことで、当事者を交えて主要国が討議する貴重な機会であったはずです。G7ではアメリカ大統領選挙が迫る中で具体的な姿勢を定められない問題があり、そもそもアメリカが部隊派遣などについて消極的だという問題は理解できますが、21世紀一杯、兵力引き離しのPKO部隊を駐留させ、二度と繰り返させない施策は必要だ。
■核軍縮よりも核陳腐化を
 核兵器を減らすのは簡単です、極論使えば減るという視点で。しかしそれ以外の選択肢を考えなければならないならば後継装備開発による陳腐化という視点を日本こそが提唱すべきでしょう。

 核兵器の後継兵器についてを議論する事の方が核廃絶への大きな道程を進めると考えます、勿論、SF要素を含んだ反陽子兵器のような、実現した場合は水爆よりも破壊力が大きな兵器を開発する方向性に向かった場合は、単位脅威が増大するだけですが、核兵器以前の戦略兵器であった戦艦が、事実上廃絶された経緯を考えれば、陳腐化が核廃絶への近道です。

 神の杖、ガンダムの概念の生みの親であるハインラインの“月は無慈悲な夜の女王”を髣髴とさせる、都市を壊滅させる威力は無いが敵国指導者の指揮中枢を外科手術的に無力化する装備体系のようなものは、ある意味政治的な武器である核兵器を陳腐化させ得ます。大量破壊兵器以外で核兵器を陳腐化させる装備開発は、G7で議題とすべき命題とおもう。
■ウクライナ
 記者会見において日本のマスコミレベルの限界を思いしったという、やはりぶらさがり記者だけではなく世界を舞台に独自取材できる記者を育てる気概が必要だ。

 世論の中でも少数派ではあっても存在するのは、ウクライナが降伏すれば戦争は終わる、という暴論です。この人たちの中では、米軍占領下の沖縄に余程いい思い出があるのか、若しくは旧日本軍が発表した占領下の中国の人々の幸せな生活というプロパガンダを信じているのでしょう、ただわたしの視点から見れば占領下人権が蹂躙される中に幸せはない。

 不戦、を掲げたいことは判るのですが、占領下でロシアが占領地をロシア本土へ併合すれば占領地の人々が徴兵の対象となります、するとかつての同胞へ銃を向ける事を強制される事が広義の不戦に含まれるのか、そんな仮定論では議論しないと反論されるかもしれませんが、仮定ではなく事実です。不戦平和論を掲げる方は少し歴史だけでも学ぶべきだ。

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