北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】X-58Aステルス無人機とFMAN/FMC対艦/巡航ミサイル,アーロックMALE中高高度長距離無人偵察機

2023-10-03 20:00:11 | 先端軍事テクノロジー
■■■防衛フォーラム■■■
 今回は無人航空機の最新の話題です。自衛隊はこの分野で遅れていますが今後様々な装備体系の後継機として大量に配備する計画が2022年に発表されました。

 アメリカのクラトス社はX-58Aステルス無人機のアメリカ空軍LCASD低コスト無人機計画での新規契約を発表しました。契約は2月25日に結ばれたもので、将来戦闘のゲームチェンジャーとなりうるステルス無人機が進展したことを示します。X-58Aはステルス形状を採用していますが、一機当たりの取得費用は巡航ミサイル一発程度ともいわれる。

 X-58Aステルス無人機は標的機などの技術を基にステルス形状を採用し飛行制御プログラムにより飛行させるものですが、例えば第一線での空中給油や有人ステルス戦闘機のセンサーとして、安価であるため危険な空域への航空打撃はもちろん、最悪の場合は徘徊式弾薬としても寄与することでしょう。なによりこれは安いステルス機、という点が特色です。

 アメリカ空軍ではF-35戦闘機など第五世代戦闘機の精力的な整備を進め、またB-21爆撃機など既存のB-2爆撃機よりも取得費用を低下させるなどコスト管理に注力していますが、将来的に世界規模での軍事作戦を展開させるには作戦機の不足が懸念されています、そこでゲームチェンジャーといえるほどの安価なステルス無人機の開発を進めているのです。
■FMAN/FMCミサイル
 ウクライナでのストームシャドウミサイルの戦果も注目されそれ程射程の長くないものでも巡航ミサイルの有用性が確認されています。

 イタリア政府はイギリスとフランスが進めるFMAN/FMC対艦/巡航ミサイル計画へ参加を決定しました。6月20日にイギリスフランス両国へ開発参加覚書を示した事で正式決定しており、両国は1億ユーロという現在両国が均等に支出することが決定している開発資金の分担についてイタリア産かで開発三か国が増えたことを歓迎しているとのこと。

 FMAN/FMC対艦/巡航ミサイル開発には主契約企業としてミサイル開発に実績の多いMBDA社が担当することとなっています、現在この種のミサイルとしてはイギリスとフランスが採用するストームシャドウミサイルが挙げられますが、こちらは航空機からの投射専用であり、FMAN/FMC対艦/巡航ミサイルは航空機と艦艇や地上から運用します。

 FMAN/FMC対艦/巡航ミサイルは2030年の実用化が見込まれており、開発リスクを抑えたうえで長距離対艦戦闘と空軍の深部打撃能力を強化するのが狙い。射程については明らかにされていませんが、現在のオトマート対艦ミサイルの倍に当たる360㎞以上を見込んでおり、今後数十年間にわたり陸海空軍の長距離打撃能力中枢を担うとされています。
■対戦車用徘徊式弾薬
 自衛隊でも徘徊式弾薬を対戦車ヘリコプター後継に検討中だ。

 フランス国防技術庁は対戦車用徘徊式弾薬開発の主契約企業にネクスター社を選定しました。対戦車用徘徊式弾薬とはいわゆる特攻無人機の大型機で戦車を確実に破壊できる大型の弾頭を搭載したもの。対戦車用徘徊式弾薬はロシアウクライナ戦争において戦車への威力が確認されており、部分的に戦闘ヘリコプターの任務を代替しえるものです。

 ネクスター社が開発するものは進出距離が最低で80㎞、そして80㎞先において3時間の滞空が可能、というものです。その構成要素としては既にあるEOSテクノロジー社が製造するUAS無人航空機システム、そしてGPS通信が不可能である場合でも精密航法を可能とさせる新興企業TRAAKの慣性航法装置などを装備システム化するのがその狙い。

 対戦車用徘徊式弾薬センサーとしては日中で15㎞とそして夜間でも3㎞の距離で車両を識別捕捉可能とする複合センサーを搭載するとのこと。フランス政府が画定した国防計画2024-2030予算には無人航空機システム強化へ50億ユーロの予算が計上されており、対戦車用徘徊式弾薬の開発及び導入にはこの予算が充てられることとなるのでしょう。
■アーロックMALE
 無人航空機の写真が少ないと改めて。

 フランスのトゥルギ&ガイヤール社は新型のアーロックMALE中高高度長距離無人偵察機をパリ航空ショー2023において初公開しました、トゥルギ&ガイヤール社ではこの航空機をプライベートベンチャーにより開発しており、この分野で市場をほぼ独占するジェネラルアトミクス社のMQ-9リーパー/ガーディアンに対抗する性能を持つとされます。

 アーロックMALE中高高度長距離無人偵察機はリーパーのような機首部分にセンサーを搭載するのではなく、ターボプロップエンジンを機首部分に搭載し、ターボプロップ方式の高等練習機をそのまま無人航空機としたような形状を採用、各種センサーは胴体部分に搭載し全幅22m、巡航速度494km/h、巡航高度1万0100mを想定しているとのこと。

 トゥルギ&ガイヤール社はフランスの防衛コンサルタント企業でもともとは2011年に二人の共同経営者により創設された企業ですが、航空宇宙分野や海洋分野及びサイバー領域での軍用先端技術装備で実績を重ねていて、2022年にはフランス国内9カ所に開発拠点や製造拠点を有し、社員は300名以上、年間収益は5000万ユーロにたっしています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-メリトポリへの前進とロシア軍ザポリージャ州西部空挺軍増強,クリャピンスク方面拘束任務

2023-10-03 07:00:55 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 自衛隊でも米軍でもロシア軍でも空挺と云えば精鋭中の精鋭を集めているは撃ですがロシア軍は火消しの歩兵部隊として重宝している状況が不憫だ。

 ロシア軍は過去2週間にわたりザポリージャ州西部へ空挺軍の増強を継続している、イギリス国防省ウクライナ戦況報告9月18日版がその情報をまとめています。ザポリージャ州のオリキウ周辺に部隊を集中しているとされ、具体的には第7親衛空挺師団と第76親衛空挺師団の4個乃至5個連隊がロボティネ村周辺に展開、定数通りならば1万名だ。

 空挺軍はしかしどの連隊も大幅に消耗しており、具体的な人員規模は不明であるとともに再編成に着手する前に前線へ投入されている構図です。ロシア国防省は空挺軍を本来の機動部隊として再編制しようとしてきましたが、現在ではその見通しが立たず、練度の高い軽歩兵部隊として用いており、軽歩兵部隊には難しい打撃任務にも充当しているもよう。
■メリトポリへ前進
 反撃の攻勢軸はメリトポリへ向かう。

 アメリカ戦争研究所iSWが9月21日にまとめたところによれば、この一週間の間、ロシア軍によるクリャピンスク方面での攻撃が低調になっているとのこと。ただ、この地域ではロシア軍が11万の兵力を集中させているため、攻撃に出ない最中にあってもウクライナ軍に対しポテンシャルを発揮し、兵力を引き留める拘束としての機能を発揮している。

 東部戦線北部の概況は以上の通りですが、東部戦線南部においてはロシア軍がシャフタルスケ地区において戦闘を継続しており、ウクライナ軍はロシア軍による攻撃を撃退したとしています。ロシア軍はザポリージャ州におけるウクライナ軍反攻作戦を受け戦力を転用し集中させている兆候といえる。一方、ウクライナ軍はメリトポリへ前進を継続中という。
■ザポリージャ州西部
 ザポリージャ州西部で鉄道線を奪還しつつある。

 ISWアメリカ戦争研究所が9月18日に発表したところによれば、ウクライナ軍は南部戦線のザポリージャ州西部において攻撃を成功、オリヒフの南東18kmにあるヴェルボベ西地区まで前進しました。これによりこの一週間でウクライナ軍は5平方キロ以上を奪還した事となります、無論荒野を奪還したのではなくロシア軍の重厚な防御陣地に対して。

 クリシチフカ、東部戦線中央部でウクライナ軍が奪還したクリシチフカではウクライナ軍が防御陣地を構築中で、ロシア軍の逆襲に警戒しています。具体的にはクリシチフカの東方にある鉄道線路付近ではロシア軍とウクライナ軍が断続的に戦闘を継続しており、ロシア軍は鉄道線路を確保するべくウクライナ軍へ逆襲の旗艦を探っている状況という。

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