■防衛フォーラム
今回は装輪装甲車や装甲戦闘車など装甲車関連の話題を中心にいろいろおりまぜて各国の陸軍関連の最新情報をお伝えしましょう。
スウェーデン陸軍はパトリア6×6装輪装甲車の受領を開始しました、パトリア6×6装輪装甲車はクングセンゲン駐屯地のスウェーデンライフガード連隊へ配備される計画で、スウェーデン国王近衛部隊であるとともに首都ストックホルムの警備任務も担う連隊です。受領した車両は初度検査を経て8月以降、部隊へ配備が開始される見込みとのこと。
Pansarterrängbil 300の名称でスウェーデンに配備されるフィンランド製パトリア6×6装輪装甲車、スウェーデン軍は2022年6月に国際共同開発計画へ参加を表明、2023年4月に最初の20両は発注され汎用装甲車として400両の追加計画があります。2022年ロシアウクライナ戦争を受け増強を開始したスウェーデン軍は装甲車が不足しています。
■K-9A1自走榴弾砲48両
韓国のK-9は売れているなあと思いつつ自衛隊の99式自走榴弾砲と比較した場合打撃力は大差ないけれどもエンジンはK-9の方が強力なものを搭載しているので不整地に強い。
ポーランド軍はK-9A1自走榴弾砲48両を追加受領しました。これは8月15日にポーランドが実施した大規模な軍事パレードの際に発表、この軍事パレードはポーランド国内で実施されたものでは冷戦終結後最大規模のものであり、ロシアウクライナ戦争とベラルーシ軍のポーランド国境近くでの緊張増大に対応する示威的なパレードでした。
K-9A1自走榴弾砲は2022年8月にポーランドと韓国のハンファディフェンス社が212両の24億ドル調達契約を結んでいます、調達は2026年までに完了する計画で、併せてポーランド国内でのライセンス生産部品が含まれ、ポーランド国産のAHSクラブ自走榴弾砲にも車体部分が応用されているほか、その能力向上型にも応用される計画です。
■BT-3F自走対戦車ミサイル
コルネットE対戦車ミサイルは一年前まで世界最強と強調されていましたがレオパルド2はもちろんブラッドレイにもきかないという。
ロシア軍はBT-3F自走対戦車ミサイルシステムを発表しました。新型装備ではあるものの既存のBT-3F車体部分に対戦車ミサイルを搭載したもので、その発表は8月11日にロシアメディアがテレビ報道により紹介するというもの。もともとこのBT-3Fは水陸両用装甲車で、その車体上にコルネットE対戦車ミサイルを搭載したものという。
BT-3F装甲車はBMP-3装甲戦闘車の車体設計を応用したもので、しかしBMP-3の派生型ではありません。特色としてはBT-3Fは海軍歩兵部隊での使用を想定し浮航時に波浪の影響を抑えるスクリーンを装備した点です。コルネットEは射程5500m、ウクライナ軍のレオパルド2戦車にも発射され貫通はしませんでしたが命中することは出来ました。
■ボクサー装甲偵察車用にスパイクLR2
陸上自衛隊の偵察戦闘車もどうなるのか。
オーストラリア陸軍ボクサー装甲偵察車用にスパイクLR2ミサイルの取得が契約されました。これはラファエルオーストラリア社とオーストラリア国防省が締約したもので、オーストラリア防衛産業であるヴァーリーグループとの合弁会社ヴァーリーラファエルオーストラリア社がライセンス生産することで迅速な引き渡しと装備化を目指しています。
スパイクLR2は2018年に開発された最新型、ミサイル本体は12.7kgとスパイクLRよりも軽量化されているものの、射程延伸と非冷却型シーカーの採用、そしてAI人工知能を用いたスマートターゲットトラッカーを採用し目標が回避行動をとった場合でも追尾が可能であり、そして射程は地上発射型5.5㎞、空中発射型10㎞と延伸しています。
■ハンガリーリンクス装甲戦闘車工場
ハンガリーはオルバン政権がウクライナ支援に消極的ということで親ロシア政権ではないかともいわれていますが、ハンガリー動乱の再来に備えてロシアへの警戒は緩むどころか強化されている。
ハンガリーはリンクス装甲戦闘車工場を開設しました。リンクス装甲戦闘車はドイツのラインメタル社が独自開発した重装甲を誇る装甲戦闘車ですが、ドイツ連邦軍はプーマ装甲戦闘車を採用しているため、リンクス採用国はハンガリーがローンチカスタマーとなりました。そしてラインメタル社はドイツ政府の政策に基づき製造ラインを削減している。
ラインメタル社はこうした背景から、自社製品の現地生産に積極的であり、ハンガリー政府はリンクス採用に併せて国内生産を希望、これを受けザラエゲルシェクへ建設されていた工場がこのほど完成したもの。ハンガリーはズリーニ2026計画として防衛装備国産体制強化を掲げており、今回建設のラインメタル社新工場はその中枢を担う見通しです。
■アロー3大気圏外ミサイル迎撃システム
イージスミサイル防衛システム以外にも選択肢がある事を示している構図ですが射程がやけに長いのですよね。
ドイツ政府が導入するイスラエル製アロー3大気圏外ミサイル迎撃システムの輸出をアメリカ国務省が承認しました。イスラエル防衛産業市場最大となる140億ドルもの巨額の防衛装備輸出となります。アロー3はイスラエルが独自開発したミサイル防衛システムであり、1991年湾岸戦争に際し有効な弾道ミサイル防衛手段の欠如を受け開発された。
アロー3の特筆すべき点は2500㎞以遠の弾道ミサイルを迎撃可能である点で、これはアメリカのミサイル防衛システムをはるかに上回ります、その理由として1965年の米ソABM制限条約により、一定以上の距離での弾道ミサイル迎撃能力は相手の報復を回避し核攻撃が可能となる懸念を受け米ソ両国が制限、この合意は米ロ間でも維持されている。
イスラエルとドイツの正式契約は2023年11月ごろに予定されていますが、このアロー3はイスラエルが開発したものであるとともに、アメリカの資金援助と技術援助を受けており、輸出にはアメリカの承認が必要でした。ドイツは2022年ロシアウクライナ戦争を受けミサイル防衛システムの必要性を痛感、アロー3導入交渉を続けていました。
■戦車乗員パイロットプログラム
急造チームでもチームワークを組めるようにするというガルパン的な発想なのですね。
アメリカ陸軍は戦車乗員パイロットプログラムを推進中です。これは気候旅団戦闘団の即応性強化を企図したもので、現在テキサス州フォートブリス第1機甲師団第1機甲旅団戦闘団とカンザス州フォートライリー第1歩兵師団第1機甲旅団戦闘団がその評価試験を行っています。この計画は近年の旅団以上の戦闘能力重視回帰に合わせたものです。
パイロットプログラムとは、いままで戦車であれば乗員4名の能力を基本として年次検定などを行ってきましたが、例えば疾病例えば産休に際し車長や砲手に操縦手や装填手一人でも欠ければ再検定が必要でした。しかし、今後は個人の特技能力として資格化し、必要に応じて即座に乗員チームを組めるよう切り替えるのは、パイロットプログラムです。
■LRSS軽装甲車両偵察システム
自衛隊も一種類の共通車輛で一気に置換えられればいいのですが、例えば軽装甲機動車と高機動車をハーケイかイーグル4一種類の大量調達で置換えるとか。
カナダ陸軍はLRSS軽装甲車両偵察システム計画を推進させます。現在カナダ軍はスイスのモワク社が開発したピラーニャシリーズをライセンス生産したコヨーテ装甲車を偵察用装甲車として運用していますが、防御力や不整地突破能力等で2020年代の装輪装甲車としては陳腐化しており、ピラーニャシリーズの新型LAV6.0導入を模索していました。
LAV6.0は陸上自衛隊の次期装輪装甲車船艇でも候補となりましたが、期間内に試験車が納入されずパトリアAMV装甲車が採用されています。一方でLRSS軽装甲車両偵察システムはこれまで大きく遅延していました。それは単に装甲車としての性能だけではなく偵察システムを備えた装備であるため、ソフトウェア開発のセキュリティが要求されたため。
LRSS軽装甲車両偵察システムはもう一つ、車体部分を製造するカナダ国内の防衛産業下請け会社が倒産するという問題に直面、これを受け全体を製造するジェネラルダイナミクスランドシステムズカナダ社は新しい下請け企業を探す必要に見舞われ、その開発が大きく遅延したのでした。今回は試作車が納入され、計画はひょうか試験へと前進します。
■トルナードG
低価格で大量に生産していたもののソ連時代の遺産が潰されていて決して安価ではない新造装備で代替する、日本の隣国はこんな感じなのです。
ロシア陸軍はBM-21ロケット砲後継として9A53GトルナードG多連装ロケット砲量産を発表しました。BM-21は1960年代初頭にカチューシャロケットの後継として開発され、トラックにロケット発射筒を40連装するという簡易な構造ながら高い信頼性を持つ装備ですが、2022年ロシアウクライナ戦争で既に300両以上が全損しているという。
9A53GトルナードG多連装ロケット砲は元々BM-21の能力向上型として2012年に発表されたものですが、BM-21でも十分であり36両が試験的に製造されただけでした。しかしこの評価が一転したのは大量のBM-21喪失です。今回量産が決定された9A53GトルナードG多連装ロケット砲はグロナス衛星座標システムと連動した火器管制装置を積む。
BM-21ロケット砲のウクライナでの喪失は決して長くない射程の122mmロケットが射撃を行った数分後にカエサル自走榴弾砲など高精度の榴弾砲で40㎞以遠から撃たれるためで、車体部分には小銃弾を想定した防御と車体下部には6㎏までの地雷やIED簡易爆発物への防護能力が付与されているといい、ウクライナでの損耗を補填するのが狙い。
■ブラッドレイ追加
自衛隊は2004年度を最後に89式装甲戦闘車の調達を中止していますが調達中止よりも柔軟に生産ラインを再開できる能力の方が重要なのかもしれませんね。
アメリカ陸軍はBAEシステムズ社との間でM-2A4ブラッドレイ装甲戦闘車追加を契約しました。この契約では1億9000万ドルをとうじてテキサス州テクサーカナのレッドリバー陸軍補給廠と、サウスカロライナ州エイケンのBAEシステムズ社工場においてM-2A4装甲戦闘車及びM-7A4砲兵観測車を含め70両が追加調達されることとなります。
M-2A4ブラッドレイ装甲戦闘車は、近年のアメリカ陸軍機甲旅団戦闘団再評価の中に在って従来のM-2A2などと比較しエンジン性能の強化とIED簡易爆発物対処能力の向上と車両事故診断装置による故障予防性能の強化などが加えられています。ブラッドレイはロシアウクライナ戦争においてT-72戦車砲弾に耐えるなど強靭な防御力を誇示しています。
■段ボール無人機
自衛隊は戦闘ヘリコプターや対戦車ヘリコプターという40年以上に渡り整備した航空打撃力を全廃し無人機へ切り替える最中ですが、ここまで無人機いという手段が普及すると対策手段が大規模に開発されてしまいそう。
ウクライナ軍はオーストラリア製段ボール無人機での長距離攻撃に成功したと発表しました。攻撃はクルスクにあるロシア軍航空基地に対して実施されMiG-29戦闘機とSu-30戦闘機など4機や地上防空システムなどに損傷を与えたとしていますが、特筆すべきは前述の通り、この攻撃を果たしたのは段ボール製自爆用無人機であったということです。
段ボール製無人機を開発したのはオーストラリアのスタートアップ企業SYPAQ社で、もちろん紙飛行機のような安易なものではなく耐水性を増すために蝋引きした段ボールと主要部分の制御には輪ゴムを大胆に使用し、一回限りの使用となる自爆用無人機故に徹底した低コストにより数を揃えられるように敢えて段ボールを用いたという大胆な設計という。
Corvo Precision Payload Delivery System 、略してPPDS無人機の特筆すべき点は納品段階では段ボールは平積みの状態で梱包され、四角い胴体の内部にエンジンと航法装置を搭載し、一定程度の爆薬を搭載可能、面倒なフラップなどの制御は輪ゴムを用いるというもの。なおロシア軍は模型飛行機用発泡スチロール製自爆用無人機を開発しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回は装輪装甲車や装甲戦闘車など装甲車関連の話題を中心にいろいろおりまぜて各国の陸軍関連の最新情報をお伝えしましょう。
スウェーデン陸軍はパトリア6×6装輪装甲車の受領を開始しました、パトリア6×6装輪装甲車はクングセンゲン駐屯地のスウェーデンライフガード連隊へ配備される計画で、スウェーデン国王近衛部隊であるとともに首都ストックホルムの警備任務も担う連隊です。受領した車両は初度検査を経て8月以降、部隊へ配備が開始される見込みとのこと。
Pansarterrängbil 300の名称でスウェーデンに配備されるフィンランド製パトリア6×6装輪装甲車、スウェーデン軍は2022年6月に国際共同開発計画へ参加を表明、2023年4月に最初の20両は発注され汎用装甲車として400両の追加計画があります。2022年ロシアウクライナ戦争を受け増強を開始したスウェーデン軍は装甲車が不足しています。
■K-9A1自走榴弾砲48両
韓国のK-9は売れているなあと思いつつ自衛隊の99式自走榴弾砲と比較した場合打撃力は大差ないけれどもエンジンはK-9の方が強力なものを搭載しているので不整地に強い。
ポーランド軍はK-9A1自走榴弾砲48両を追加受領しました。これは8月15日にポーランドが実施した大規模な軍事パレードの際に発表、この軍事パレードはポーランド国内で実施されたものでは冷戦終結後最大規模のものであり、ロシアウクライナ戦争とベラルーシ軍のポーランド国境近くでの緊張増大に対応する示威的なパレードでした。
K-9A1自走榴弾砲は2022年8月にポーランドと韓国のハンファディフェンス社が212両の24億ドル調達契約を結んでいます、調達は2026年までに完了する計画で、併せてポーランド国内でのライセンス生産部品が含まれ、ポーランド国産のAHSクラブ自走榴弾砲にも車体部分が応用されているほか、その能力向上型にも応用される計画です。
■BT-3F自走対戦車ミサイル
コルネットE対戦車ミサイルは一年前まで世界最強と強調されていましたがレオパルド2はもちろんブラッドレイにもきかないという。
ロシア軍はBT-3F自走対戦車ミサイルシステムを発表しました。新型装備ではあるものの既存のBT-3F車体部分に対戦車ミサイルを搭載したもので、その発表は8月11日にロシアメディアがテレビ報道により紹介するというもの。もともとこのBT-3Fは水陸両用装甲車で、その車体上にコルネットE対戦車ミサイルを搭載したものという。
BT-3F装甲車はBMP-3装甲戦闘車の車体設計を応用したもので、しかしBMP-3の派生型ではありません。特色としてはBT-3Fは海軍歩兵部隊での使用を想定し浮航時に波浪の影響を抑えるスクリーンを装備した点です。コルネットEは射程5500m、ウクライナ軍のレオパルド2戦車にも発射され貫通はしませんでしたが命中することは出来ました。
■ボクサー装甲偵察車用にスパイクLR2
陸上自衛隊の偵察戦闘車もどうなるのか。
オーストラリア陸軍ボクサー装甲偵察車用にスパイクLR2ミサイルの取得が契約されました。これはラファエルオーストラリア社とオーストラリア国防省が締約したもので、オーストラリア防衛産業であるヴァーリーグループとの合弁会社ヴァーリーラファエルオーストラリア社がライセンス生産することで迅速な引き渡しと装備化を目指しています。
スパイクLR2は2018年に開発された最新型、ミサイル本体は12.7kgとスパイクLRよりも軽量化されているものの、射程延伸と非冷却型シーカーの採用、そしてAI人工知能を用いたスマートターゲットトラッカーを採用し目標が回避行動をとった場合でも追尾が可能であり、そして射程は地上発射型5.5㎞、空中発射型10㎞と延伸しています。
■ハンガリーリンクス装甲戦闘車工場
ハンガリーはオルバン政権がウクライナ支援に消極的ということで親ロシア政権ではないかともいわれていますが、ハンガリー動乱の再来に備えてロシアへの警戒は緩むどころか強化されている。
ハンガリーはリンクス装甲戦闘車工場を開設しました。リンクス装甲戦闘車はドイツのラインメタル社が独自開発した重装甲を誇る装甲戦闘車ですが、ドイツ連邦軍はプーマ装甲戦闘車を採用しているため、リンクス採用国はハンガリーがローンチカスタマーとなりました。そしてラインメタル社はドイツ政府の政策に基づき製造ラインを削減している。
ラインメタル社はこうした背景から、自社製品の現地生産に積極的であり、ハンガリー政府はリンクス採用に併せて国内生産を希望、これを受けザラエゲルシェクへ建設されていた工場がこのほど完成したもの。ハンガリーはズリーニ2026計画として防衛装備国産体制強化を掲げており、今回建設のラインメタル社新工場はその中枢を担う見通しです。
■アロー3大気圏外ミサイル迎撃システム
イージスミサイル防衛システム以外にも選択肢がある事を示している構図ですが射程がやけに長いのですよね。
ドイツ政府が導入するイスラエル製アロー3大気圏外ミサイル迎撃システムの輸出をアメリカ国務省が承認しました。イスラエル防衛産業市場最大となる140億ドルもの巨額の防衛装備輸出となります。アロー3はイスラエルが独自開発したミサイル防衛システムであり、1991年湾岸戦争に際し有効な弾道ミサイル防衛手段の欠如を受け開発された。
アロー3の特筆すべき点は2500㎞以遠の弾道ミサイルを迎撃可能である点で、これはアメリカのミサイル防衛システムをはるかに上回ります、その理由として1965年の米ソABM制限条約により、一定以上の距離での弾道ミサイル迎撃能力は相手の報復を回避し核攻撃が可能となる懸念を受け米ソ両国が制限、この合意は米ロ間でも維持されている。
イスラエルとドイツの正式契約は2023年11月ごろに予定されていますが、このアロー3はイスラエルが開発したものであるとともに、アメリカの資金援助と技術援助を受けており、輸出にはアメリカの承認が必要でした。ドイツは2022年ロシアウクライナ戦争を受けミサイル防衛システムの必要性を痛感、アロー3導入交渉を続けていました。
■戦車乗員パイロットプログラム
急造チームでもチームワークを組めるようにするというガルパン的な発想なのですね。
アメリカ陸軍は戦車乗員パイロットプログラムを推進中です。これは気候旅団戦闘団の即応性強化を企図したもので、現在テキサス州フォートブリス第1機甲師団第1機甲旅団戦闘団とカンザス州フォートライリー第1歩兵師団第1機甲旅団戦闘団がその評価試験を行っています。この計画は近年の旅団以上の戦闘能力重視回帰に合わせたものです。
パイロットプログラムとは、いままで戦車であれば乗員4名の能力を基本として年次検定などを行ってきましたが、例えば疾病例えば産休に際し車長や砲手に操縦手や装填手一人でも欠ければ再検定が必要でした。しかし、今後は個人の特技能力として資格化し、必要に応じて即座に乗員チームを組めるよう切り替えるのは、パイロットプログラムです。
■LRSS軽装甲車両偵察システム
自衛隊も一種類の共通車輛で一気に置換えられればいいのですが、例えば軽装甲機動車と高機動車をハーケイかイーグル4一種類の大量調達で置換えるとか。
カナダ陸軍はLRSS軽装甲車両偵察システム計画を推進させます。現在カナダ軍はスイスのモワク社が開発したピラーニャシリーズをライセンス生産したコヨーテ装甲車を偵察用装甲車として運用していますが、防御力や不整地突破能力等で2020年代の装輪装甲車としては陳腐化しており、ピラーニャシリーズの新型LAV6.0導入を模索していました。
LAV6.0は陸上自衛隊の次期装輪装甲車船艇でも候補となりましたが、期間内に試験車が納入されずパトリアAMV装甲車が採用されています。一方でLRSS軽装甲車両偵察システムはこれまで大きく遅延していました。それは単に装甲車としての性能だけではなく偵察システムを備えた装備であるため、ソフトウェア開発のセキュリティが要求されたため。
LRSS軽装甲車両偵察システムはもう一つ、車体部分を製造するカナダ国内の防衛産業下請け会社が倒産するという問題に直面、これを受け全体を製造するジェネラルダイナミクスランドシステムズカナダ社は新しい下請け企業を探す必要に見舞われ、その開発が大きく遅延したのでした。今回は試作車が納入され、計画はひょうか試験へと前進します。
■トルナードG
低価格で大量に生産していたもののソ連時代の遺産が潰されていて決して安価ではない新造装備で代替する、日本の隣国はこんな感じなのです。
ロシア陸軍はBM-21ロケット砲後継として9A53GトルナードG多連装ロケット砲量産を発表しました。BM-21は1960年代初頭にカチューシャロケットの後継として開発され、トラックにロケット発射筒を40連装するという簡易な構造ながら高い信頼性を持つ装備ですが、2022年ロシアウクライナ戦争で既に300両以上が全損しているという。
9A53GトルナードG多連装ロケット砲は元々BM-21の能力向上型として2012年に発表されたものですが、BM-21でも十分であり36両が試験的に製造されただけでした。しかしこの評価が一転したのは大量のBM-21喪失です。今回量産が決定された9A53GトルナードG多連装ロケット砲はグロナス衛星座標システムと連動した火器管制装置を積む。
BM-21ロケット砲のウクライナでの喪失は決して長くない射程の122mmロケットが射撃を行った数分後にカエサル自走榴弾砲など高精度の榴弾砲で40㎞以遠から撃たれるためで、車体部分には小銃弾を想定した防御と車体下部には6㎏までの地雷やIED簡易爆発物への防護能力が付与されているといい、ウクライナでの損耗を補填するのが狙い。
■ブラッドレイ追加
自衛隊は2004年度を最後に89式装甲戦闘車の調達を中止していますが調達中止よりも柔軟に生産ラインを再開できる能力の方が重要なのかもしれませんね。
アメリカ陸軍はBAEシステムズ社との間でM-2A4ブラッドレイ装甲戦闘車追加を契約しました。この契約では1億9000万ドルをとうじてテキサス州テクサーカナのレッドリバー陸軍補給廠と、サウスカロライナ州エイケンのBAEシステムズ社工場においてM-2A4装甲戦闘車及びM-7A4砲兵観測車を含め70両が追加調達されることとなります。
M-2A4ブラッドレイ装甲戦闘車は、近年のアメリカ陸軍機甲旅団戦闘団再評価の中に在って従来のM-2A2などと比較しエンジン性能の強化とIED簡易爆発物対処能力の向上と車両事故診断装置による故障予防性能の強化などが加えられています。ブラッドレイはロシアウクライナ戦争においてT-72戦車砲弾に耐えるなど強靭な防御力を誇示しています。
■段ボール無人機
自衛隊は戦闘ヘリコプターや対戦車ヘリコプターという40年以上に渡り整備した航空打撃力を全廃し無人機へ切り替える最中ですが、ここまで無人機いという手段が普及すると対策手段が大規模に開発されてしまいそう。
ウクライナ軍はオーストラリア製段ボール無人機での長距離攻撃に成功したと発表しました。攻撃はクルスクにあるロシア軍航空基地に対して実施されMiG-29戦闘機とSu-30戦闘機など4機や地上防空システムなどに損傷を与えたとしていますが、特筆すべきは前述の通り、この攻撃を果たしたのは段ボール製自爆用無人機であったということです。
段ボール製無人機を開発したのはオーストラリアのスタートアップ企業SYPAQ社で、もちろん紙飛行機のような安易なものではなく耐水性を増すために蝋引きした段ボールと主要部分の制御には輪ゴムを大胆に使用し、一回限りの使用となる自爆用無人機故に徹底した低コストにより数を揃えられるように敢えて段ボールを用いたという大胆な設計という。
Corvo Precision Payload Delivery System 、略してPPDS無人機の特筆すべき点は納品段階では段ボールは平積みの状態で梱包され、四角い胴体の内部にエンジンと航法装置を搭載し、一定程度の爆薬を搭載可能、面倒なフラップなどの制御は輪ゴムを用いるというもの。なおロシア軍は模型飛行機用発泡スチロール製自爆用無人機を開発しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)