北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】イギリス海軍空母プリンスオブウェールズとポセイドンMRA1哨戒機

2023-10-24 20:01:11 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回はイギリスの最新鋭空母プリンスオブウェールズについて。

 イギリス海軍の空母プリンスオブウェールズは空母航空団能力拡張へアメリカに向け出港しました。9月5日、ポーツマス軍港を出港した空母プリンスオブウェールズはアメリカでの各種評価試験を行い、クリスマスの少し前にイギリスへ帰国する計画です。この空母プリンスオブウェールズはクイーンエリザベス級航空母艦の2番艦となっています。

 プリンスオブウェールズがアメリカで行う試験は、現在すでに有しているF-35B戦闘機の運用能力拡張と、無人航空機による物資輸送評価試験、そしてアメリカ海兵隊が運用するMV-22オスプレイ可動翼機のイギリス空母艦上での運用能力を確認する事であり、2025年にもプリンスオブウェールズは世界規模の空母打撃群としての能力を獲得するという。

 F-35B戦闘機の運用能力拡張は、現在では一定以上の海象では飛行甲板上での発着が制限される事となりますが、システム改良によりこの制約を大幅に払拭すること、そしてより多くの装備を搭載し発着能力を確保するもの。無人機の運用は、現在限られた艦載機を輸送支援に当てていますが、無人化することで艦載機を本来任務に専従させることを狙う。

 イギリス海軍は空母プリンスオブウェールズ艦上へ無人航空機発着させる史上初の実験に成功しました。これは悪天候など有人航空機が運用できない状況においても消耗品などを緊急輸送する無人航空機システム開発の一環として進められていたもの。クワッドドローンや小型無人機以外の比較的大型の無人機による空母への発着は世界でも稀有だ。

 プリンスオブウェールズ艦上へ発着した無人機は、イギリスのサウザンプトンに本社を置くWオートノーマスシステムズ社が開発した双発無人機で、100㎏の装備品を1000㎞以遠へ輸送する能力を持ちます。特筆すべきは短距離離着陸能力で、離着陸には150mの滑走路で十分といい、この長さはクイーンエリザベス級空母飛行甲板長の半分にあたります。

 無人機の試験はプレダナック補助飛行場を離陸し20分間の飛行を経て空母プリンスオブウェールズ艦上に着艦したという。これまで、イギリス海軍では空母への消耗品などの輸送にはワイルドキャット哨戒ヘリコプターを運用してきたため、無人機の導入によりイギリス海軍はワイルドキャットを対潜任務など本来の任務に専念させられるとのこと。

 イギリス海軍クイーンエリザベス級航空母艦用の早期警戒ヘリコプターが艦上運用を開始しました。イギリス海軍は1982年のフォークランド戦争において軽空母であっても艦載早期警戒機を有さない事は防空に致命的な脆弱性をもたらすとして、シーキング対潜ヘリコプターを原型としたシーキングAEW早期警戒ヘリコプターを開発しました。

 マーリンAEW早期警戒ヘリコプターとして現在はEH-101,現在はAW-101マーリンヘリコプターと呼ばれている三発の大型ヘリコプターへレーダーシステムを搭載し早期警戒機として運用していますが、常に艦上配備されているわけではなく、第802ヘリコプター飛行隊より、空母の2023年秋の長期任務に向けて艦上配備を再開した、というもの。

 クイーンエリザベスでのマーリンAEW早期警戒ヘリコプターの勘定配備は2021年に行われた日本への長期航海が初の任務であり、今回は二回目となります。早期警戒機としての任務のほか、AEWシステムはモジュール方式で取り外しが可能であるため、必要に応じて対潜ヘリコプターや救難ヘリコプター、輸送ヘリコプターとして任務対応が可能です。

 イギリス空軍はポセイドンMRA1哨戒機の持続可能性強化を前進させます。ニムロット対潜哨戒機の改良型開発遅延を延々と繰り返していたイギリス空軍固定翼哨戒機部隊はようやく航空機皆無状態からアメリカ製P-8Aポセイドン哨戒機を導入することで自前の洋上航空哨戒部隊を再整備することとなりましたが、気候変動対策を突き付けられる。

 ポセイドンMRA1哨戒機の運用能力について、今後イギリス空軍はロッシーマス基地へ1億ポンドを投じて定期整備施設や維持補給施設を整備する方針であり、また稼働率の維持強化とともに持続可能航空燃料として注目される温室効果ガスゼロ目標に合致させるためのSAF代替燃料施設を合わせてロッシーマス基地へ整備する方針です。

 イギリス空軍が運用するポセイドンMRA1哨戒機は9機、そしてこれらの機体はボーイング737型旅客機を原型機としており、ボーイング737において運用可能であるSAF代替燃料を搭載可能です。これらのSAF運用開始発表はイギリス北部エディンバラにおいて行われるロイヤルエディンバラエアタトゥ航空祭の発表に合わせて執り行われました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ATACMS陸軍戦術ミサイルの供与規模とアヴディフカ地域ロシア軍攻撃,クリミア大橋の復旧

2023-10-24 07:00:38 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 イスラエルへアメリカがウクライナ向け155mm砲弾供給を転用した穴埋めにATACMS供与が決断されたのではと思う。

 ATACMS陸軍戦術ミサイルの供与は12発から20発程度である、ISWアメリカ戦争研究所が10月18日に公表した分析として、“西側情報筋”と“政府高官”の情報を紹介しています。ただ、ATACMSの供与数について確かなことが示された訳ではない。ただ、多数の航空機が破壊された17日南部ベルジャンスクの飛行場攻撃には9発程度用いられた。

 ATACMS陸軍戦術ミサイルは射程300㎞、クラスター弾型についてはミサイル本体の大きさから制圧面積が大きく、冷戦時代に段列地域や車両集積所への攻撃等が念頭に開発されたものです。アメリカは戦線拡大を恐れ供与を見送ってきた背景がありますが、同時にHIMARSから発射でき射程165㎞、台湾有事に備え温存する必要性もありました。
■アヴディフカ地域での攻撃
 攻撃というよりも迂回か包囲機動にもみえる。

 ロシア軍はアヴディフカ地域での攻撃を強化している、ISWアメリカ戦争研究所が10月18日に公表した戦況報告によれば高速道路E50沿道に構築されたウクライナ軍陣地を繰り返し攻撃しているとのこと。アヴディフカ地域は2017年のドンバス戦争においても激戦となっており、ロシアウクライナ戦争開戦直後の2022年2月21日以降戦闘が続く。

 アヴディフカは開戦前の人口が3万7000名、ドネツク州州都まで鉄道および道路で結ばれ距離にして13㎞の要衝となっています。ソボルナ通りと市郊外のツァールスカオホタにロシア軍が進出、またアヴディフカを包囲しつつ更にドネツク方面へ3㎞西進しマリンカとノボミハイフカの周辺でウクライナ軍との間で20回以上の戦闘となっているもよう。
■クリミア大橋が復旧
 一応復旧したとのことですが。

 ロシア側の発表としてクリミア大橋が復旧した、イギリス国防省10月19日付ウクライナ戦況報告がロシアのマラトフスヌリン副首相の10月14日付発表を分析しています。ロシア側の発表によれば7月に受けたクリミア大橋の復旧までは時間を要するものと思われていたが10月14日に復旧を発表できる状況になったという。ただ、留意事項が。

 クリミア大橋はトラックや燃料輸送が未だ制限されておりフェリーによる輸送となっています。これは復旧したものの重車両の通行が制限される状況が続いていることを示し、またロシア軍はクリミア大橋への依存度が高く、繰り返しウクライナ軍から無人艦艇や巡航ミサイルによる攻撃を受ける橋梁の防衛に多数の部隊を張り付ける事を強いられています。

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