■防衛フォーラム
今回は各国の最新装甲戦闘車や装甲戦闘車をもととした派生車両の最新情報を纏めてみました。
イギリス陸軍は六月より異常振動問題でとん挫していたエイジャックス装甲偵察車の訓練を再開します。エイジャックスはASCOD装甲戦闘車のイギリス軍仕様で大幅に装甲防御を強化し40mmCTA機関砲など強力な火力を付与したもので、イギリス軍は偵察装甲車として589両を導入する計画で、現在は第一次生産分の44両が納入されている段階です。
エイジャックスは乗車歩兵数を減らし装甲とエンジンを強化し過酷な偵察戦闘に対応させる設計であるが、エンジンと駆動系の再設計に問題が有り、強烈な振動と騒音が常に乗員と偵察兵を疲弊させ、評価書には健康を害し発狂する等の厳しい指摘が為されていて、騒音相殺ヘッドフォンの採用や防振材の追加などが行われるも計画は5年以上遅れている。
イギリス国防省は2020年12月にメーカーであるジェネラルダイナミクス社に問題が是正されるまでのプログラム停止を通告し、4億8000万ポンドの頭金も保留してきましたが、是正改修などが漸く評価できる水準となり、評価試験を行うホービントン駐屯地で訓練再開に至ったかたち。イギリス陸軍は2025年の初度作戦能力獲得を目指しています。
■レッドバック装甲戦闘車
日本の89式装甲戦闘車も共通装軌車輛により代替が始りますが韓国のK-21が輸出により性能を高めている点を俯瞰して1980年代と2020年代では装甲戦闘車の要求が異なる点に留意すべきでしょうね。
オーストラリア陸軍はLAND400PHASE3次期装甲戦闘車に韓国製レッドバックを選定しました。レッドバックは韓国のハンファディフェンス社製、オーストラリア軍は長距離ミサイル導入など陸軍装備体系の変革を進めており、その装甲戦闘車導入計画は大幅に下方修正されていますが、それでも129両というまとまった数を導入します。
レッドバック装甲戦闘車は韓国陸軍がKIFV装甲車の後継として2003年に開発したK-21装甲戦闘車のオーストラリア仕様で、原型のK-21はアルミニウム合金製車体にセラミック製追加装甲を装着し重量は26t、強力な40mm機関砲と750hpのディーゼルエンジンを搭載、機関砲弾はAP弾使用の場合T-62戦車の正面を貫徹する威力を有している。
K-21の豪州仕様であるレッドバックは主砲をブッシュマスター30mm機関砲としスパイク対戦車ミサイルなどを搭載します。当初計画では450両の調達が見込まれていましたが下方修正され、129両を最大70億オーストラリアドルで取得する計画、また量産車両の納入については前倒しなどが見込まれ、数は下方修正されるものの戦力化を急ぎます。
■ウラン装甲戦闘車
ASCODはエンジンやトランスミッションの汎用性の高さが指摘されていたのですがエイジャックスくらいしか装甲戦闘車としては海外に採用事例がないのが不思議ですね。
オーストリア国防省はウラン装甲戦闘車近代化改修に関する5億6100万ユーロの予算を正式決定しました。近代化改修は耐用年数の延長と戦闘能力の強化を期しており、新しく砲塔左側にHZE主照準装置が追加されることとなります、これにより現在の照準器とともに索敵に用いる広角用と長距離照準用を分けて運用することが可能となります。
ウラン装甲戦闘車の改良は更に操縦装置がデジタルパネル化し従来の計器類よりも車体状況の把握が容易となるととともに、潜望鏡が改良型となりバックモニターやサイドモニターを搭載し夜間を含め周辺状況の把握が容易となります。また前照灯もハロゲン電球からLEDへ換装され、これにより夜間や行進時の点灯で改良型か在来型か一見してわかる。
ASCOD装甲戦闘車としてスペインとオーストリアが共同開発した本車は、オーストリア所要分をシュタイヤーダイムラープフ社が生産を担当しています、ただ、同社がジェネラルダイナミクスランドシステムズ社系列となったため、近代化改修はジェネラルダイナミクスヨーロピアンランドシステムスシュタイヤー社が担当することとなりました。
■AMPV多目的装甲車
日本円で10億円を超える汎用装甲車というのが時代を物語るというべきかアメリカの経済力を物語るというべきでしょうか、しかし将来発展性が高ければ半世紀使える訳ですから安上がりという計算なのでしょうか。
アメリカ国防総省は8月5日にAMPV多目的装甲車両の量産開始を承認しました。AMPV多目的装甲車両とは、1950年代後半からアメリカ陸軍に大量配備され老朽化が進んでいたM-113装甲車の後継車両です。高い汎用性と安価な性能でアメリカ陸軍を支えたM-113装甲車は1960年代には卓越した能力を発揮していましたが今は2020年代です。
AMPV多目的装甲車両は、2014年にその計画が開始され幾つかの候補車両を検討した結果、BAEシステムズ社が提案した無砲塔型ブラッドレイ装甲戦闘車を原型としたものが採用されています。M-113は携帯対戦車ミサイル普及以前の車両でありアルミ製車体などはこうした脅威に脆弱であり、かつ個人携行装備の増大は車内容積を不十分なものとした。
M-1283汎用装甲車やM-1284装甲救急車とM-1285野外衛生車両にM-1286指揮通信車そしてM-1287自走迫撃砲などが派生型として開発されています。その先行量産者は2016年に完成し、フォートスチュワートの第3歩兵師団第1機甲旅団戦闘団により評価試験が行われていたところで、その評価結果を待っていよいよ量産が開始された形です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回は各国の最新装甲戦闘車や装甲戦闘車をもととした派生車両の最新情報を纏めてみました。
イギリス陸軍は六月より異常振動問題でとん挫していたエイジャックス装甲偵察車の訓練を再開します。エイジャックスはASCOD装甲戦闘車のイギリス軍仕様で大幅に装甲防御を強化し40mmCTA機関砲など強力な火力を付与したもので、イギリス軍は偵察装甲車として589両を導入する計画で、現在は第一次生産分の44両が納入されている段階です。
エイジャックスは乗車歩兵数を減らし装甲とエンジンを強化し過酷な偵察戦闘に対応させる設計であるが、エンジンと駆動系の再設計に問題が有り、強烈な振動と騒音が常に乗員と偵察兵を疲弊させ、評価書には健康を害し発狂する等の厳しい指摘が為されていて、騒音相殺ヘッドフォンの採用や防振材の追加などが行われるも計画は5年以上遅れている。
イギリス国防省は2020年12月にメーカーであるジェネラルダイナミクス社に問題が是正されるまでのプログラム停止を通告し、4億8000万ポンドの頭金も保留してきましたが、是正改修などが漸く評価できる水準となり、評価試験を行うホービントン駐屯地で訓練再開に至ったかたち。イギリス陸軍は2025年の初度作戦能力獲得を目指しています。
■レッドバック装甲戦闘車
日本の89式装甲戦闘車も共通装軌車輛により代替が始りますが韓国のK-21が輸出により性能を高めている点を俯瞰して1980年代と2020年代では装甲戦闘車の要求が異なる点に留意すべきでしょうね。
オーストラリア陸軍はLAND400PHASE3次期装甲戦闘車に韓国製レッドバックを選定しました。レッドバックは韓国のハンファディフェンス社製、オーストラリア軍は長距離ミサイル導入など陸軍装備体系の変革を進めており、その装甲戦闘車導入計画は大幅に下方修正されていますが、それでも129両というまとまった数を導入します。
レッドバック装甲戦闘車は韓国陸軍がKIFV装甲車の後継として2003年に開発したK-21装甲戦闘車のオーストラリア仕様で、原型のK-21はアルミニウム合金製車体にセラミック製追加装甲を装着し重量は26t、強力な40mm機関砲と750hpのディーゼルエンジンを搭載、機関砲弾はAP弾使用の場合T-62戦車の正面を貫徹する威力を有している。
K-21の豪州仕様であるレッドバックは主砲をブッシュマスター30mm機関砲としスパイク対戦車ミサイルなどを搭載します。当初計画では450両の調達が見込まれていましたが下方修正され、129両を最大70億オーストラリアドルで取得する計画、また量産車両の納入については前倒しなどが見込まれ、数は下方修正されるものの戦力化を急ぎます。
■ウラン装甲戦闘車
ASCODはエンジンやトランスミッションの汎用性の高さが指摘されていたのですがエイジャックスくらいしか装甲戦闘車としては海外に採用事例がないのが不思議ですね。
オーストリア国防省はウラン装甲戦闘車近代化改修に関する5億6100万ユーロの予算を正式決定しました。近代化改修は耐用年数の延長と戦闘能力の強化を期しており、新しく砲塔左側にHZE主照準装置が追加されることとなります、これにより現在の照準器とともに索敵に用いる広角用と長距離照準用を分けて運用することが可能となります。
ウラン装甲戦闘車の改良は更に操縦装置がデジタルパネル化し従来の計器類よりも車体状況の把握が容易となるととともに、潜望鏡が改良型となりバックモニターやサイドモニターを搭載し夜間を含め周辺状況の把握が容易となります。また前照灯もハロゲン電球からLEDへ換装され、これにより夜間や行進時の点灯で改良型か在来型か一見してわかる。
ASCOD装甲戦闘車としてスペインとオーストリアが共同開発した本車は、オーストリア所要分をシュタイヤーダイムラープフ社が生産を担当しています、ただ、同社がジェネラルダイナミクスランドシステムズ社系列となったため、近代化改修はジェネラルダイナミクスヨーロピアンランドシステムスシュタイヤー社が担当することとなりました。
■AMPV多目的装甲車
日本円で10億円を超える汎用装甲車というのが時代を物語るというべきかアメリカの経済力を物語るというべきでしょうか、しかし将来発展性が高ければ半世紀使える訳ですから安上がりという計算なのでしょうか。
アメリカ国防総省は8月5日にAMPV多目的装甲車両の量産開始を承認しました。AMPV多目的装甲車両とは、1950年代後半からアメリカ陸軍に大量配備され老朽化が進んでいたM-113装甲車の後継車両です。高い汎用性と安価な性能でアメリカ陸軍を支えたM-113装甲車は1960年代には卓越した能力を発揮していましたが今は2020年代です。
AMPV多目的装甲車両は、2014年にその計画が開始され幾つかの候補車両を検討した結果、BAEシステムズ社が提案した無砲塔型ブラッドレイ装甲戦闘車を原型としたものが採用されています。M-113は携帯対戦車ミサイル普及以前の車両でありアルミ製車体などはこうした脅威に脆弱であり、かつ個人携行装備の増大は車内容積を不十分なものとした。
M-1283汎用装甲車やM-1284装甲救急車とM-1285野外衛生車両にM-1286指揮通信車そしてM-1287自走迫撃砲などが派生型として開発されています。その先行量産者は2016年に完成し、フォートスチュワートの第3歩兵師団第1機甲旅団戦闘団により評価試験が行われていたところで、その評価結果を待っていよいよ量産が開始された形です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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