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【防衛情報】ドイツフランス次期戦闘機計画FCASとMGCS戦車共同開発ベルリン会談とF-35戦闘機最新情報

2023-10-10 20:21:41 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は空軍関連の最新情報です。ヨーロッパではF-35を導入するドイツとラファールで次世代機まで繋ぎとするフランスで戦闘機共同開発計画が進んでいるのですが、さて。

 ドイツとフランスの次期戦闘機計画FCASとMGCS戦車共同開発が7月10日に開かれたボリスピストリウス独国防相とセバスティアンレコルヌ仏国防相によるベルリン会談の議題となりました。FCAS戦闘機計画とMGCS戦車共同開発は計画が発表されて以来、十か月近くにわたり音沙汰なしという状況で、その進捗状況が注視されていたところ。

 FCAS戦闘機は、ドイツ空軍がメルケル政権時代に第五世代戦闘機を避けF/A-18E戦闘攻撃機を採用し次世代戦闘機のFCAS計画を加速させる構想でしたが、結局ドイツはF-35戦闘機導入計画へ軌道修正しており、ステルス戦闘機の採用によりFCAS計画への参加度が注目されていましたが、開発国にスペインを加えて、計画継続で一致しました。

 MGCS戦車計画については、ドイツ側が独仏で車体と砲塔を別々に開発し、競合開発の形をとり、場合によっては双方が別々の戦車を採用するという、過去のMBT-70計画などの失敗を反映し開発費の節約よりも共同開発リスクを最小限とする提案が為され、9月22日に両国陸軍参謀長の会合を行い、開発についての細部を詰める合意が為されました。
■ファルコエクスプローラー
 既存技術の延長線上で開発しているという事でやはり積み重ねは重要なのだ。

 イタリアのレオナルド社は無人攻撃機ファルコエクスプローラーを発表しました。これは六月に行われたパリ国際航空ショー2023において展示されたもので、現在生産されているファルコ無人偵察機を基にミサイル運用能力を付与したとのこと。ファルコ無人偵察機は既に60機が生産されていて、イタリア軍のほか輸出先でも運用されています。

 ファルコエクスプローラーに搭載されるのは四発のブライムストーンミサイルで、MBDA社がヘルファイアミサイルの筐体部分をもとにミリ波レーダーを搭載、射程を20㎞まで延伸しています。また改良型のブライムストーンⅡは射程が60㎞に上る。レオナルド社によれば今後試作を進め、2025年までには各国へ提供できる体制を目指すもよう。
■F-35I戦闘機
 イスラエルはF-35Aではなく独自の電子装備を備えたF-35Iとしている。

 イスラエル航空宇宙軍はF-35I戦闘機第3飛行隊を新編する方針です。F-35Iアディール戦闘機をイスラエル空軍は増強する方針ですが、現在36機が配備されています。この36機は2個飛行隊に配備されていますが、続いてイスラエル空軍は更に25機のF-35Iを追加発注する見通しで、これらが新編の第3飛行隊へ配備されるのでしょう。

 F-35I戦闘機は電子戦システムなどをイスラエル独自仕様としており、また世界で初めてF-35を実戦投入したのもイスラエルとなっています。そのイスラエルではF-15戦闘機の老朽化が始まっており、一部はストライクイーグルへ置き換えていますが、今回の増強により、アディールを初期型のイーグル後継に充てる計画なのかもしれません。
■KC-46の自衛能力強化
 ほとんど特攻のような用途となってしまった空中給油機を生存させる方法は条件が同じ航空自衛隊にも重要な課題だ。

 アメリカ空軍はKC-46空中給油輸送機の自衛能力強化を模索しています。KC-46の自衛能力強化は六月に行われたパリ国際航空ショー2023にてその方針が発表されました。この背景には、中国軍の巨大な航空戦力との戦闘を念頭に無防備である空中給油機が、中国空軍の射程400㎞規模の長射程空対空ミサイルにより狙われることを懸念する。

KC-46空中給油輸送機の自衛能力強化は主要部分に装甲装着による空対空ミサイルからの生存性確保やミサイル妨害装置の改良などが含まれています。ただ、これも決定的な対策となるかは未知数で、KC-46に代えてロッキードマーティン社はLMXT戦略給油機構想を発表、KC-46には機体不具合も続いており、今後の去就が注目されています。
■SPP機体自衛装置
 ロシアはイギリスの情報収集機にも空対空ミサイルを発射し黒海上空から第三次世界大戦のっきがあったのですが、ミサイルは外れイギリスがタイフーンを護衛に就けたことで緊張を抑え込んだ。

 アメリカのジェネラルアトミクス社はMQ-9無人偵察機用SPP機体自衛装置を発表しました。MQ-9リーパー無人機については近年、黒海上空やシリア上空でのロシア軍戦闘機による妨害行動により墜落や任務支障などが相次いでいますが、これは同時に有事の際、無人航空機は生存性を確保できるのかという、システムの脆弱性が指摘されている。

 SPP機体自衛装置とはセルフプロテクションポッドの略称、IRフレアーやチャフなどを搭載し赤外線誘導ミサイルやレーダー誘導ミサイルに対する攻撃から無人機を自衛する装置です。ポッドの名の通り大きさは全長2.08mで幅は0.58mとなっており、重量は175.1kgといい、無人機には決して軽量ではありませんが搭載できないものではありません。

 MQ-9リーパー無人機に搭載する場合は機体下部の胴体に装着、システムは具体的には、テルマAN/ALQ-213 電子戦システム、レオナルド社製DRS-AN/AAQ-45 分散型赤外線対策 システムDAIRCMやレイセオン社製AN/ALR-69A(V)レーダー警報装置など一体化させ、IRフレアーを放出しつつ目標の位置情報や種別情報を最後まで収集可能です。
■E-7A早期警戒機塗装
 家族経営の企業に任せるとは考えてみればすごい。

 オーストラリア空軍はE-7A早期警戒機塗装に関してFCAフライングカラーズアビエーションと三年間の契約を結びました。特筆すべきはこのFCAフライングカラーズアビエーション社は家族経営の企業であり、カンタス航空とヴァージン航空の再塗装を22年間担いボーイング737型機の塗装では実績とともに丁寧な仕事で知られているとのこと。

 FCAフライングカラーズアビエーションはE-7A早期警戒機の再塗装を行うとともにP-8A哨戒機の塗装も担当することとなっており塗装は定期整備の一環として実施されるものであり72か月ごとに実施する工程です。オーストラリア空軍では、E-7A早期警戒機とP-8A哨戒機はエディンバラ空軍基地とアンバリー空軍基地に配備されています。
■MS-110空中偵察システム
 F-35のような先端戦闘機の画像情報は災害時に自治体と共有できないという問題があるのです。

 アメリカのコリンズエアロスペース社はF-16戦闘機用MS-110空中偵察システムの適合試験を完了しました。コリンズエアロスペース社によれば今回の開発には、2022年に国名非開示の海外顧客より16個のセンサー導入に関する要望があり、F-16戦闘機への適合試験も戦術偵察機を必要とする顧客の要望により進められているとのこと。

 MS-110空中偵察システムは様々なスペクトルの光学情報を合成して気象条件や昼夜問わず画像情報を鮮明に合成する技術であり、コリンズエアロスペース社はもともとビジネスジェット機での開発を実施していました。その原型はU-2戦略偵察機に現在搭載されているセンサーであり、戦闘機やビジネスジェットは勿論、無人機にも搭載可能です。
■C-130J輸送機20機を98億
 機体そのものを考えるとC-130は昔は安価と云われていましたが邦貨換算とするとすごい。

 オーストラリア空軍はC-130J輸送機20機を98億オーストラリアドルにて取得します。この20機の輸送機は現在オーストラリア空軍が運用する旧式化した12機のC-130輸送機後継に置き換えることとなり、同時に現地整備や地上支援施設などでオーストラリア国内防衛産業にも恩恵があると、メーカーであるロッキードマーティン社は強調する。

 C-130J輸送機はオーストラリア空軍のC-130輸送機部隊が展開するニューサウスウェールズ州リッチモンド空軍基地の第37飛行隊にそのまま配備されるということで文字通り機種の置き換えとなる。オーストラリア軍ではHIMARS高機動ロケットシステム導入などが計画されており、C-130Jはこれらの緊急展開手段としても期待されています。
■T-6練習機全機が荒天被害
 ハリケーンで破壊されたF-22の話を思い出しますが東日本大震災のF-2Bの話と比べれば悪天候はある程度予報がされているだけに退避できなかったのか、と思う。

 アメリカ空軍はオクラホマ州でのT-6練習機全機が荒天被害を受けたと発表しました。これは7月21日にオクラホマ州のヴァンス空軍基地を直撃した激しい雷雨により格納庫などが破壊され、エンジンや主翼とコックピットなどが破壊されたとのこと。少なくとも12機が大破し、地元当局は99機全ての構造調査が必要だと指摘しています。

 ヴァンス空軍基地には第71教育航空団が展開しており、T-38高等練習機とT-1ジェイホーク基本操縦練習機とともにアメリカ空軍の主力練習機と位置付けられるT-6テキサンⅡ練習機が配備されています。飛行訓練は23日には再開されていますが、空軍は今年1500名の操縦士を養成する計画であり、教育課程はすくなくとも二週間遅れるという。
■F-16戦闘機近代化
 F-35の導入が絶望視されているだけにF-16の改良は重要度が前に増しているという。

 トルコ空軍はアセルサン社との間でF-16戦闘機近代化改修契約を結びました。トルコ空軍は旧式化した40機のF-16block30戦闘機の近代化改修を希望しており、TAIトルコ航空宇宙社との間で調整を進めていました、ここで新たに7月13日、トルコの電子関連防衛企業アセルサン社が加わり、戦闘機近代化改修計画が具現化したかたちです。

 F-16block30戦闘機の近代化改修について、戦術情報処理装置の更新と新しくレーダーをAESA方式へ変更、コックピットのグラスコックピット化や敵味方識別装置の更新などが含まれています。トルコ空軍は今回の40機に加えて、更に150機のF-16も改良する方針であり、世界有数のF-16運用国であるトルコは陳腐化と真剣に向き合っています。
■F-15EX戦闘機2機追加
 自衛隊のF-15も思い切って改修よりも100機程度F-15EXをライセンス生産してはと思うのです。

 アメリカ空軍はF-15EX戦闘機2機追加へ2024年度国防権限法を改正することとなりました。アメリカ空軍はA-10攻撃機退役を加速させていますが、現在のところこのA-10攻撃機の後継機が決まらないまま廃止される飛行隊が出ています。今回これらの部隊へ暫定的にF-15EXストライクイーグル戦闘爆撃機が配備されることとなりました。

 F-15EXが配備されるのはミシガン州空軍州兵の第127航空団、セルフリッジ基地に展開しています。これを強く主張したのはミシガン州選出のジョンジェームス下院議員でA-10攻撃機の廃止がそのまま事実上の航空団廃止に繋がることは看過できないという立場で、これにより空軍は2024会計年度に32機のF-15EXを取得することとなります。
■カナダ軍A-330-MRTT
 オーストラリア空軍が度々日本へ共同訓練にて派遣している機種とおなじものですね。

 カナダ空軍はA-330-MRTT多目的給油輸送機4機の調達契約を結びました。現在カナダ空軍が運用する空中給油機はエアバスA-310を原型としたCC-150ポラリス、その運用期間は30年間に及んでおり、カナダ空軍は当初中古のA-310をもととした空中給油機5機の導入を検討していましたが現実的な中古機がなく、改めて再選定されたかたち。

 A-330-MRTT多目的給油輸送機はエアバス社製、2022年7月に中古にて入手した2機のエアバスAZ-330-200型旅客機を転用する見通しで、不足分については新造機を導入する方針です。カナダ空軍ではCC-330ハスキー空中給油機という名称になることも決定し、計画ではフライトシミュレータ等を含み30億カナダドルの契約になる見通しという。

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ウクライナ情勢-ロシア国内石油製品供給混乱とロシア軍東部戦線北部クピャンスク地域の場当たり的攻勢

2023-10-10 07:00:02 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 装甲防御について車内が狭い分比較的頑強な退役した74式戦車も高機動車の様に供給してみたら役立つのかなあと思う今日この頃です。

 9月25日付のイギリス国防省ウクライナ戦況報告によれば、ロシア軍は20日前後、バフムト地区での南北で前進を続けるウクライナ軍に対して局地的な反撃を実施しました。ただ、ロシア軍の行動は局地的であり、ウクライナ軍は解放した奪還地域を喪失するには至っていません。一方でロシア国内において気になる情報が。

 イギリス国防省ウクライナ戦況報告9月24日付公表によれば、ロシア国内はこの数週間にわたり極端なガソリンと軽油不足にみまわれているとのこと。これは戦費獲得のためにロシア政府が石油価格高騰を背景に輸出を重視していること、そして製油所の定期整備、農業などにおける短期的な需要増加などに対応するためのモノと観られています。

 ロシア産石油は経済制裁の対象ですが、親ロシア諸国には輸入している事例も多い、しかしロシア政府は国内石油市場を安定化させるために9月21日に一時的ながらほぼすべてのガソリンと軽油の輸出を停止させており、このことはロシア産石油に依存していた諸国に対して重大な影響を及ぼす、とイギリス国防省は分析しています。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 ザポリージャ州が現在の戦闘正面ではロシア軍は有利な地形に兵力を集中させているものの連携がなぜか不調となっており浸透作戦の余地を与えています。

 ISWアメリカ戦争研究所の分析9月24日発表によれば、ロシア軍は東部戦線北部のクピャンスク地域において攻勢にでたものの前進には至らなかったとのこと、同じくウクライナ軍は東部戦線北部のビロホリフカにおいてロシア軍から攻撃を受けたものの撃退したとされます。この地域でのロシア軍攻勢は数週間ぶりのことであった。

 ザポリージャ州が現在の戦闘正面ですが、ザポリージャ州西部のオリヒフ地区ではロシア軍3個師団が展開しており、峡谷地形である緊要地形であることからウクライナ軍は三方向から攻撃を加えているとのこと。峡谷への接近経路となるヴェルボベではウクライナ装甲部隊が威力偵察を継続的に続けていますが抵抗もはげしい。

 ヴェルボベでの戦闘は、ロシア軍がかなり消耗を強いられており、これはISWの分析としてプーチン大統領はじめロシア首脳部がこうたいを許さないためとも考えられますが、峡谷という緊要地形は防御に適しているもののここを一端でも突破した場合、南部戦線において作戦上重要な転機となりうることもしめしています。

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