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【防衛情報】英国空母クイーンエリザベス,イギリス海軍旗艦を揚陸艦アルビオンから交代

2021-02-11 20:02:24 | 防衛・安全保障
■世界の防衛,最新論点
 世界初のF-35B,即ち第五世代戦闘機運用に特化した強力な航空母艦が作戦運用への第一歩を進みました。

 イギリス海軍第一海軍卿トニーラダキン提督は2021年1月30日付で新しいイギリス海軍旗艦を空母クイーンエリザベスとした旨を発表しました。30日、海軍旗艦旗と将旗はイギリス海軍旗艦アルビオンから静かに降ろされ、最新鋭空母クイーンエリザベスへと移されています。アルビオンはアルビオン級揚陸艦の一番艦、東京に入港した事で有名です。

 クイーンエリザベスはインヴィンシブル級空母の後継艦として建造されましたが、インヴィンシブル級空母の三倍という巨艦となるとともに建造計画に遅れが在り、一番艦竣工時にはインヴィンシブル級3隻全てが除籍、その後はコマンドー空母である揚陸艦オーシャンがイギリス海軍旗艦となっていましたが老朽化で除籍、ブラジルへ売却されています。

 イギリス海軍旗艦は伝統的な任務であり、第二次世界大戦後では永らくイギリスが最後に建造し第二次世界大戦に間に合わなかった戦艦ヴァンガードが充てられていた事でも知られますが、空母クイーンエリザベスは満載排水量6万5000tとイギリス海軍史上最大の艦艇でもあり、名実ともにイギリス海軍を象徴する旗艦として世界の海に臨む事となります。

 空母クイーンエリザベス、アジア地域回航へ。イギリス海軍は最新鋭の航空母艦を国際公序の維持と継続へ展開させるとともに、イギリス海軍旗艦の任務を揚陸艦アルビオンから空母クイーンエリザベスへ遷し、文字通りイギリス海軍の象徴的な艦艇となりました。2017年に竣工した本艦は2021年、艦載機F-35Bをふくめて作戦即応能力を獲得しました。

 アジア方面へ回航する。日本とイギリスは包括安全保障協力協定を締結しており、この准同盟国というべきイギリスの航空母艦がどの程度の能力を有しているか、という視点は大きな関心事でしょう。大きさでは、ニミッツ級原子力空母とアメリカ級強襲揚陸艦の真ん中程度の大きさ、いずも型護衛艦の二倍以上というかなり大型の艦艇となっています。

 イギリス海軍の航空母艦、その能力はいかほどのものなのでしょうか。クイーンエリザベスは基準排水量45000t、満載排水量67700tで全長284m、イギリス海軍史上最大の航空母艦です。外見上の最大の特色は二つが並ぶ艦橋構造物で、航海艦橋と航空艦橋、艦橋は従来一つで対応しているのですが、機能性を考慮した結果、二つに分けることとなりました。

 F-35戦闘機とAEW-101早期警戒ヘリコプター、AW-101哨戒ヘリコプター,クイーンエリザベス級航空母艦はこれら艦載機40機を搭載します。実のところもう少し多数を搭載できるのですが、飛行甲板に並べる機体を定数とするアメリカ海軍と異なり、イギリス海軍では格納庫容積を念頭とします。この点は海上自衛隊と同じですね。そして、F-35,です。

 第五世代戦闘機運用に特化した世界初の航空母艦、クイーンエリザベス級航空母艦がどの程度強力な艦艇か、と問われますと世界で初めて第五世代戦闘機運用を前提とした空母である点が全てを物語っているのかもしれません、第五世代戦闘機は概して定義するとステルス性能を有し、超音速巡航が可能、ネットワーク型戦闘に対応する、というもの。

 F-35Bをイギリスは136機導入予定です。実はクイーンエリザベス級空母は計画当初、ここまで大型化する計画ではなく、この大きさとなった時点でイギリスはより航続距離の大きなF-35Cへの機種転換を構想したのですが、既にF-35Bを発注していた点、F-35B用の設計をF-35C用に転換の費用の大きさから結局F-35Bとなった、そんな歴史がありました。

 AW-101-AEW早期警戒ヘリコプターはF-35Bの能力を最大限発揮するための必須の航空機です。早期警戒機の有無は過去、1982年のフォークランド紛争においてレーダーピケット艦を前進せざるを得ず、損耗を強いられたことがありました。こうした点でイギリスはヘリコプターを早期警戒機とするシーキングAEWを開発、その後継がAW-101-AEWです。

 対艦弾道弾や人工衛星画像情報のAI解析、航空母艦は過去のものとなった、という批判はあります。しかし人工衛星のAI解析は航行中の航空母艦を撮影したものが稀に示される一方、基地近くやAIS船舶位置情報表示中や訓練中の航行海域位置情報開示が行われている際の撮影画像が大半で、墜落旅客機残骸さえ発見できないのが現在の衛星画像の水準です。

 45型防空駆逐艦、イギリス海軍の現時点では対艦弾道弾を迎撃できるイージス艦を有していない点でしょうか。対艦弾道弾は目標命中の際に軌道修正を行う際に減速するため、弾道ミサイル防衛システムにたいし脆弱性があります、が、イギリスは日米のようなミサイル防衛の必要性が無く、現時点でその能力はありません、日米艦の援護は必須でしょう。

 クイーンエリザベス級航空母艦はこの通り、F-35運用に特化した極めて高度な航空母艦です。既にアメリカ海兵隊のF-35B展開試験も実施されている為、極東展開の際には岩国基地の第1海兵航空団所属機も展開する可能性があり心強い。2019年には2番艦プリンスオブウェールズが竣工、2023年には作戦即応能力を獲得するべく完熟訓練中となっています。

 プリンスオブウェールズ、クイーンエリザベス。イギリス海軍は二隻の航空母艦と共に一隻を即応体制に置く構想です。上記の通り世界初の第五世代戦闘機を運用する航空母艦であるとともに、アジア地域にはアメリカ海兵隊のF-35Bが既に運用中、ワスプ級強襲揚陸艦よりもF-35Bの運用には適しており、これは、極めて強力な空母であるといえますね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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