北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

99式自走榴弾砲後継装備には1000hp級エンジンが必要-自走砲は戦車に随伴すべきウクライナ戦訓

2023-03-02 07:00:10 | 先端軍事テクノロジー
■榛名防衛備防録
 ウクライナの戦訓として今回は一つ火砲の視座を。

 99式自走榴弾砲後継装備は現行の600hpエンジンではなく1000hpクラスのエンジンが必要だ。昨今の韓国製K-9自走榴弾砲の各国採用とともに、その評価が火力以上に機動力に注目されている現状を見ますと、99式自走榴弾砲の“自走榴弾砲は機甲部隊を後方から支援する”という考えそのものが既に古く、主力戦車とともに前進する機動力が求められて切る。

 19式装輪自走榴弾砲、問題はウクライナの第一線においてカエサル自走榴弾砲の活躍が伝えられるために、99式自走榴弾砲の後継はこうした装輪自走榴弾砲へ収れんすべきではないか、という素朴な疑問への回答が必要となります。しかし、カエサル自走榴弾砲がいま示している限界こそ、99式自走榴弾砲のような自走火砲の有用性を示しているのではないか。

 カエサル自走榴弾砲は2022年6月から10月にかけ、ロシア軍に対して絶大な威力が報じられていました、報じられていましたが、持続射撃能力が低く頻繁な陣地変換を行う際にも駆動系や駐鍬部分に破断など故障が生じることが運用を通じ判明しています。ただ陣地変換を行わねばならない、何故なら装甲がないために反撃を受ければ破壊されるためです。

 エクスカリバー誘導砲弾も射程40㎞というGPS誘導の精密砲弾により大きな威力を発揮していましたが、ロシア軍はこれら精密誘導砲弾を警戒し、段列地域、特に弾薬集積所を後方の射程圏外に置くことで対応しており、カエサル自走榴弾砲、そして同じく装輪式のHIMARS高機動ロケットシステムも射程外の目標を叩くことができていません。しかし。

 装甲を有する自走榴弾砲ならば、主力戦車とともに前線を突破し、射程が足りないならば目標の40㎞圏内まで攻撃前進すればよい、という。つまり、カエサル自走榴弾砲や19式装輪自走榴弾砲が耐えられない敵砲弾の曳火射撃制圧下でも、99式自走榴弾砲はある程度耐えられる、少なくとも装輪自走榴弾砲のようにむき出しの部分が弾片にやられる事はない。

 K-9自走榴弾砲は1000hpクラスのエンジンを搭載している背景、この種の高出力エンジンを搭載した自走榴弾砲はこのほかにはドイツのPzH-2000自走榴弾砲、これらの装備は伊達に主力戦車並みの機動力を持たされているのではなく、主力戦車とともに前線を突破し敵後方地域への火力戦闘を展開するために、主力戦車並みの機動力は随伴するためにある。

 99式自走榴弾砲の後継は少なくとも10式戦車、具体的には第3世代戦車以上の戦車に対して随伴し、敵の善戦を突破し、特に優れたデータリンクシステムにより敵の展開が薄弱な地域に進出し、射撃できる能力が必要となります。特にデータリンク能力と装甲を誇る第三世代戦車は、前線を突破し浸透するために高い防御力を付与されているのですから、ね。

 ウクライナ軍は射程の長い装備を求めています、実際必要だとは思うのですが、NATO加盟国の多くがそこまで射程の大きな装備を求めない背景には、空軍が機能する、こうした点もあるのかもしれませんが、そもそも機械化部隊の運用が前線の後方に砲兵を置く、という発想を脱却しているためです。日本もその潮流を留意した開発を行うべきでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【京都幕間旅情】鞍馬寺,今昔... | トップ | 沖縄国民保護図上訓練の課題... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

先端軍事テクノロジー」カテゴリの最新記事