◆LCS型将来護衛艦がAAV-7強襲車を強行輸送
海上自衛隊の強襲揚陸艦検討報道以来、こちらでも分析記事を掲載してまいりましたが、本日はさらに一歩前へ。
護衛艦を島嶼部防衛における奪還へ第一波の強行輸送に使用する事は出来ないか、ということ。余りに荒唐無稽で嘆息され、今後の閲覧を再検討する方も出てきそうな案ですが、海上自衛隊は新防衛大綱において、米海軍の沿海域戦闘艦LCSに範を採った小型の将来戦闘艦導入を検討しているとの報道があり、ここを更に前進できないか、ということ。
強襲揚陸艦の導入検討報道に際し、李雨情自衛隊は将来的にMV-22可動翼機を導入するため、洋上からの立体的な島嶼部防衛の展開が可能となりますが、併せて陸上自衛隊は佐世保に新編される水陸両用団へAAV-7水陸両用強襲車の導入を決定、こちらは洋上航続距離が4浬ほどしかなく、母艦が沿岸に近づかねばなりません。
LCS型の運用を念頭とした新護衛艦を導入するのであれば、そのLCS型護衛艦の多目的区画へAAV-7を搭載し、沿岸部まで展開出来ないか、という提案です。LCSは米海軍が将来海上戦闘は沿岸海域を主戦域とする想定に基づき、艦砲と機関砲に個艦防空ミサイル等、最小限の自衛装備のみ搭載し無人機と無人艇を搭載し高速力とステルス性を駆使し艦隊に先行、後部には広大な多目的空間を配置、情報収集と機雷掃討にあたるというもの。
米海軍ではインディペンデンス級とフリーダム級を建造し、研究を重ねています。高速力の追及で高出力動力が建造費が高騰し、肝心の無人艇システムは機雷掃海能力等で問題が山積、当方も米海軍は代案に、ひゅうが型を導入し無人機と航空部隊拠点としたほうがいいのではないか、と提案したほどの混迷ぶり。
しかし、AAV-7を沿岸近くまで輸送する任務を考えた場合、大型すぎる輸送艦よりはステルス性に優れたLCSが理想的な装備となります。LCSの後部に配置されている多目的空間は、陸軍のストライカー装輪装甲車であれば一個中隊を収容できるほどのもので、無論揚陸艦運用想定外ですので揚陸艇などに搭載し発進させることは不能ですが、艦尾に無人艇揚収用扉があり、AAV-7を運用できる頑丈なデリックさえ追加できれば、母艦となり得ます。
北大路機関では過去に、護衛艦定数の増勢が望めないとした旧防衛大綱時に、多用途支援艦を拡大改良し3インチ砲を搭載した、哨戒能力と軽輸送能力を持つ多目的支援艦の建造を提案したことがあります、しかし、護衛艦定数が増勢される新防衛大綱画定後は、この私案は不要となりました。
北大路機関ではさらに、護衛艦定数が増勢出来ないと考えられた旧防衛大綱時に、デンマーク海軍のアプサロン級多目的母艦に範を採った、輸送能力とフリゲイトとの能力を共に備えた母艦を地方隊の直轄艦として配備し、不足する輸送能力と水上戦闘艦勢力の問題へ挑む提案を行いましたが、護衛艦定数の増勢が確定した今日、そこまで逼迫度を持った提案では無くなりました。
沿海域戦闘艦、コスト面の問題を解決できるのか、という重要な視点がいかに解決されるのか、というところが非常に大きな関心事とはなっているのですけれども、実現するのであれば沿岸海域まで進出しなければ揚陸が不可能であるAAV-7をエアクッション揚陸艇LCACに先んじ、展開させる手段として使わない手はありません。
LCACにLCSであれば随伴し、艦砲で着上陸地域を制圧できます。護衛艦からの間接照準射撃も当然行われますが、直接照準による支援も必要ですので、協同する艦艇は必要です。現状ではミサイル艇くらいしかLCACに随伴可能な速力を発揮できないのですが、LCSならば、これは可能でしょう。
LCS,近く米海軍がアヴェンジャー級掃海艦の後継に佐世保へ前方展開させますので、実現すれば、その写真を此処でお伝えできれば、と思うのですが、現時点で色々と課題はあるものの、海上自衛隊が運用する島嶼部防衛任務に際しては、かなりその建造意図に適した環境となっているのかもしれません。
此処からは愚痴が入ります。EFV,AAV-7の後継として開発が進められ、100km以上の洋上航続距離を持ち、駆動系の収容により25ノットという快速で水上を展開し管制された30mm機関砲を運用し沿岸部を制圧しつつ17名の海兵を輸送する高性能が目指されたものの、開発費と製造費高騰により一両当たり2000万ドルという額に達し、イラク戦争戦費捻出へ開発中止となったEFVが開発されていたならば、多少高くとも水陸両用団に配備し、此処まで苦労してLCSで運ぶ必要が無かったのに、と。
続いて愚痴、米軍がOH-58観測ヘリコプターの後継として開発していたRAH-66偵察ヘリコプター、野心的すぎるステルス性の追求で単価が1億ドルに達し開発中止となってしまいましたが、RAH-66が当初計画通りの1500万ドル、とまではいかずともその3倍程度の低い取得費用で開発されていればなあ、と。
LCSには航空機運用能力が求められていますのでRAH-66を二機程度搭載し、島嶼部防衛に運用出来れば、LCSより海兵遠征群の複合舟艇中隊に範を採った水陸両用団の部隊を編成しておくことで舟艇を発進可能、夜間に占拠された島嶼に接近、空中打撃力と艦砲に舟艇中隊の強襲を駆使し、独力で奪還できます。
強襲揚陸艦の話題が出ている最中ではありますが、海上自衛隊が導入する将来艦艇がLCSに相当するものとなるとの報がありましたので、この任務には当然沿岸海域での戦闘に両用作戦も部分的に含まれると考え、このように護衛艦での輸送、という大時代的な提示を行ってみました次第です。
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個人的には、有りかと思います。
母艦の安全性は艦の高速性でなく、対空・対水上・対水中の索的・打撃力の向上によって制海権の信頼性を高めて、それで希求した方が良いように思えます。あとはAAV7の母艦となる安価な中小揚陸艦の新規建造ですかね。たぶん下手な多目的艦による装備統一よりも、素直に任務を分けて全体数を増やした方が結果的に安上がりで済みそうです。
ううむ、鼠輸送よりは“東京エキスプレス”とアメリカ風に呼びたいですね
ただ、中央即応集団が展開する場合は“中央特快”、水陸両用団が展開する場合は“マリンライナー”、西部方面隊隷下部隊が展開する場合“シーサイドライナー”、等としてしまうと、どの部隊が出るか丸わかりなので要注意です
専用艦の方が使い勝手は良いでしょうが、折角LCS型の護衛艦を構想するのですから、建造に際し、その能力を省くことの方が逆に非効率的なのでは、というのがこの記事の主題です
母艦の安全性ですが、仮に旧みうら型のような艦で展開する場合、航続距離往復目一杯の沖合2浬でAAV-7を展開させる場合、海空からの脅威ではなく島嶼奪還では敵陸上部隊の対戦車ミサイルと火砲が脅威となります
我が国の79式対舟艇対戦車誘導弾もそうした運用を想定していましたから、ね
?箭-9対戦車ミサイルの射程は5.5km、沿岸部に秘匿されると、如何に絶対航空優勢と制海権を確保しても、発見は至難です、すると、やはりLCS型の運用が可能な艦船から展開させた方が、と
もちろん、上陸前にヘリボーン部隊と水路進入部隊で海岸線付近の敵歩兵を全て掃討すれば、対戦車ミサイルの脅威は無くなりますが
デリック方式について、これは回収時に使います、展開はAAV-7の海外での運用例を見ましても、転覆しない速度でスロープでそのまま海に次々着水させる方式で問題はありません
回収は主として訓練時と有事の際の非常用です、注水ドックを水上戦闘艦へ設けるのは非現実的ですし、発進だけで回収を考えないでは伊勢型航空戦艦の彗星というような状況になり、余りに現実味が無い
安価な中小揚陸艦ですが、低速過ぎるため、接岸前の艦隊行動で強襲揚陸艦とその護衛艦との協同行動に問題が出てきませんでしょうか、どちらかというと、中小輸送艦は管理揚陸用装備、という印象があるのですが
確かに現代の強襲揚陸において行動距離や武装などAAV7が劣るのは否めません。
仮想敵である中国軍の05式水陸両用戦闘車は26トンの車体に1500馬力級のエンジンを載せ水上ではウォータージェット推進により最大で40kmのスピードが出せる上に武装は30mm機関砲(火力支援型は105mm砲を搭載)と対戦車ミサイルを装備するなどかなり強力な車両になっています。
特に火力支援型の105mm砲はAPFDSを発射可能で74式戦車でも被弾すれば撃破される可能性があります。
私が思うにAAV7は味方艦艇の地上攻撃である程度沿岸部を制圧した上で強襲揚陸を行う前提で作られた車両だと思います。空母機動部隊など他国を圧倒できる戦闘艦艇を備えることができるアメリカらしい考え方ですね。逆に日本ですと艦艇や人員の制約が多いことに加え守るべき島嶼部一島あたりの面積もそれほど大きくありません。このような状況下では味方艦艇からの攻撃と同時進行で強襲揚陸を行い早期にその島を奪還することことが求められるかと思いますのである程度敵の攻撃に耐えらえてかつ敵に有効な攻撃をおこなえる戦闘車両が必要になってきます。これがEFVが日本で必要な理由ですね。
日米でEFV開発予算の捻出が難しければイタリアやスペインなどAAV7のユーザー国で共同開発するという手もありますが当のアメリカがF-35の件で懲りてますからね…。