◆南西諸島の警備体制を強化
南西諸島の南端、対岸111kmに台湾、排他的経済水域の中間線を挟んで中国を望む沖縄県与那国島に、警戒を強化するべく新しく陸上自衛隊の部隊を展開させる旨、政府が意思を表明した。
沖縄県の防衛警備を担当する第1混成団を間もなく第15旅団に改編する計画が進められているが、旅団化改編にともない、人員を300名程度増強するとともに、現在、その全部隊が沖縄本島に駐屯している体制から、島嶼部に数十人規模の部隊を駐屯、新しく監視の拠点を構築しよう、という目的が背景にあるとされる。
与那国島駐屯部隊は、沿岸監視を行う部隊を想定しているとのことで、対馬警備隊のように普通科部隊を隷下に有する編成ではなく、稚内などの陸自部隊のような沿岸監視隊という編成をとるようである。一方で、与那国島には与那国空港があり、有事の際には少数でも部隊が駐屯しているということは大きな抑止力となる。また、救難ヘリコプターの給油拠点や、航空機の緊急発着施設としても使用することが出来るだろう。
少数でも警備の人員を配置する必要性。たとえば、1982年のフォークランド紛争では、一個中隊規模の海兵隊がフォークランドに駐留しており、サウスジョージア島にも一個分隊の海兵隊を駐屯させていた。かなり少ない兵力ではあったものの、侵攻したアルゼンチン軍は、フォークランド島には旅団規模の、サウスジョージア島には大隊規模の部隊を上陸させる必要を強いた。
他方で、まったく国境警備の部隊が駐屯していなかった場合、例えば、フィリピンの南沙諸島ミスチーフ環礁では、こちらは無人の環礁で人口1800名の与那国島との単純比較は妥当ではないものの、中国軍が占領し施設を構築しているという情報を、外国商船から通報されるまで気づかない、という事例があった。部隊が駐屯しているのか、いないのか、という問題は、ここまで異なる外交的結果を招く端的な事例だ。
現在、沖縄本島に司令部を置く第1混成団は、二個普通科中隊、重迫撃砲中隊、施設中隊からなる第1混成群、ホーク地対空ミサイルを運用する第6高射特科群、第101飛行隊、第101後方支援隊、第101不発弾処理隊などから成る人員1800名、という編成を採っている。
沖縄という地理的関係上、九州に主力が展開する西部方面隊直轄部隊の支援がすぐには望めないことから、通信や航空の面では、比較的独立した運用が可能な編成となっており、例えば混成団という基幹部隊としては唯一ホーク地対空ミサイルを運用しており、四個高射中隊を隷下に編成している。
このほか、第101飛行隊には、離島に対する急患輸送などにも活躍している固定翼機LR-2、そしてCH-47JA輸送ヘリコプターやUH-60JA多用途ヘリコプターなどを運用しており、いわゆる空中機動旅団として知られる群馬県相馬原の第12旅団と並ぶ高い空中機動能力を有している。その一方で、特科火砲や戦車などの重装備は配備されていない編成を採っている。
来年度には、この第1混成団を、装備近代化と共に一個普通科連隊、高射特科群、偵察隊、施設中隊、通信隊、飛行隊、後方支援隊、不発弾処理隊、化学防護隊からなる第15旅団に改編する予定であるが、今回提示された与那国島への陸上自衛隊部隊配備も、この第1混成団の旅団改編と並んで実施されるのだろう。
なお、与那国島の隣、宮古島の漁民が1905年5月、水平線上に浮かぶ幾つもの黒煙を発見、当時、その位置の把握が日本の命運を破滅し植民地となるか、主権を維持し独立を保てるか左右するとされたロシア海軍のバルチック艦隊を発見した。宮古島には無電設備が無いため、漁師は早舟を仕立て不眠不休で漕ぎ、連合艦隊へ通報するべく、無電施設のある石垣島まで駆け付けた、という美談がある。幸か不幸か、情報は通報艦信濃丸の無電通信が先であったが、沖縄県は、国境の最前線にあるという事例を百年以上前から示す端的な事例と言える。
HARUNA
[本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる]
沖縄というと、自衛隊無用論をかます団体がうじゃうじゃいるところという認識なのですがどうなのでしょう?某航空自衛隊元幹部のブログでは、与那国あたりでは、自衛隊駐屯を望んでいるとの情報があるのですがはっきりしませんね。あんなに中国や台湾に近い沖縄で中国の忍び寄る脅威がわからないほど左斜め上の教育がすさまじいのでしょうかね。中京に占領されている現状のチベット族を沖縄の民はちゃんと見てますかね?
今自力での経済復興が日本には出来ない、頼りのアメリカも当てにならない、日本経済は中国頼みとなっていますが、中国輸出による景気回復を捨てる覚悟での配備するという事なんですかね。
いつも詳細な情報ありがとうございます。
いいですね!、東アジアには台湾以外にはろくな国しかなく、日本最西端の日本領土をしつかりと守る明確なメッセ-ジは重要ですね。
船舶監視のレ-ダ-小部隊ですね。
しかし最近の台湾も油断出来ず、近い将来は中国に併合されるのでしょうね、そうしたら正に対中国最前線基地になりそう。
なんか台湾の防空識別圏と被るとか、ややこしい場所ですね。
しかし麻生首相は色々防衛に関しては仕事しましたね。
かえすがえすも福田首相の無策!1年間が残念でした。
はるなさんの意見もわかります。
ただ、本当に中国との貿易がこのままの状態でいらおれる保障などどこにもないし、続くともおもえません。
10年もたてば中国がどう動くかわかりますが、その時に泣きをを見るのは私たちではなくその下の子どもたちです。
あと、忘れてはならないのですが、日本国民は1億2000万人もいて、他国と比べても本当の購買力で、アジアでも有数なものであることを忘れているのです。変なはなしですが、各企業が一社当たり1人を雇用し、貯蓄できないお金を1社当たり月1万円から2万円を支給する。との法律でも作ってみれば相当な内需になるともおもうのですが。現実味がない案だと笑われるかもしれませんが、この不況下ではその程度の突拍子もないことをしなければならないとかんがえるのです。本当の意味での日本の自力(地力)が試されているこのごろです。※このままでいくと10年後の中国の日本に対する行動はどうなるとお考えですか?台湾は?南西諸島は?フィリピン沖は?中国国土、領海になっているのでは?いかがでしょう。
沖縄ですが、自衛隊や米軍というよりも、軍事機構そのものへの不信があるようで、反戦活動を収入源にしている方以外は、自衛隊のほかに中国軍が来ても困る、という方が多いという印象です。
その原因は、・・・、沖縄戦でしょうね。第32軍、アメリカの戦史専門家からは高く評価されている部隊ですが、首里の防衛線から本島南部に撤退した際、多くの住民を巻き込んでしまいました。首里で最後まで陣地に立て籠もり、米軍へ出血強要、玉砕していれば、評価は変わったのだろうか、と、いわれていますね。
中国ですが、これから世界で名誉ある地位を求めて歩むには、変革は必然だと思います。仮に経済力で、アメリカを越えたとしても、アメリカが掲げる自由や機会均等という精神に取って代わるものを現段階では提示することはできないでしょうからね。
内需拡大策ですが、考えるに、貯蓄に向かわせない必然性こそが重要なのかな、と。貯蓄、日本経済論の観点から、日本の消費構造は王朝型、つまり、次世代に貯蓄した財産を継承させる、というかたちとなっていますが、次世代に財産を継承させるのは、次世代の子孫が苦労しないように、言いかえれば、財産が無ければ不安だろう、という背景があるわけです。
その点、医療サービス、学費、災害復興などの面で、例え貯蓄が無くとも高度な医療サービスを無償で受けることが出来る、大学の学費を、欧州並に引き下げる、大規模災害で住居を失おうとも国からある程度の救済は受けられる、というような構造も必要なのかな、と。
このためには、利権に左右されない政治家を育てること、つまり後世に良い治世を最大の財産として残すことが出来る道の模索なのでしょう。その第一歩は、知識の共有化と向上のための初等教育の充実化と考えます。教育力の充実や医療サービスの充実、これまでのように土建屋さんは儲かりませんが、道路工事と同じく、税金が社会に還元されるれっきとした公共事業なのですけどね。あと、防衛産業も公共事業に成り得るのですが。実際、フランスなどは造船所に仕事を与えるためにミストラル級強襲揚陸艦(去年東京に寄港した変わったデザインの艦)三番艦を発注したそうで・・・。
国力ですが、少なくとも軍事力では、中国は日本を追い越すことはできないでしょう。陸軍国が海軍力を海洋国家に対し優位に立たせることは、かなり難しい訳で、一方で、予算を充分につぎ込んで、艦艇を充実させても、指揮官を育てるのは簡単ではありません。人民解放軍の将官人事を見ますと、陸上の集団軍偏重ですので、そういう意味では、あまり危機感を煽り立てる必要も無いのでは、と。
政治力については、未知数ですが、政治上のパートナーとして、太平洋の向こう側のアメリカが、知財保護が不十分で閉鎖市場の中国と知財に依拠した経済力と、比較的開かれた日本、どちらをパートナーと選ぶかということに展望があるように思います。他方、中国で一党独裁制が終わり、民族間の自己実現に関わる蟠りが和解し、市場開放され、人民元が変動相場制に移行し、世界の国際公序実現のために積極的に行動する国家に変わることが出来れば、アメリカのパートナーは変わってくるかもしれません。しかし、そういう変革を遂げた後の中国は、恐らく日本の脅威にはならないようにも思います。戦前と戦後で、日米関係が大きく変わったようなことと同様になるでしょう。
蒼い 様
国境を無防備にして武力紛争をこちらから誘うような事は、予防外交の観点から落第です。
他方で、海上保安庁の予算を見直し、与那国島に1000トン型巡視船を2隻程度配属し、場合によってはSSTを増強して待機させる、という国境警備の方策もあるとは思うのですが。
あと、経済関係と軍事関係、これは別次元のものとして考えるべきなのかな、と。経済の向上は人々の生活への恩恵という目的のための手段ですから、軍事的衝突という、人々の生活への致命的問題に優先されるものとは言い切れません。また、経済的関係の結びつきが高かった20世紀初頭の欧州では、二回も世界大戦が起きましたし、日米間もある程度、経済の相互補完関係があったのですが、第二次大戦では敵対しました。
いてきをうて 様
北東アジア地域は、国際協調よりも自国民の偏った福祉の増進を目指す国が多い、とも思うのですが、なにか、国際協調のための国際機構が必要とも思います。
台湾や韓国、領土問題や経済摩擦、歴史問題があるのは確かですが、このくらいならばNATO加盟国間でも起きていることです。大同小異、安全保障関係という大きな問題の前では、乗り越えることが出来ると思いますよ。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090707/165608/?P=1#
アメリカ知日派の識者もこんな感じです。
日米同盟終りの始まりなんて意見もあるそうで。
アメリカはロシアとも中国とも関係を改善していますので日本としては難しいかじ取りをせまられているのかなと。
地域研究者は、何処の国でもブームに引っ掻き回されますからね。そこまで心配する必要はないかと。
視点を変えて考えてみてください、アメリカが中国にF-22を供与したり、ロシアにイージスシステムの売り込みを行うと思いますでしょうか?
むしろ、日米関係は成熟したからこそ、関係の増進を目指してきた訳でして、アメリカの世界観において、とりあえず協調してくれる日本と、如何にして協調に引き込むかという中ロ、その次元の違いが端的に出ているだけのようにも思います。
なるほど、私は不安症なのかもしれないですね。
それと与那国配備について中国メディアの反応が出ていました。
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=33168&type=1
中共の世論というのは、特に世論形成に大きな影響を与える媒体が政府の影響かにありますので、この点、重要かな、と。
特に、国内で問題が生じている時ですので、外に目を向けさせたい、という事もあるのではないでしょうか。
あとは、これまでの歴史などを振りかえれば日本批判の記事は発言は、一定の需要のある国ですので、そうした関係もあるのだろうと思います。