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令和二年-新年防衛論集:日本の防衛世界の平和【1】新しい八八艦隊に留まらぬ防衛力検証

2020-01-02 20:00:25 | 北大路機関特別企画
■謹賀新年-令和二年
 新しい年の始り、本日から新年防衛論集ということで一種毎年恒例的な深い話題を浮いた情景とともに考えてみましょう。

 令和二年を迎え自衛隊の将来防衛、戦術的な改編に留まらず戦略的な運用を含め論理を展開してゆきましょう。自衛隊は多次元統合防衛力整備へ今後十年単位での防衛力整備を進展させてゆきます。十年を経ない、前防衛大綱に基づく統合機動防衛力整備は果たして完結したのかとの疑問が残りますが、新しく多次元統合防衛力の整備へ着手したわけです。

 自衛隊の装備体系は、しかし冷静に見ますと幾つかの示唆を含むもの。ミサイル防衛へのイージスアショア配備やコンパクト護衛艦30FFMによる各種装備の任務領域を超えた運用とともにF-35B戦闘機の導入開始、全通飛行甲板型護衛艦へのF-35B配備や機動旅団と機動師団の改編など、自衛隊の運用体系は今後十年間で大きく変容する事となりましょう。

 部隊体系と装備体系、しかし上記の野心的な取り組みについては予算不足や災害派遣という強大な人員を要する任務の維持とともに思い切った再編が実現しない実状があるように思えます。陸海空の深層部分までの統合運用を進めるとともに部隊体系の根本的な再編も必要となる、この施策具現化には定数と定員の最適化、つまり削減も避けては通れません。

 人員と装備の最適化が必要になります。これに踏み切らねば戦略単位に対し装備定数や人員定数が定員割れとなるか必要な任務遂行能力を欠く規模に収斂しかねません。自然減というかたちで既にこの問題は顕著な状況となっています。上記を踏まえた上で。機動運用部隊への本質的な転換、実のところ今求められているのはこの変革ではないでしょうか。

 防衛予算には現実的応現があります。その上で機動運用部隊、これは当然、機動運用部隊は必要装備定数も大きく、必然的に防衛力整備へ費用を要するものですので大胆な再編を前提としています。機動運用部隊といえば陸上自衛隊では永らく第7師団や第1空挺団と第1ヘリコプター団、地域配備部隊とは根本的に装備の厚さが異なることが自明でしょう。

 多次元防衛力、そして前提となっている前防衛大綱での統合機動防衛力は、基本的に遊兵を前提としない運用が整備されていなければなりません。有事の際に第二戦線を構成された場合に備え地域配備部隊は必要、とは確かに同意できるものですが機動運用部隊により阻止できないものではありません。遊撃戦などからの重要施設防護については必要が残る。

 地域配備部隊の地方配備は故に必要、と同意できるのですがテロ攻撃と定義を共通させるものが多く、これは防衛力よりは警察力の強化が求められるものなのかもしれません。他方、本質的な着上陸への警戒と部隊配備には、しかし機動運用部隊への集約を図る施策を思案しますと、既存の各種装備体系と既定の新しい防衛装備が大きな意味を持つ事が分る。

 新しい八八艦隊、新時代の機動運用部隊では現在のヘリコプター搭載護衛艦を頂点とする装備体系の強化もその重要な要素となりえます。八八艦隊といえば大正時代に構想した巡洋戦艦八隻と高速戦艦八隻を頂点とした艦隊を八年ごとに更新する壮大な計画、88艦隊は冷戦時代に護衛艦八隻とヘリコプター八機からなる護衛隊群を整備する防衛力整備でした。

 新しい八八艦隊とは、現在海上自衛隊が運用する四個護衛隊群を構成する八個護衛隊にヘリコプター搭載護衛艦とイージス艦を配備させヘリコプター搭載護衛艦八隻体制とイージス艦八隻体制を整備、作戦単位を共通編成の八個体制とする毎年提示している防衛力整備私案の一つ。機動防衛力への思い切った運用というものは、この点に踏み込む視点です。

 陸上防衛力とヘリコプター搭載護衛艦の統合という視点です。ヘリコプター搭載護衛艦への陸上防衛力の統合化をも包含した認識が必要、というものでして例えば現在の旅団普通科連隊を更に軽量化、軽量化といいましても装備定数の削減ではなく山岳軽輸送車や空挺輸送車などの特殊戦車両を含めて軽量な機動力を付与させるという意味で、なのですが。

 コマンドー空母のように必要に応じて陸上防衛力を機動運用させうる体制を構築すべき、という視点です。CH-47輸送ヘリコプターやAH-64D戦闘ヘリコプターとUH-60JA多用途ヘリコプターを搭載可能であるヘリコプター搭載護衛艦、高機動車や軽装甲機動車とポラリス軽全地形車両であれば一定数を格納庫に収容し得ます、例えば軽量部隊を乗せ得る。

 地域配備師団のような重装備を欠いた編成の部隊を改め、軽量普通科連隊を寧ろ地域警備のための軽量装備で妥協という認識ではなく、本部管理中隊に三個普通科中隊と対舟艇対戦車隊と重迫撃砲中隊からなる、現在の即応機動連隊を大幅に軽量化させた編成といえる部隊、遠征機動連隊と仮称するような部隊を全国に機動運用部隊として新編する試案を。

 パワープロジェクション、戦力投射が必要な状況に際しては即座に近傍の全通飛行甲板型護衛艦に中隊戦闘群単位で乗艦させる体制が構築できるならば、安全保障の選択肢に防衛力の後見が必要な状況へ大幅な新しい選択肢を付与できるように、思うのですよね。即ち保有する装備の特性を最大限発揮する事で抑止力についても最大限とする事が可能となる。

 F-35戦闘機の配備、思い切ったF-35Aの増強とF-35Bの新たな配備を明記した平成最後の防衛大綱は、深層部分での陸海空自衛隊統合運用、この視点を大幅に拡張し得るものといえるでしょう。F-35Bは護衛艦にも搭載し得ます、ただ、航空自衛隊は表面上で単なる局地戦闘機の発着場所としてヘリコプター搭載護衛艦を想定している印象がないでもない。

 F-35Bは搭載するAPG-81レーダーがイージスシステムと連接でき、最大射程450kmというスタンダードSM-6を誘導可能です、SM-6はAMRAAMのシーカーを採用していますから妙な喩えではあるけれどもF-35Bに搭載できないAMRAAMをイージス艦が持ってゆくという構図に近い。F-35B,用途次第ではこうした強みがあるのですけれども、もう一つ。

 F-35AとF-35B,整備治具はかなりの部分で共通性があります、この点がもう一つの点です。F-35AとF-35B,これは補給物資や予備部品も同様です。つまりF-35Bの洋上配備とともに護衛艦がそのままF-35Aを含む運用基盤の展開手段に、成りうるということ。もちろんF-35Aでは艦上は無理ですが、ね。護衛艦艦内は広くはありませんが輸送機よりは運べる。

 陸上自衛隊と全通飛行甲板型護衛艦の統合運用が基本戦術として統合化できるならば、その意味するところは自衛隊が領域を超えて我が国安全保障上の非常事態へ対処する必要が生じた際にCH-47JAを運用する護衛艦はそのまま搭載するF-35の運用関連機材を島嶼部や国内民間空港はもちろん同盟国の提供する飛行場にも展開させる一助となるでしょう。

 包括安全保障協力協定締結国との協同に資する地域へF-35運用基盤を暫定展開させる事が可能となり、これは我が国が防衛力を国内が戦場となる前に必要な措置をとる事が求められる場合に、またステイクホルダーとして国際公序を維持する責任ある一員として参画するには新しい選択肢を付与する事ともなるでしょう。そしてもう一つ、期待の装備がある。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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