北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

普天間飛行場移設問題 第三海兵師団戦闘部隊と不可分の空中機動手段

2009-12-11 20:33:04 | 国際・政治

◆普天間をグアムに移転できない事情

 オーストラリア南方海域を、南極大陸から分離した巨大な氷山が北上中とのことである。全長19km、幅 8km、面積は 140k㎡に達するという。もっとも、これは普天間基地代替に使えないのだが。

Img_2496  普天間問題について、最初に、何故、グアムへの普天間移転が不可能なのかを明記しよう。海兵隊のヘリ部隊は、沖縄に残る海兵隊戦闘部隊との間で一体の関係があるのだ。在日米軍の総力は約5万名。この中で、沖縄駐留は23000名、内海兵隊は15000名である(岩国の海兵航空部隊と併せ16000名)。在沖縄米軍部隊の主力は、嘉手納基地の第18航空団、そしてキャンプコートニーの第三海兵遠征軍だ。普天間基地の海兵隊ヘリコプター部隊は、この第三海兵遠征軍に所属している。

Img_1769  第三海兵遠征軍は、第三海兵師団、第三十一海兵遠征群、第一海兵航空団、第三海兵兵站群、司令部直轄部隊などから編成されている。この中で、近接戦闘を含め緊急展開する地上部隊としての能力を有する第三海兵師団の編成は以下の通り、●第三海兵連隊(ハワイ:カネオヘ・ベイ)●第四海兵連隊(沖縄:キャンプシュワブ)●第十二海兵砲兵連隊(沖縄:キャンプハンセン)●第三海兵偵察大隊●第一戦闘強襲大隊。

Img_9950  海兵連隊は、陸上自衛隊の駐屯地祭のような観閲行進、訓練展示を伴う創設行事は行わず、オープンキャンプで模擬店と少数の装備を並べるだけであるので、その実態は分かりにくいのだが、通常海兵師団は三個海兵連隊を基幹として編成されているので第三海兵師団は縮小編成で、師団戦車大隊や両用強襲大隊を隷下に持たず、戦闘強襲大隊にLAV-25装輪装甲車を有する軽装甲攻撃中隊、AAV-7水陸両用強襲車を運用する両用強襲中隊が配属されている。

Img_9888  米軍再編に伴う海兵隊7000名グアム移転により、海兵隊は、第三海兵遠征軍司令部、第三海兵師団司令部、第十二海兵連隊本部がグアムに移転、第三海兵兵站群、司令部直轄部隊も一部が移動する。この結果、沖縄本島南部の施設が返還の対象となり、普天間飛行場は代替施設に移動、普天間飛行場481㌶全面返還、牧港補給地区274㌶全面返還、那覇軍港地区56㌶全面返還、キャンプ桑江68㌶全面返還、陸軍桑江燃料施設16㌶全面返還、キャンプ瑞慶覧643㌶の一部返還が行われる(どうでもいいが、このヘリの写真は海自のMH)。

Img_0041  グアム移転ののち、海兵隊は沖縄に以下の戦闘部隊を残す。第三海兵師団第4海兵連隊、第12海兵連隊砲兵部隊、第1戦闘強襲大隊。この中で、第4海兵連隊は、キャンプシュワブに駐屯しており、このキャンプシュワブ沖合に普天間基地代替飛行場が移転されるわけだ。キャンプシュワブでは、第1戦闘強襲大隊による揚陸訓練も実施されており、揚陸支援に当たる第1海兵航空団のヘリコプター部隊、つまり普天間の部隊は、航続圏内に海兵連隊が駐屯している必要があるわけだ。

Img_9577  海兵隊は、大統領令のみを以てして対外任務を遂行することができる緊急展開部隊だ。陸海空軍は大統領令とともに、議会の賛同が無ければ対外作戦を実施することはできず、この点で海兵隊の即応性は異なる。こうしたうえで、海兵隊は、独自の航空戦力と独立戦闘が可能な軽量装備を中心として編成されているため、第一海兵航空団のヘリコプターは、沖縄に残る第三海兵師団戦闘部隊とは不可分のものであり、グアムにヘリコプターだけを移転することはできないわけだ。そして、海兵隊の沖縄におけるポテンシャルが不要といえるような国際関係が樹立されるまで、戦闘部隊の沖縄前方展開という態勢は不変なのでもある。

HARUNA

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次期ヘリコプター搭載護衛艦“22DDH” ひゅうが型に続く次世代艦

2009-12-10 23:35:36 | 防衛・安全保障

◆事業仕分の判断が及ばない政治問題

 Weblog北大路機関、アクセス解析では検索キーワードとして普天間移設問題よりも“22DDH事業仕分”“22DDH護衛艦”、つまり22DDHに関心が集まっている模様。大丈夫です、事業仕分通りました、というのが本日の話題。

Img_6752_1  自衛隊観艦式2009に参加した、ひゅうが。ひゅうが、に次いで新しいヘリコプター搭載護衛艦くらま、とともに並び、背負式5インチ砲二門に代えて採用された全通飛行甲板、ステルス性への配慮、満載排水量は7200㌧から19000㌧へと大型化。世代交代、新世代護衛艦という強い印象を示した。

Img_5620  二年後には、二番艦いせ、が就役し、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦を置き換えることとなるのだが、平成22年度防衛予算概算要求では、もう一回り大きい22DDHが、しらね型の後継として建造されることとなる。心配されたのは、事業仕分により、この大型艦が短絡的な判断から建造が延期、もしくは中止されるのかもしれない、という漠然とした不安だろう。

Img_5490  22DDHは、現在の計画で基準排水量19500㌧、ひゅうが型の事例からすると、必要な機能を更に盛り込むことで、19800㌧程度に大型化する可能性もある。ひゅうが型二隻を上回り、満載排水量は30000㌧に迫るものとなり、海上自衛隊発足以来建造された護衛艦としては、最大のものとなる。

Img_8713  海上自衛隊の新型護衛艦、これが無駄、と事業評価で判断されてはたまらないという判断からの検索だろうか、北大路機関へのアクセスキーワードの上位にあがっているわけだ。共産党などは防衛関係の予算に対して条件反射的に無駄、と決めつける習性があるので、よく槍玉に挙げられているが、共産党がかつて日本に創設しようとしていたような人民軍創設は現実的ではないわけで、以下略。

Img_8463  ひゅうが型は、射程60kmのESSM(発展型シースパロー艦対空ミサイル)を、多数の航空機や対艦ミサイルの同時攻撃に対して多目標同時対処能力を持つFCS-3により、迎撃することが可能で、大型ソナーを搭載し、潜水艦の接近にも早期に対処することができる、護衛艦である。

Img_8796  22DDHは、排水量が非常に大きくなっているのに対して、建造費は、ひゅうが型とほぼ同等であるのだが、その分、ESSMは搭載されず、射程9.5kmのRAM個艦防空ミサイル10連装発射装置を搭載、FCS-3も搭載されない設計として計画されており、より航空機の運用を重視したものとなっている。

Img_8766  ヘリコプター搭載護衛艦は、横須賀、佐世保、舞鶴、呉に置かれている四個護衛隊群に一隻づつ配属させることとなっている。したがって、22DDHは、ひゅうが型二隻が、はるな型二隻、はるな、ひえい、を代替するように、しらね型二隻の、しらね、くらま、を、恐らく22DDHを二隻建造し、代替することとなろう。

Img_8776  こういった大型護衛艦が必要となった背景には、はるな型、しらね型が整備された時代、海上自衛隊の任務は、日本周辺海域でのシーレーン防衛を行いつつ、北海道や新潟などに上陸を試みるであろうソ連太平洋艦隊を迎撃することが任務で、最大限見積もっても鈴木内閣時代の1000浬シーレーン防衛を行うことが最大行動範囲であった。

Img_8829  しかし、東西冷戦終結後、海上自衛隊は、ソマリア沖に重武装の海賊から商船を護るべく派遣され、インド洋やアラビア海において継続的に対テロ海上阻止行動給油支援に部隊を派遣中、海上自衛隊の活動範囲は、非常に広く拡大しているのだ。このために母艦機能は陸上基地の支援を受けられない地域でも航空機を運用できる程度に、そして護衛艦の航続距離も行動範囲の増大に併せて大型化し、多くの燃料を搭載する必要があるわけだ。

Img_9181  したがって大型化したヘリコプター搭載護衛艦の要求であるが、その必要性は、今後の日本の対外政策、外交関係の展開、国際安全保障環境の推移、周辺国の国防政策により変化してくるものである。高度に政治的な内容となるため、ノーベル賞受賞者のとあるお方が科学技術関連予算についての削減に述べた“歴史という法廷に立つ覚悟はあるのか”ということになる。

Img_9197  結果、事業仕分は、歴史という法廷に立つ覚悟はなく、高度に政治的な問題であるとして判断を避けた。・・・、政治の問題、・・・、言い方を変えれば統治行為論、ということか。結果、事業仕分は、予算調達の方法は見直すべき、という曖昧な判断のみを残し、通過した。・・・、もっとも、麻生内閣が景気回復のカンフル剤として準備した補正予算、これを鳩山内閣が政権交代に気取り執行停止したことで深手となった経済状況を立て直すための新第二次補正予算、この補正予算により、事業仕分の節約分は全て消えそうだ。おそらく今回の事業仕分で将来生じる損害の補てんに、次の内閣は頭を悩ませられるのだろう。しかし、そうした状況下であっても、22DDHにより、最低限日本のシーレーンは安泰であろうことがせめてもの救いなのかもしれない。

HARUNA

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懸念された日米安全保障体制に波及 普天間飛行場移設問題

2009-12-09 23:31:39 | 国際・政治

◆日米首脳会談開催も不透明に

 日米関係は、軍事同盟のみならず、国際基軸通貨や通商関係、国連を軸とした世界秩序、果ては価値観などの面で結びついているものだが、この中で安全保障体制が揺らいでいる。

Img_4146_2  あの小さな基地が日本の命取りになるのか、この言葉は伊藤博文が1904年の旅順要塞攻防戦において、乃木大将率いる第三軍が海軍と東京の大本営に急かされる形で物資蓄積や攻撃準備射撃不十分なままの攻撃前進を強いられたことで、たび重なる総攻撃が失敗し、発した言葉である。百五年の時を経てはいるが、普天間基地の問題と重なるようにも思えてくる次第。

Img_2605_2  来年の日米安全保障条約改定50周年にともなう、日米安全保障条約深化のための日米協議を実施することについて、アメリカ側が普天間問題の不履行が続く限り、開催することは現実ではないとして、開催の延期を通告してきた。また、コペンハーゲンでの日米首脳会談についても、日米合意履行以外の説明、日本の連立与党に関する内部事情であれば、説明を聞くことは大統領の時間の浪費であるとして拒否する意思をホワイトハウスが表明した。

Img_8885_2  国際公約ともとれる日米首脳会談での鳩山総理の言葉をあたかも反故にするが如く、国内の連立与党との協調を重視する姿勢は、アメリカはもちろん、世界に対しても背信行為であるとしか映らない。同時に、果たして他の国際公約も履行する意思はあるのか、日本政府の発言は妄想か政策実行の意思があるのかをどのように見極めるかが大きな難題となるのだろう。

Img_8315_2  辺野古沖移転であるが、水面下の調整に調整を重ね実現した内容だけに、再び再検討の可能性を民主党が示したことは、沖縄県内の世論に国外移転を前提とした現状の計画について白紙撤回であると受け取られている節があり、現時点でも辺野古沖移転は、数ヶ月前以上に県内の反発が予想される状態となっている。

Img_5162_2  国外移転、特にグアム移転は現実的ではないことを北澤防衛大臣はグアム視察を通じて表明した。グアムがだめならばテニアンやクウェジェリン、と思いたくなるのだが、マリアナ諸島自体が、米軍が戦略上必要とする南西諸島よりも遠すぎるのだ。フィリピン国内か韓国南部を模索した方がまだ現実的であり、調整を考えれば、一旦は辺野古沖に移転するほかない。

Img_8883_2  外交交渉一つ行えない政府はあり得ない。総辞職するか、対米関係の意図的な悪化を招かないならば、すぐにでも辺野古移転を表明し、政権公約の変更を沖縄県民に陳謝するべきだ。しかし、現政権の優柔不断が続くならば、アメリカ側は交渉に赴く前に、まず自民党本部で意見を調整し、政府との交渉に臨むというかたちになることも、そう遠くは無いかもしれない。

HARUNA

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12.08 真珠湾攻撃と太平洋戦争開戦記念日に併せて

2009-12-08 23:56:36 | 北大路機関特別企画

◆五合空けた後の思考整理

 本日は十二月八日、日本海軍が1941年にハワイ諸島真珠湾の米太平洋艦隊を奇襲し、太平洋へ第二次大戦の戦火が拡大した記念日である。

Img_0663 戦争は異なった手段を以てする政治の延長である、とクラウゼヴィッツは戦争論に記したが、太平洋戦争開戦に伴う一連の日本国内の意思決定過程は、政治の失敗が戦争を招くということを端的に示したようにも見える次第。しかし、今日では誤った政治的決定さえなければ、合意の集約により、よいと評することのできる政治を行う道は残されているのだが・・・、という視点でちょっと愚痴。

Img_1867  ビスマルクは、賢者は歴史から学び愚者は経験からしか学ばない、という言葉を残しているが、国際公序や日米関係の重要性は歴史が示しているものであり、国内の連立や地域の要求などは、国際関係に照らし合わせればミクロとマクロで思考体系を切り替える必要のあるものだ。

Img_3105  どうも、今日、個々人の政治家が選挙の敗北や選挙を第一とした、敗北の記憶に左右され、物事の大局を見失っているのではないかという危惧を感じる次第。選挙対策を第一にしていることは、政権公約の確実な履行に繋がる事でもあるのだが、政権公約よりも重要なことはあるのではないか、と。

Img_0788  アメリカ独立宣言を起草し第三代大統領となったジェファーソンは、理性と自由な探求のみが唯一誤信を乗り越える、としている。理性とは、価値観の根底を為すものであり、向かうべき理想が同じであれば共有し得るものである。しかし、誤信は得てして自由な発想を阻害するものだ。

Img_5712  そして、誤信の存在さえ気づかず判断を行うことが大半である。慎重を期せば逆に陥る物事の機の喪失という危険もあるのだろうが、誤信はあり得るとした理念を持つ慎重さこそが重要である。例えば、政権公約の前提となったものの数値や定義、情報などに誤りが無いのかを検討することも重要なのではないか、と考える次第。

Img_5223  例えるならば、自らの政策を実現する財源について埋蔵金があると考える信念、沖縄以外に普天間飛行場の代替施設が構築できるという信念、公共事業を人材育成に置き換えることが将来に利するという信念、急激な為替変動に対しても極力介入しないという信念、消えた年金は調べればすぐにでも解決できるという信念、然り。

Img_7711  フランス復興の礎を築いたシャルル・ド・ゴールは、大統領として、核保有によってこそ安全保障はアメリカの核の傘に依存せず成り立つ、として核開発を成し遂げたが、核兵器が第二次大戦で日本に対し使用されたことを以て、人類は自らを破滅させうる手段を持つに至ったことに途轍もない絶望感に襲われた旨、回顧録に記している。

Img_8759  個人の信念とは異なる事であっても、職責を負ったからには、やらなくてはならないこともあることを端的に示している。普天間問題など、社会民主党としては、民主党と政権を連立する以上、譲れないものもあるのだろうが、個々人の信念と、職務を担う事で生じる責任、公私混同は避けなければならない。

Img_8585  ローマ帝国に対し徹底的に抵抗したカルタゴの知将ハンニバルは、いかなる超大国も長期にわたり安泰足り得ることは出来ない、何故ならば国外に敵を持たずとも国内に敵を持つようになる、鍛え上げた頑強な肉体もそうであるがゆえの内臓疾患に悩まされることと同じだ、と記している。これは、現在の連立与党が国内の選挙戦を経て政権交代を成し遂げた後とも重なる。

北大路機関

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普天間飛行場移設問題 過去に提示された名護市沖軍民共用空港案

2009-12-07 22:52:38 | 国際・政治

◆名護市沖辺野古海上基地計画

 何故データが飛ぶかわからないのだけれども、Weblog書いていて、Enter押しただけでいきなりダウンする、・・・、ううむ。もう少しで完成だったのに。

Img_9770_2  さて、本日は昭和東南海地震から65周年という日であり、三重県総合防災訓練も計画されているのだが、扱う話題は普天間飛行場移設問題について。1998年に、当時沖縄県知事に当選した稲嶺県知事は、15年間の期限付きでの代替飛行場を名護市辺野古沖に建設することを容認する意思を表明している。

Img_9058  鳩山首相は、ルース駐日大使に、このままでは普天間返還は実行できない、日米関係と連立与党維持、どちらが重要なのか、と詰め寄られた。これを聞くと、選択肢に普天間現状維持があるのか、と思いたくもなるが、沖縄を訪れた岡田外務大臣は、沖縄県民と日米関係、どちらが重要なのか、と詰め寄られている。

Img_0056  どうしても、海外、というならば、グアムは距離的に無理だ。日比首脳会談で、フィリピンにクラーク空軍基地、スービック海軍基地と同規模の基地を日本側が確保し、日本側の予算で米軍基地を建設し、そこに移駐してもらう、という案の方が、まだ、現実的なのかもしれない。

Img_3277  1991年6月のピナトゥボ火山がプリニー式の火山指数6という大噴火を引き起こし、全方位火砕流は16km先まで到達、火口から30km以内の住民に避難命令が出された。この噴火で、クラーク空軍基地は地震と火山性堆積物により破壊され、米軍は撤退したのだが、1992年に火山活動は沈静化している。海外ならばフィリピン政府と交渉した方が、まだ可能性はあろう。もっとも、これは時間的要素から非現実的なのだが。

Img_2812_2  名護市辺野古沖の代替飛行場について、稲嶺知事、当初は撤去可能な飛行場施設を求めていたとされるが、沖縄県民の財産となる施設としての位置づけから恒久的な滑走路を持つ飛行場を軍民両用の飛行場として建設を求める方向に方針を変えている。那覇空港の運行本数増大に伴う限界もあり、辺野古沖に民間空港を建設する、という選択肢はあったようだ。

Img_3050_2  しかしながら、もちろん、辺野古沖の空港は、那覇空港代替というよなものではなく、一つの新しい地方空港として考えられていた模様。加えて、15年間の期限付きでは、米軍側が容認できないということで、2006年、任期満了が近くなったあのち、稲嶺知事は建設賛成を撤回している。現在の仲井沖縄県知事は、米軍飛行場については建設容認を表明している。

Img_9901_2  さて、普天間基地、現状維持という選択肢を除けば、やはり昨日記事に記したように、いったん、普天間基地機能を辺野古沖の飛行場に移すほか無いだろう。2014年に移駐を目指す日米合意があるのだから、時間的に代替地の選定は不可能である。しかし、稲嶺知事(当時)案のように、15年期限を設けて建設するのならば、ある程度周辺住民の同意は得られるかもしれない。

Img_3065  そこで、昨日記したように、那覇空港機能を名護市沖の暫定飛行場拡張施設に移転するという案は、現実味をもってくるのではないか。2014年に名護市辺野古沖移駐を行った後、15年後の2029年までに、那覇空港機能を辺野古沖に移転できるよう辺野古沖暫定飛行場の拡張工事を進め、2029年を目途に辺野古沖施設を県に移管、海兵隊は那覇基地に移る、という方向策だ。悪戯に友愛友愛と掲げるよりは、一つの方向とは言えるように思う次第。

HARUNA

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提案:普天間代替問題 名護に新空港建設し、那覇基地へ移転を

2009-12-06 02:28:25 | 国際・政治

◆新しい基地を建設せず普天間代替施設を整備

 普天間代替施設問題、はたしてどうなるのだろうか。さまざまな提案が出されているが、Weblog北大路機関としては、なんとか民主党、アメリカ政府、沖縄県が妥協出来そうな突飛な案を提示したい。

Img_2572  岩国は満杯、硫黄島は基地維持が困難、関空は母艦の母港から遠い、嘉手納は騒音問題と米軍曰く収容機能で不可能、グアムは遠すぎて不可能。個人的には、辺野古沖に、やはり飛行場は造るべきと思う訳です。ただ、辺野古沖の飛行場が、基地以外の飛行場であるなら、県民や政権公約との妥協点はあるのではないか。

Img_1769  沖縄県の第一の論点は基地撤去と部隊の海外移転、しかしこれは不可能で妥協点は無し。妥協点は普天間を閉鎖するとともに新しい基地を造らない、というところだ。つまり、集約できるのならば、在沖基地であっても、基地が増えることとはならないので、その枠内で、移転問題を解決するならば妥結点が見出せる。

Img_1069  そこで、非常に突飛な案だが、とお断りしたうえで普天間移転問題とともに問題化している那覇空港の拡張問題、着陸枠がいっぱいとなってしまい、早急に第二滑走路の建設を模索しなくてはならない那覇と、移転先を探さねばならない海兵隊普天間航空基地の問題を同時に解決する案を一つ提示したい。

Img_3157  官民共用空港である那覇空港に米軍部隊を移転、航空管制は自衛隊が行い、陸海空自衛隊と米海兵隊共用の那覇基地として整備する。そして那覇空港に代わる民間空港の代替設備を辺野古沖に海上空港として建設する。那覇空港は、那覇軍港と隣接しており、物資の揚収にも便利、基地機能は高い。

Img_9467  空港となると、基地よりも大型化するのだが、現時点で米側は、辺野古沖の航空施設を、より沖合に建設してもよいとの妥協点を提示しており、意義の見出しが難しいV字型滑走路ではなく、従来の飛行場としてより沖合に建設すれば、騒音問題は解決できるだろう。環境問題、漁業権問題は、検討の余地はあるが、これは別のレベルの問題だ。

Img_6174  米海兵隊の移転と両立するためには、第一に辺野古沖の空港施設を暫定施設として1600㍍滑走路とともに海兵隊ヘリコプター部隊を収容する施設を建設し、3000㍍滑走路と空港ターミナル施設が完成するまでの間、海兵隊が駐留、辺野古沖飛行場の第二期工事として1600㍍滑走路に平行して3000㍍滑走路を海上に建設する。

Img_6117  この3000㍍第二滑走路が完成した時点で辺野古沖飛行場はアメリカ海兵隊航空基地から、民間空港である沖縄空港と改称、沖縄空港は新しい沖縄の表玄関となる。民間空港である那覇空港の施設は、一部が海兵隊に移管され、飛行場から旧那覇空港、新那覇航空基地に移駐する、というかたちとする。

Img_8536  新空港は、海上空港であるから拡張工事には柔軟性があり、3000㍍滑走路と1600㍍滑走路の二つを有する空港として運用を開始し、1600㍍滑走路は、中型機中心の運用としつつ、最終的に3000㍍滑走路に拡張する、という方式をとる。中型機発着枠の余裕は沖縄県島嶼部のハブ空港としても機能することを意味する。

Img_8298  名護市の辺野古に沖縄空港を造った場合、問題は交通だ。名護市から那覇市までは約60km、大阪駅から関西国際空港までよりも距離があるのだ。そこで辺野古飛行場を沖縄空港として整備し、那覇市との間を、那覇空港と那覇市内を結ぶモノレールのように、沖縄中央道に並行する形で100%国費にて那覇市、沖縄市、名護市を結ぶ高速鉄道を整備する。

Img_053487  高速鉄道の距離は57km、一大公共事業となるだろうが、空港~都市間交通の充実とともに、沖縄本島全体の経済活性化にも寄与する案であろう。沖縄本島北部地域からの那覇空港へのアクセスには、距離的な問題があり、空港と高速鉄道の整備は、地域振興の観点からも検討の余地はあるはずだ。

Img_235951  沖縄県内は、本島の場合でもモノレール以外の鉄道は無く、もっぱら自動車による移動が主であるのだが本島は北部と南部を結べば京都~姫路間に相当する距離であり、名護市沖への空港移転を契機として鉄道敷設を行えば空港輸送とともに通勤通学輸送の面でもこの上ない地域振興策にもなろう。

Img_8720  那覇空港について。現在、一日の発着数が300便を越えた那覇空港では、滑走路が一本であり、その拡張問題が切迫している。加えて、航空自衛隊、海上自衛隊と滑走路を共有しているため、緊急発進などが行われる際には、過密空港である那覇空港の航空管制を更に悩ませる状況となる。

Img_8832  この際、名護市に那覇空港の代替を建設するならば、滑走路は海上空港となるため、第二滑走路の整備は比較的容易になる。一方で、那覇基地は、航空自衛隊の南西方面航空混成団司令部が置かれている南西諸島防衛の要衝であり、F-15飛行隊を隷下に有する航空隊も置かれている。

Img_8265  また那覇には、海上自衛隊の哨戒機部隊である第5航空群が展開している。P-3C哨戒機20機を運用する航空隊は、高い対潜哨戒能力とともに洋上哨戒能力も大きく、長い飛行時間を活かして南西諸島における洋上哨戒にあたり、外国艦船の不審な動向に目を光らせている。

Img_5874  那覇基地は、那覇駐屯地でもあり、陸上自衛隊第1混成団の司令部と主力部隊が置かれている。第1混成団は、近く第15旅団として拡大改編される計画となっており、沖縄県島嶼部の防衛警備及び災害派遣にあたる。第1混成団は、火砲などは有さないものの、第101飛行隊を隷下にもち、空中機動旅団である第12旅団と並ぶヘリコプター部隊を持つ。

Img_1051  しかし、ヘリコプターは、有事の際にはどれだけあっても足りるものではなく、那覇に米海兵隊がヘリコプターを駐留させていれば、この点好都合である。南西諸島有事の際には、陸上自衛隊の輸送支援に米海兵隊ヘリコプターの協力を要請することも出来、那覇集中は南西諸島防衛にもこの上ない利点を持つ。

Img_8723  もうひとつ、那覇空港は飛行場としては沖縄県内で米空軍の嘉手納基地と並ぶ規模を有する。もちろん、ここで構想したような沖縄空港は、恐らく那覇空港よりも大きくなるのだが、日米共同運用で航空自衛隊が那覇基地を管制すれば、嘉手納基地と並ぶ拠点を日本が持つこととなり、沖縄での日米の均衡がとれる。

Img_9118  沖縄は日本の領土なのだから、嘉手納が圧倒的に大きいという状況は、好ましくないだろう。こういう見栄はどうでもいいように思われるかもしれないが、沖縄にここまで米軍基地が多くてはどこの国なのか分からない、といわれる現状に対しては、反論できるよう、大きな基地が必要となる。

Img_2936  もうひとつは、米海兵隊が那覇に駐留することで、弾道ミサイル防衛にあたる防空砲兵部隊も必要に応じて駐屯することとなろう。もちろん、那覇基地には航空自衛隊の高射群がペトリオットミサイルを運用しているが、より濃密な防空体制を確保できるし、基地警備は海兵隊と共同警備を行えば、ゲリラコマンドーに対しても万全の警備を敷くことができる。

Img_9657  名護市辺野古沖に米軍基地を建設することが、“新しい基地を建設するため反対である”という論点で進められるのならば、民間空港である“沖縄空港”としての建設であれば、問題は少ないだろう。また、暫定設備として辺野古沖に那覇空港と交代できるまでの間、海兵隊航空基地として運用させるのだから、米側からも反発は少ないだろう、次の移転を含めても、いったんは辺野古沖に移転するのだから。

Img_8540  1600㍍滑走路を見込んでいた辺野古沖代替設備は、沖縄空港となることで、3000㍍滑走路二本を有する巨大空港は、関西国際空港建設費に匹敵する1兆5000億円を要する事となるが、那覇空港の代替であり、国内に量産される採算性に問題のある地方空港とは異なり、採算性は充分見込める空港設備、つまり無駄ではない公共事業だ。

Img_8871  日米関係を考えれば、普天間代替基地に関しては、問題先送りによる越年は望ましくない。そして、那覇基地に将来的に移転するにしても、辺野古沖の海兵隊飛行場は予定通り建設して普天間が返還されたのち、辺野古沖に沖縄空港が建設されるまでは、十年近くを要するだろう。この間、沖縄県民の合意形成など、新しい場面での道筋を見つけるための、時間稼ぎも可能となろう、那覇移転を前提とする建前での辺野古沖工事開始、一つの選択肢とはなるのではないか。

HARUNA

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普天間移設問題 来年先送りにルース駐日大使「強い懸念」

2009-12-05 23:34:14 | 国際・政治

◆政府、鹿児島県離島移転案を提示

 普天間移設問題に関して話し合う日米作業部会の第二回会合が4日、外務省で開かれ、出席したルース駐日大使は問題の来年先送りに「強い懸念」を示したという。

Img_9933  ルース駐日大使は、現在の辺野古沖への移転が唯一の選択肢であると表明した。ルース大使は、移転が進まなければ在沖米軍部隊のグアム移転、嘉手納基地南側土地返還作業などにも悪影響が生じ、現行の計画が沖縄県内の負担を軽減する唯一の選択肢であると述べた。実際その通りで、普天間の辺野古沖移転は、絶対的な反対の中交渉に交渉を重ねて地元から最低限の妥協と理解を引き出したものであり、反対出来るのならば反対したいだろう。

Img_2545  小生も実際に、基地依存経済が破たんしても基地は無いほうが嬉しい、という沖縄県の首長からお話を聞いたこともある。そこで、政権公約に辺野古沖反対を明記した新政権は、最早アイディア大会という様相を呈している普天間移転案だが、鹿児島県島嶼部、種子島の西方12kmに浮かぶ馬毛島の基地転用案が浮上した。

Img_9050  馬毛島への米軍移転は、過去に陸上空母発着訓練の基地候補として提示されたものの、騒音や事故を懸念した周辺の島々の住民の反対により実現しなかった馬毛島への移転案である。馬毛島、一応過去に貨物専用空港の構想は出ていたものの、強行すれば鹿児島県民の意思を無視することとなる。

Img_9943  こうなると沖縄以外に移転できれば、最早どこでもいいという定義で選定しているようにも見えてくる。実際問題はいくつもある、海兵隊ヘリコプターは駐機する場所を探しているのではない、訓練空域や海兵隊訓練支援のために沖縄本島の演習場は不可欠であり、沖縄本島に向かう屋久島、奄美大島、徳之島上空を頻繁に海兵隊ヘリが行き来することとなる、このことに関して合意はとれる見通しはあるのだろうか。

Img_9579  しかも、海兵隊ヘリは有事の際に増強されるのだが、海兵隊ヘリを空輸するのは空軍の輸送機であり、空軍の輸送機との協同を考えたからこそ、米海兵隊は空輸拠点となる嘉手納基地近傍に航空基地を求めてきたわけであるので、完全な離島にこうした拠点はあり得るのか、という問題も、米側が今回の案を非現実的である、と反対したことの背景にあろう。また忘れてならないのは、完全な離島に基地を建設するのは、資材輸送を中心に、代替基地建設の費用捻出を行う日本政府に大きな負担を強いるもので、財政に余裕のない現状では非現実的ではないだろうか。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成二十一年度十二月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報 1

2009-12-04 13:35:56 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 自衛隊関連行事の紹介の前に、最初に事件の話から。自衛隊ヘリコプターに破壊工作事案が三菱重工小牧南工場定期整備中に発生した。

Img_4994  2日の発表では、三菱重工小牧南工場にて定期整備中の航空自衛隊UH-60J救難ヘリコプター、海上自衛隊SH-60J哨戒ヘリコプター、計2機の電気配線が何者かに切られるという事件が発生した。器物破損の届け出を受けた愛知県警枇杷島署は、工場内へ外部からの侵入は難しいことから、関係者の犯行の可能性もあるとして捜査を進めている。

Img_4150  切られた配線は七本、破損行為は11月30日にSH-60Jの損傷が発見され、12月1日に急きょ行われた全機点検で、UH-60Jの破壊行為が発見されたとのこと。二機とも第二格納庫で並んでいたが外部からの侵入は赤外線センサーなどにより難しいという。自衛隊機への破壊工作は2002年にも戦闘機など9機に対し行われており、犯人は逮捕に至っていない。

Img_4228  定期整備中とはいえ、防衛装備品への破壊行為は、単なる器物破損ではなく、自衛隊法121条に違反することとなる。小牧南工場は名古屋など人口密集地域からほど近い場所にある、最悪墜落事故に発展する危険性もあり、前回の2002年の事案は時効を迎えているものの、今回の事件、なんとか捜査の進展を祈りたい。

Img_1209  今週末に行われる自衛隊関連行事について。まず筆頭は横須賀グランドイルミネーション。毎年恒例の行事となったアメリカ海軍横須賀施設の一般公開だ。写真は、2007年のキティーホーク一般公開の様子だが、今回一般公開されるジョージワシントンはより大型、一般公開には期待も高まる。入場は1200~1700、点灯は1630で、会場は1800まで開放される。

Img_9002  海上自衛隊からは、最新鋭のヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが、が一般公開される。ジョージワシントンよりは小型であるが、護衛艦としては日本最大。最新か大型か、まようところだ。横須賀の米軍艦はイルミネーションを実施する予定で、例年海上自衛隊の護衛艦も吉倉桟橋において電灯艦飾を実施している。

Img_7970  電灯艦飾は、年末年始にも行われるようで、シャッター速度を思い切り落として、絞りも最小としてISO感度を最大限に上げる。そして三脚か、三脚が無い場合は手すりでも電柱でも支柱にして、動揺の船上から撮る、というような、支えも無い場合は(↑この写真)、とにかく連写でシャッターを押した瞬間の手ぶれを最小限にして撮影すると、なんとかなった。

Img_8289  九州では宮崎県新富町の航空自衛隊新田原基地において新田原基地航空祭2009が行われる。九州はまだ暖かく、先週の築城基地航空祭2009と並んで航空祭シーズンが最盛期、新田原基地には第5航空団と、精鋭飛行教導隊が展開しており、F-4戦闘機とF-15戦闘機の飛行を堪能することができる。

Img_8651  F-15は、部品脱落事案が築城基地航空祭にて生起したため、新田原基地航空祭ではF-15の飛行展示に一時暗雲がたちこめたものの、新田原基地公式Webサイトによれば、航空祭に関して、“2009航空祭は、すべてのプログラムに変更なく予定通りに行われます”という、心強い発表がなされていた。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

  1. 12月5日:アメリカ海軍横須賀施設第三回グランドイルミネーション・・・http://www.c7f.navy.mil/
  2. 12月6日:新田原基地航空祭2009・・・http://www.mod.go.jp/asdf/nyutabaru/

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

追記・・・

 F-15Jが小松基地において本日1310時、右主脚部分の油圧装置が正常に機能せず着陸に失敗、機体の一部が損傷したとのこと。小松空港は閉鎖され、民間機の発着に影響が出ている。

 護衛艦おおなみ、さわぎり、が今朝0845時、高知県沖で海賊対処訓練中に接近しすぎ、艦首部分が接触、おおなみ、舷側の安全柵が損傷。さわぎり、艦首に若干の破孔が生じたとのことです。負傷者は無し、海上幕僚監部では原因を調査中。事故後、二隻の護衛艦は、訓練を中止し横須賀、佐世保に帰投中。

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普天間基地移転問題は来年先送り? 民主・社民の対立深刻化

2009-12-03 22:30:56 | 国際・政治

◆来年は日米安保改訂50周年

 いろいろと50周年行事に惹かれるWeblog北大路機関、来年は日米安全保障条約改訂50周年だ。

Img_1066_1  日米安全保障条約改訂50周年ということは、来年の航空観閲式はF-22やB-2が参加してくれるのではないか、日米国際観艦式が海上自衛隊創設50周年のように行われるのではないか、ブルーエンジェルスが岩国航空基地に展開して飛行展示を実施するのか、などなど期待を高めている今日この頃であるが、日米安保締結50周年を考えると、改訂50周年は、大したことをやらないのかな、とも思う次第。

Img_9937  こうした中で、日米関係は普天間基地代替飛行場問題で大きく揺れている。本日午前中、消費者少子化担当大臣で社民党党首の福島みずほ代議士は、自民党時代に決定し、民主党が調整を試みている辺野古のキャンプシュワブ沖合への海上ヘリポート建設が、予定通り実施されるならば、社民党にとっても、代議士自身にとっても重大な決意をしなければならない、という意思を表明した。重大な決意とは、連立離脱を意味するものと解釈されており、鳩山首相も、重く受け止めていかなければならない、社民党、国民新党の思いは大事にしてゆきたい、と語っている。

Img_0176  現時点で、普天間基地を現状維持するほか、辺野古沖に新しい海上ヘリポートを建設する以外、選択肢は無い状況なのだが、言い換えれば決定までに十年以上、決定後の調整に十年以上を要している普天間代替基地問題を、半年で解決できるものだと考える方が無理というものではないか。こうしたなかで、一応、アイディアとして提示されているのは、主なもので嘉手納基地統合案、硫黄島移転案、そして関空移転案である。

Img_9419  嘉手納基地統合案は、岡田外務大臣が提唱した案で、第18航空団に所属する航空機のうち、F-15飛行隊のみを三沢基地に移転させ、あいた部分に普天間基地の海兵隊ヘリコプターを駐留させる、という構想なのだが、幾つか無理がある。嘉手納の面積を考えれば、日本側が嘉手納基地の再構築に伴う予算さえ捻出すれば、収容は可能だろう。

Img_8436  しかし、まず、F-15移転により騒音を低減させたのちに海兵隊機を受け入れる、ということだが第18航空団はF-15二個飛行隊のみならず、支援するKC-135空中給油機やE-3空中早期警戒管制機が配置されており、現代航空戦を考えるならば、これらの機体と戦闘機の協同は必須、したがって、三沢基地にF-15が移転したのちにも、頻繁にF-15は飛来するだろう。

Img_8446  実際、F-15一個飛行隊を三沢に移転する計画を米空軍は持っているのだが、騒音が減少するのかは疑問である。もうひとつは回転翼機の騒音特性だ、回転翼機とF-15のような固定翼機とでは、着陸までの速度や滑走路への進入経路、飛行高度が異なる。したがって、速度が遅いということは騒音が続く時間の長さが、高度が低い分より大きな騒音が、飛行経路が異なる以上今までよりも広範囲に、続くわけである。嘉手納基地周辺住民が、賛成するかというのは微妙な問題だ。

Img_2355  硫黄島移転案、これは、社民党が提案していたものであるが、こちらも無理がある。厚木航空基地の空母航空団移転が検討されたのだが、第一に硫黄島は水が出ないため大規模な海水淡水化プラントを建設しなくては基地機能はあり得ないという点、天候急変時に着陸できなくなった場合周辺に緊急着陸する代替飛行場が無い点が解決できなかった。

Img_0984  厚木航空基地周辺の陸上空母発着訓練は政治問題となってしまうほどであり、先の二つの問題を解決できないということから、空母航空団の厚木航空基地からの移転は岩国へうつる事となり、瀬戸内海へ大きく突き出した形で基地面積を二倍にするという、岩国航空基地の拡張という結論に落ち着いた事例がある。

Img_3400  加えて、海兵隊機の母艦である強襲揚陸艦も、横須賀基地をなんとか拡張して強襲揚陸艦が入港できるよう措置をとるか、横浜ノースドックをアメリカ海軍横浜施設として拡張すれば対応できるのかもしれないが、果たして強襲揚陸艦が横浜ベイブリッジを通行できるのか、という素朴な疑問が残ってしまう。

Img_6825  硫黄島の基地化、中国海軍が航空母艦建造を進めている中で、小笠原諸島の防備を固めるべく、米軍基地を整備する、というならば、検討の価値はあるのだろうが、普天間代替基地建設は辺野古沖と硫黄島では難易度が違いすぎる。なによりも、米海軍機の硫黄島での発着訓練に社民党は玉砕の島での米軍訓練として反対してきているが、海兵隊であればOK,というのでは整合性が採れないように見える。

Img_1770  関西国際空港案、これは、夕刊紙などがスクープし、橋本大阪府知事が受け入れる用意があると発言したことから知られることとなったのだが、難しい。関西国際空港を発着した米海兵隊機はどこで訓練をすればよいのか、演習場確保の問題、そして強襲揚陸艦の母港に適した基地が無い、という問題がある。

Img_7572  海上自衛隊阪神基地は狭すぎるし、神戸港はもちろん、大阪南港や和歌山に新しい海軍施設を建設する、というのは、少し難しいように思う。しかし、この問題は、先送りすれば何とかなる、というような問題ではないし、社民党と民主党の妥協点は見つからないような危惧も感じられる次第。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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ソマリア沖海賊事案 アデン湾からアフリカ東岸へ脅威の転進

2009-12-02 22:46:26 | 国際・政治

◆東アフリカ情勢の変動

 12月1日の北澤防衛大臣記者会見において、陸上自衛隊の南部スーダンPKOへ派遣の可能性を岡田外務大臣が示唆したことについて、報道で見たことはあるが聞いたことは無い、と発言した。なるほど、外務省発の大本営発表というところなのだろうか。

Img_0405  さて、アフガニスタンへ今月上旬、増強部隊第一陣として9000名の米海兵隊部隊が展開する旨、オバマ大統領がウエストポイント陸軍士官学校における演説で発表された。海兵隊9000名は南部ヘルマンド州に投入され、2010年夏までに三万名を増派する計画で、駐留米軍は増派を行った後18カ月以内に治安を回復し撤退を開始することができる、と述べた。アフガニスタン戦費として2010会計年度に300億ドルを計上しているとのこと。

Img_2244_1  岡田外務大臣の発言報道や、過去の民主党党首時代の小沢代議士による発言から、アフガニスタンへ陸上自衛隊を派遣する意向は民主党内部にはあるようなのだが、最終的に米軍派遣部隊は10万名の規模に上るほどであり、とてもではないが、戦闘部隊と戦闘支援部隊以外の自衛隊派遣は現実ではないという状況が現出している。こうした中で、アフリカ情勢がまたしても悪化の兆候を見せている。以下ににロイター通信のWebサイトから引用する。

Img_2529  [アテネ 30日 ロイター] ギリシャの沿岸警備当局は30日、ソマリアから1000キロ以上離れたセーシェル共和国付近の海上で、ソマリアの海賊がギリシャ船籍の超大型タンカーを乗っ取ったことを明らかにした。タンカーは30万トン級で、乗員はフィリピン人16人、ギリシャ人9人、ウクライナ人2人、ルーマニア人1人の計28人。クウェートからメキシコ湾に向かっていた29日未明に乗っ取られた。

Img_4295  匿名のギリシャ当局者は「ソマリアから700マイル離れたセイシェル沖で、武装した海賊約9人がタンカーを襲撃して乗っ取った」と述べた。 ギリシャのタンカー運航会社がロイターに語ったところによると、乗っ取られたタンカーはソマリアに向けて航行中で、乗員は無事だという。 http://<wbr></wbr>jp.reut<wbr></wbr>ers.com<wbr></wbr>/articl<wbr></wbr>e/world<wbr></wbr>News/id<wbr></wbr>JPJAPAN<wbr></wbr>-127141<wbr></wbr>2009120<wbr></wbr>1

Img_5725  1300km以上沖合での海賊事案という状況、位置的にはソマリア沖というよりもセイシェル沖、もしくはケニア沖、マダガスカル沖というほうが正しい場所で、東京から熊本まで走破した寝台特急はやぶさ、が走行距離1293km、1300kmというと、京都から北海道の千歳という程度の距離だろうか。重要なのは、アフリカの角とよばれるソマリアの北部、これまで紅海からアラビア海・インド洋を結ぶアデン湾に集中していた海賊行為が、順次、ソマリア東岸のインド洋に移行しているという状況を端的に示しているという状況だ。

Img_6097_1  海上自衛隊のアデン湾海賊対処任務は、11月29日、護衛艦たかなみ、はまぎり、による第83回護衛任務(海賊対処行動第42回)を完遂、タンカー9隻、自動車専用船2隻、一般貨物船1隻の12隻を無事送り届けた。現在海上自衛隊が採っている護衛方式は、エスコート方式で、冷戦時代からシーレーン防衛の方式として研究されたもの、護衛は100%完遂されており、未だ護衛下の商船には海賊被害は1隻として出ていない。

Img_7216  しかし、海上自衛隊の護衛任務はアデン湾に限られており、アデン湾での各国海軍による警戒が今後厳しくなれば、海賊行為はアデン湾からソマリア東岸沖の広範な海域に展開する可能性が高い。1300kmとなれば、小型船舶ではなく、トロール船のような母船を用いていることとなるから、空中哨戒などにより、海賊行為に必要な梯子などを発見することが難しくなる。

Img_79391  これは言い換えれば、船団護衛方式でなければ、漁船なのか海賊船なのか見分けがつきにくい海賊への対処は難しくなる。ここまで広範な海域に展開されてしまえば、可能な限りで最大限の厳重な警戒を実施したとしても、どうしても摺り抜けられてしまうからだ。船団護衛方式をとっていれば、海賊事案に対し即座に対応できるのだが、船団を組むために時間を要するし、いちばん低速の船舶に速度を合わせなければならないなど、海運業者としては頭の痛い問題が多い。

Img_8005  他方で、海上自衛隊がソマリア派遣部隊を2隻、としているのは、インド洋対テロ海上阻止行動給油支援において派遣している補給艦1隻、護衛艦1隻との協同を考えても、遠いアラビア海、アデン湾に対して海上自衛隊のローテーションというかたちで部隊運用、訓練体系などとの両立させる上での限界、という背景があり、難しい現実がある。

Img_8130  哨戒機とともに、可能であれば護衛艦部隊をアフリカ東岸地域に展開させることが望ましいのだが、同時に日本周辺海域の防衛警備態勢を維持する必要もあることから、派遣できる規模には限界があるわけで、防衛大綱に明記された護衛艦定数を、冷戦中とまではいかないが、冷戦後の規模に戻すべきでは、と考える次第。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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