■C-130輸送機が小牧基地出発
南スーダンでの大規模戦闘、戦闘地域に邦人が取り残され、政府は自衛隊へ出動命令を発令しました。
安全と思われた首都ジュバでの戦闘により外務省は南スーダン滞在の邦人へ国外退避の危険情報を発令しましたが、滞在先から空港までの道路が戦場となり、国外脱出の機会を逸し、国際協力機構JICAの職員44名が戦闘地域へ取り残される事となりました。安倍総理大臣は今朝、国家安全保障会議NSCを招集、岸田外務大臣と中谷防衛大臣らが出席し、邦人救出へ自衛隊機を派遣する事で決定しました。
戦闘は拡大の兆候があるとの事で、PKOインド隊とPKO中国隊が襲撃され、避難民を収容している国連施設等も攻撃の対象となっており、既に中国隊とインド隊に死傷者が出ているとの報道です。この戦闘は7日、副大統領派部隊が大統領派部隊の検問所での衝突により生じた死傷者に関しての停戦協定を副大統領と大統領との間で話し合う際に、随伴した双方の部隊が偶発的に衝突し120名の戦死者を出す戦闘に展開、継続中とのこと。
C-130輸送機3機を南スーダン邦人救出任務へ派遣する方針で、本日1900時頃、最初の一機が小牧基地を離陸しました。輸送機はまず、ジブチまで前進させるとの事でジブチからウガンダ経由で南スーダンへ、という事でしょう。一旦ジブチまで展開する背景ですが、ジブチまで展開し、南スーダンのジュバ空港が着陸できる状況なのかを判断するようです。今週中にも派遣体制が整う、とのこと。
ジブチには海上自衛隊がP-3C哨戒機により編成されているソマリア沖海賊対処任務派遣航空部隊を展開中で自衛隊の航空施設が置かれています。また、ジブチ航空拠点には陸上自衛隊の基地警備部隊も派遣中で、自衛隊の中近東アフリカ方面における緊急事態の際に使用する事が可能な重要な施設となっています、一旦、此処に邦人救出任務に当たるC-130を展開させ、待機するということでしょう。
ソマリア沖海賊対処任務の支援として有している航空拠点を利用する事となりましたが、南スーダンはアラビア海に臨むジブチから隣国エチオピアを越えたその隣、スーダンの南部が独立した新興国です。自衛隊がPKO部隊を派遣する際、補給線は南スーダンの南方に隣接するウガンダのエンデべ空港を基点としていますが、相応に距離がある為、ジブチにおいて充分な整備補給を受けたうえで任務に当たる事が重要です。
KC-767空中給油輸送機やB-747政府専用機ならば直接15時間でウガンダまで展開できるのですが、今回はC-130の派遣となりました。ジブチまでC-130輸送機を用いますと、元々C-130輸送機は拠点基地から前線飛行場までの中距離を空輸する戦術輸送機ですので航続距離が大きく無く、最低でも二回給油し最低でも48時間ほどの所要時間です。時間がかかるC-130を派遣する、ということは、C-130でなければ運べない輸送防護車等を搭載して展開する、ということでしょう。
輸送防護車、今回の任務では陸上自衛隊がアルジェリアガスプラント襲撃事件を契機に導入した装甲輸送車両が、状況によっては使用される可能性があります。これは、救出に向かう空港と邦人が孤立している滞在先との間が戦闘地域となっている現状では、通常のマイクロバスで移動する事は危険が大きい為です。オーストラリア製の車両でC-130輸送機により空輸が可能、従来の専守防衛に重点を置いた国産の96式装輪装甲車と異なり車高を高く設計し地雷などの爆風に備えた設計の車両です。
自衛隊は国連南スーダン任務UNMISSとしてPKO部隊を南スーダンへ派遣していますが、今回の邦人救出任務へは使用出来る装甲車がありません、UNMISSへ展開させている装甲車両は軽装甲機動車のみ、優秀な小型装甲車ですが後部に操縦手と助手を載せますと他には後部に人員2名分の座席があるのみ、仮設席を増設すればもう少し乗車する事は出来ますが、元々人員輸送用ではありません、これが輸送防護車を用いた場合、10名が乗車できる。
JICAは、職員の国外退避へチャーター機の確保を急いでおり、仮に自衛隊が派遣する前に、JICA職員が滞在するホテルから空港までの道路に安全が確保され、戦闘が終息しジュバ空港へチャーター機が運行可能な程度に安全が確保されたならば、ジュバ空港まで職員が自力で移動し、その上でチャーター機により国外脱出が可能となるでしょう、この場合、自衛隊は邦人救出任務を実行せず済むわけですが、現時点では何とも言えないところ。
C-130には輸送防護車のほか、自衛隊の装備としてUH-60JA多用途ヘリコプターも搭載可能です、ローターを取り外し、輸送機から卸下したのちに組み立てる必要がありますが、仮に派遣されるならば航続距離が増槽装着時には1200kmを越える為、戦闘地域を避けて救出任務を展開可能です、自衛隊輸送機へのヘリコプター搭載は過去にパキスタン緊急人道支援任務においてUH-1多用途ヘリコプターを派遣した事例がありました。ただ、展開先での整備支援を考えた場合、時間を要するかもしれません。
PKO自衛隊派遣部隊の安全についてですが、官房長官発表では、現在のところ宿営地には危険が迫っている状況ではない、との事でした。現在とは本日午後の時点の発表で、戦闘の激化を受け自衛隊は宿営地で待機態勢をとり、派遣部隊の施設作業任務等は現在全面的に中断しているようです。しかし、自衛隊宿営地内には数百名を超える避難民がPKO部隊へ保護を求めて収容されているとのこと。
戦闘は海外報道を見る限り、T-72戦車やT-62戦車、Mi-24攻撃ヘリコプター、ZPU-4高射機関砲等が戦闘に使用されており、この他、火砲などが用いられ非戦闘員を含めた死者数は230名を越えているとのことです。こうした事態は、安全保障協力法制がまさに想定していたもので、野党では自衛隊のアフリカ地域での活動反対などを掲げていました、まさに自衛官が危機に臨む瞬間ですが、国内報道は参院選報道と都知事選報道ばかり、この温度差には奇妙な印象が禁じ得ません。
現在国連安保理は緊急会合を開き対応策を検討中です。ここでPKO部隊が安保理決議で国連防護軍へ改編された場合、自衛隊はどう対応するのか、増派を求められることになった場合、まさか施設中隊を増派する訳にもいかず、元々政情不安であり日本本土から距離が大きい地域でのPKOは民主党野田内閣時代の参加決定でしたが、邦人保護、宿営地での非戦闘員保護、戦闘激化での支援要請対応、我が国の対応に世界が注目しています。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
南スーダンでの大規模戦闘、戦闘地域に邦人が取り残され、政府は自衛隊へ出動命令を発令しました。
安全と思われた首都ジュバでの戦闘により外務省は南スーダン滞在の邦人へ国外退避の危険情報を発令しましたが、滞在先から空港までの道路が戦場となり、国外脱出の機会を逸し、国際協力機構JICAの職員44名が戦闘地域へ取り残される事となりました。安倍総理大臣は今朝、国家安全保障会議NSCを招集、岸田外務大臣と中谷防衛大臣らが出席し、邦人救出へ自衛隊機を派遣する事で決定しました。
戦闘は拡大の兆候があるとの事で、PKOインド隊とPKO中国隊が襲撃され、避難民を収容している国連施設等も攻撃の対象となっており、既に中国隊とインド隊に死傷者が出ているとの報道です。この戦闘は7日、副大統領派部隊が大統領派部隊の検問所での衝突により生じた死傷者に関しての停戦協定を副大統領と大統領との間で話し合う際に、随伴した双方の部隊が偶発的に衝突し120名の戦死者を出す戦闘に展開、継続中とのこと。
C-130輸送機3機を南スーダン邦人救出任務へ派遣する方針で、本日1900時頃、最初の一機が小牧基地を離陸しました。輸送機はまず、ジブチまで前進させるとの事でジブチからウガンダ経由で南スーダンへ、という事でしょう。一旦ジブチまで展開する背景ですが、ジブチまで展開し、南スーダンのジュバ空港が着陸できる状況なのかを判断するようです。今週中にも派遣体制が整う、とのこと。
ジブチには海上自衛隊がP-3C哨戒機により編成されているソマリア沖海賊対処任務派遣航空部隊を展開中で自衛隊の航空施設が置かれています。また、ジブチ航空拠点には陸上自衛隊の基地警備部隊も派遣中で、自衛隊の中近東アフリカ方面における緊急事態の際に使用する事が可能な重要な施設となっています、一旦、此処に邦人救出任務に当たるC-130を展開させ、待機するということでしょう。
ソマリア沖海賊対処任務の支援として有している航空拠点を利用する事となりましたが、南スーダンはアラビア海に臨むジブチから隣国エチオピアを越えたその隣、スーダンの南部が独立した新興国です。自衛隊がPKO部隊を派遣する際、補給線は南スーダンの南方に隣接するウガンダのエンデべ空港を基点としていますが、相応に距離がある為、ジブチにおいて充分な整備補給を受けたうえで任務に当たる事が重要です。
KC-767空中給油輸送機やB-747政府専用機ならば直接15時間でウガンダまで展開できるのですが、今回はC-130の派遣となりました。ジブチまでC-130輸送機を用いますと、元々C-130輸送機は拠点基地から前線飛行場までの中距離を空輸する戦術輸送機ですので航続距離が大きく無く、最低でも二回給油し最低でも48時間ほどの所要時間です。時間がかかるC-130を派遣する、ということは、C-130でなければ運べない輸送防護車等を搭載して展開する、ということでしょう。
輸送防護車、今回の任務では陸上自衛隊がアルジェリアガスプラント襲撃事件を契機に導入した装甲輸送車両が、状況によっては使用される可能性があります。これは、救出に向かう空港と邦人が孤立している滞在先との間が戦闘地域となっている現状では、通常のマイクロバスで移動する事は危険が大きい為です。オーストラリア製の車両でC-130輸送機により空輸が可能、従来の専守防衛に重点を置いた国産の96式装輪装甲車と異なり車高を高く設計し地雷などの爆風に備えた設計の車両です。
自衛隊は国連南スーダン任務UNMISSとしてPKO部隊を南スーダンへ派遣していますが、今回の邦人救出任務へは使用出来る装甲車がありません、UNMISSへ展開させている装甲車両は軽装甲機動車のみ、優秀な小型装甲車ですが後部に操縦手と助手を載せますと他には後部に人員2名分の座席があるのみ、仮設席を増設すればもう少し乗車する事は出来ますが、元々人員輸送用ではありません、これが輸送防護車を用いた場合、10名が乗車できる。
JICAは、職員の国外退避へチャーター機の確保を急いでおり、仮に自衛隊が派遣する前に、JICA職員が滞在するホテルから空港までの道路に安全が確保され、戦闘が終息しジュバ空港へチャーター機が運行可能な程度に安全が確保されたならば、ジュバ空港まで職員が自力で移動し、その上でチャーター機により国外脱出が可能となるでしょう、この場合、自衛隊は邦人救出任務を実行せず済むわけですが、現時点では何とも言えないところ。
C-130には輸送防護車のほか、自衛隊の装備としてUH-60JA多用途ヘリコプターも搭載可能です、ローターを取り外し、輸送機から卸下したのちに組み立てる必要がありますが、仮に派遣されるならば航続距離が増槽装着時には1200kmを越える為、戦闘地域を避けて救出任務を展開可能です、自衛隊輸送機へのヘリコプター搭載は過去にパキスタン緊急人道支援任務においてUH-1多用途ヘリコプターを派遣した事例がありました。ただ、展開先での整備支援を考えた場合、時間を要するかもしれません。
PKO自衛隊派遣部隊の安全についてですが、官房長官発表では、現在のところ宿営地には危険が迫っている状況ではない、との事でした。現在とは本日午後の時点の発表で、戦闘の激化を受け自衛隊は宿営地で待機態勢をとり、派遣部隊の施設作業任務等は現在全面的に中断しているようです。しかし、自衛隊宿営地内には数百名を超える避難民がPKO部隊へ保護を求めて収容されているとのこと。
戦闘は海外報道を見る限り、T-72戦車やT-62戦車、Mi-24攻撃ヘリコプター、ZPU-4高射機関砲等が戦闘に使用されており、この他、火砲などが用いられ非戦闘員を含めた死者数は230名を越えているとのことです。こうした事態は、安全保障協力法制がまさに想定していたもので、野党では自衛隊のアフリカ地域での活動反対などを掲げていました、まさに自衛官が危機に臨む瞬間ですが、国内報道は参院選報道と都知事選報道ばかり、この温度差には奇妙な印象が禁じ得ません。
現在国連安保理は緊急会合を開き対応策を検討中です。ここでPKO部隊が安保理決議で国連防護軍へ改編された場合、自衛隊はどう対応するのか、増派を求められることになった場合、まさか施設中隊を増派する訳にもいかず、元々政情不安であり日本本土から距離が大きい地域でのPKOは民主党野田内閣時代の参加決定でしたが、邦人保護、宿営地での非戦闘員保護、戦闘激化での支援要請対応、我が国の対応に世界が注目しています。
北大路機関:はるな くらま
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