北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

政府、南スーダン邦人救出へ自衛隊派遣命令!首都ジュバで大規模戦闘続きJICA職員孤立

2016-07-11 23:24:21 | 国際・政治
■C-130輸送機が小牧基地出発
 南スーダンでの大規模戦闘、戦闘地域に邦人が取り残され、政府は自衛隊へ出動命令を発令しました。

 安全と思われた首都ジュバでの戦闘により外務省は南スーダン滞在の邦人へ国外退避の危険情報を発令しましたが、滞在先から空港までの道路が戦場となり、国外脱出の機会を逸し、国際協力機構JICAの職員44名が戦闘地域へ取り残される事となりました。安倍総理大臣は今朝、国家安全保障会議NSCを招集、岸田外務大臣と中谷防衛大臣らが出席し、邦人救出へ自衛隊機を派遣する事で決定しました。

 戦闘は拡大の兆候があるとの事で、PKOインド隊とPKO中国隊が襲撃され、避難民を収容している国連施設等も攻撃の対象となっており、既に中国隊とインド隊に死傷者が出ているとの報道です。この戦闘は7日、副大統領派部隊が大統領派部隊の検問所での衝突により生じた死傷者に関しての停戦協定を副大統領と大統領との間で話し合う際に、随伴した双方の部隊が偶発的に衝突し120名の戦死者を出す戦闘に展開、継続中とのこと。

 C-130輸送機3機を南スーダン邦人救出任務へ派遣する方針で、本日1900時頃、最初の一機が小牧基地を離陸しました。輸送機はまず、ジブチまで前進させるとの事でジブチからウガンダ経由で南スーダンへ、という事でしょう。一旦ジブチまで展開する背景ですが、ジブチまで展開し、南スーダンのジュバ空港が着陸できる状況なのかを判断するようです。今週中にも派遣体制が整う、とのこと。

 ジブチには海上自衛隊がP-3C哨戒機により編成されているソマリア沖海賊対処任務派遣航空部隊を展開中で自衛隊の航空施設が置かれています。また、ジブチ航空拠点には陸上自衛隊の基地警備部隊も派遣中で、自衛隊の中近東アフリカ方面における緊急事態の際に使用する事が可能な重要な施設となっています、一旦、此処に邦人救出任務に当たるC-130を展開させ、待機するということでしょう。

 ソマリア沖海賊対処任務の支援として有している航空拠点を利用する事となりましたが、南スーダンはアラビア海に臨むジブチから隣国エチオピアを越えたその隣、スーダンの南部が独立した新興国です。自衛隊がPKO部隊を派遣する際、補給線は南スーダンの南方に隣接するウガンダのエンデべ空港を基点としていますが、相応に距離がある為、ジブチにおいて充分な整備補給を受けたうえで任務に当たる事が重要です。

 KC-767空中給油輸送機やB-747政府専用機ならば直接15時間でウガンダまで展開できるのですが、今回はC-130の派遣となりました。ジブチまでC-130輸送機を用いますと、元々C-130輸送機は拠点基地から前線飛行場までの中距離を空輸する戦術輸送機ですので航続距離が大きく無く、最低でも二回給油し最低でも48時間ほどの所要時間です。時間がかかるC-130を派遣する、ということは、C-130でなければ運べない輸送防護車等を搭載して展開する、ということでしょう。

 輸送防護車、今回の任務では陸上自衛隊がアルジェリアガスプラント襲撃事件を契機に導入した装甲輸送車両が、状況によっては使用される可能性があります。これは、救出に向かう空港と邦人が孤立している滞在先との間が戦闘地域となっている現状では、通常のマイクロバスで移動する事は危険が大きい為です。オーストラリア製の車両でC-130輸送機により空輸が可能、従来の専守防衛に重点を置いた国産の96式装輪装甲車と異なり車高を高く設計し地雷などの爆風に備えた設計の車両です。

 自衛隊は国連南スーダン任務UNMISSとしてPKO部隊を南スーダンへ派遣していますが、今回の邦人救出任務へは使用出来る装甲車がありません、UNMISSへ展開させている装甲車両は軽装甲機動車のみ、優秀な小型装甲車ですが後部に操縦手と助手を載せますと他には後部に人員2名分の座席があるのみ、仮設席を増設すればもう少し乗車する事は出来ますが、元々人員輸送用ではありません、これが輸送防護車を用いた場合、10名が乗車できる。

 JICAは、職員の国外退避へチャーター機の確保を急いでおり、仮に自衛隊が派遣する前に、JICA職員が滞在するホテルから空港までの道路に安全が確保され、戦闘が終息しジュバ空港へチャーター機が運行可能な程度に安全が確保されたならば、ジュバ空港まで職員が自力で移動し、その上でチャーター機により国外脱出が可能となるでしょう、この場合、自衛隊は邦人救出任務を実行せず済むわけですが、現時点では何とも言えないところ。

 C-130には輸送防護車のほか、自衛隊の装備としてUH-60JA多用途ヘリコプターも搭載可能です、ローターを取り外し、輸送機から卸下したのちに組み立てる必要がありますが、仮に派遣されるならば航続距離が増槽装着時には1200kmを越える為、戦闘地域を避けて救出任務を展開可能です、自衛隊輸送機へのヘリコプター搭載は過去にパキスタン緊急人道支援任務においてUH-1多用途ヘリコプターを派遣した事例がありました。ただ、展開先での整備支援を考えた場合、時間を要するかもしれません。

 PKO自衛隊派遣部隊の安全についてですが、官房長官発表では、現在のところ宿営地には危険が迫っている状況ではない、との事でした。現在とは本日午後の時点の発表で、戦闘の激化を受け自衛隊は宿営地で待機態勢をとり、派遣部隊の施設作業任務等は現在全面的に中断しているようです。しかし、自衛隊宿営地内には数百名を超える避難民がPKO部隊へ保護を求めて収容されているとのこと。

 戦闘は海外報道を見る限り、T-72戦車やT-62戦車、Mi-24攻撃ヘリコプター、ZPU-4高射機関砲等が戦闘に使用されており、この他、火砲などが用いられ非戦闘員を含めた死者数は230名を越えているとのことです。こうした事態は、安全保障協力法制がまさに想定していたもので、野党では自衛隊のアフリカ地域での活動反対などを掲げていました、まさに自衛官が危機に臨む瞬間ですが、国内報道は参院選報道と都知事選報道ばかり、この温度差には奇妙な印象が禁じ得ません。

 現在国連安保理は緊急会合を開き対応策を検討中です。ここでPKO部隊が安保理決議で国連防護軍へ改編された場合、自衛隊はどう対応するのか、増派を求められることになった場合、まさか施設中隊を増派する訳にもいかず、元々政情不安であり日本本土から距離が大きい地域でのPKOは民主党野田内閣時代の参加決定でしたが、邦人保護、宿営地での非戦闘員保護、戦闘激化での支援要請対応、我が国の対応に世界が注目しています。

北大路機関:はるな くらま
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南スーダン内戦再危機 首都ジュバで停戦後最大規模戦闘、国連南スーダン任務へ自衛隊派遣中

2016-07-10 22:55:42 | 国際・政治
■自衛隊の安全をどう確保するか
 新国家建設支援として自衛隊がPKO部隊を派遣させている南スーダンの首都ジュバにおいて大規模な戦闘が発生、戦闘員だけで双方に150名以上の戦死者が出ました。

 今回の事態を受け外務省は首都以外の地域へ退避勧告、首都圏へ退避準備勧告を発令、イギリスなど欧米諸国は退避勧告を出しました。戦闘はキール大統領とマシャール副大統領の会合の際に双方の陣営に所属する警備隊が銃撃戦に展開し、銃撃戦から火砲など大型火器が使用される規模の戦闘へ展開しました。戦闘はまず大統領府付近での戦闘から始まり、大統領府へ増援に向かう部隊と、これを阻止しようとする部隊との間での車両が加入しての戦闘がジュバ市内数カ所で同時に展開、キール大統領とマシャール副大統領は今回の戦闘を不幸な接触であるとして遺憾の意を示すと共にジュバ市内全域に事実上の戒厳令を布告しました。

 ジュバ市内はこれまでそれほど戦闘が激しく展開する事はありませんでしたが、今回は大統領府付近が戦場となっています、自衛隊のPKO部隊は重装備を携行していませんが、場合によっては戦闘ヘリコプターや機甲部隊の増派を真剣に検討する必要が出てくるかもしれません、こういいますのも今回のPKO派遣は国連安保理決議に基づく国連憲章七条措置として実施されているため、必要に応じ平和維持任務から平和執行任務へ転換する可能性が決議の時点で含まれていますので、自衛隊派遣部隊がその安全を確保し、且つ人道的側面から必要な措置を求められる可能性は、充分あるでしょう。

 南スーダンはスーダン内戦を経て、長期間にわたる戦闘の末に国民投票によりスーダンより独立し五年がたつ新興国です。スーダンはダルフール紛争に伴う民族浄化等人道問題から欧米の経済制裁の対象となっていますが、ここから独立したスーダンへは国連が新たな国家建設の支援として国連平和維持軍派遣を決定、独立に際し当時の民主党政権は自衛隊派遣を決定しました。しかし、統治機構の枠組み作りへ齟齬があり、結果キール大統領派とマシャール副大統領派との間で2013年に大規模な内戦が発生するに至ります。

 国連スーダン任務UNMISS,自衛隊派遣は独立に先んじ、野田佳彦内閣総理大臣と潘基文国連事務総長との間で派遣が決定、内陸部であり更に戦闘が発生する蓋然性の高い地域への派遣は、隣国ウガンダのエンデべ空港へ自衛隊調整指揮所を置き南スーダンへ部隊を派遣するという慎重な姿勢を執り、その上で支援部隊、施設部隊、調整部隊、補給支援部隊、以下大隊規模の部隊が派遣されることとなり、派遣部隊は車両160両と89式小銃を携行すると共に不測の事態に備え軽装甲機動車とMINIMI分隊機銃等を装備し派遣されています。

 新国家建設という試みに当たる南スーダンは、その国内に石油資源の埋蔵が確認されていた為、その国家運営は当時の石油価格高騰に合わせ順調に進展する見通しがありました。しかし、石油資源を掘削する費用と運搬する費用について内陸国である南スーダンは良好な条件を有しているとは言い難く、仮に新規に森林と山間部を開発し石油掘削リグと石油パイプラインを建設する場合、費用が採算性に見合わないとの厳しい現実が突き付けられ、其処に石油価格の暴落が追い打ちをかける事となりました。

 軍事力によりこの難題を解決しようとしたキール大統領は、隣国スーダンへ戦車部隊を侵攻させ国境付近の油田を制圧する強硬手段に出ました、これは南スーダン国内にはPKO部隊が駐留している為、人間の盾とする事でスーダン軍に対し有利に戦闘を展開させようとした悪辣極まりない蛮行でしたが、スーダンは人権抑圧国であるため、石油を欧米や日本が取引しない一方で、こうした諸国と積極的に資源外交を展開する中国政府が強力な98式戦車を供給していたため、南スーダン軍のT-72戦車は太刀打ちできず、大打撃を受け撤退に追い込まれています。

 この攻撃を受け、スーダンのバシール大統領は南スーダンを敵国として宣言し、南スーダン与党である人民解放戦線への敵対政策を示しています。内戦勃発はこの直後の2013年で、突如解任されたマシャール副大統領が説明を求めたものの拒否され、副大統領側近有力者が武装蜂起、南スーダンクーデター未遂事件へと発展しました。南スーダン軍はその鎮圧に向かいましたが、この際に戦闘が激化、PKOインド隊の宿営地への避難民を狙った戦闘部隊が流入し戦死者が出ている。

 戦闘に際しアメリカ領事館職員救出に向かった海兵隊航空機が攻撃を受け、更に反乱軍にPKO韓国隊宿営地が包囲され、自衛隊PKO派遣部隊が緊急として弾薬を韓国軍へ補給するほどの緊迫化した事態となっています、戦闘は一年以上続き、アフリカIGAD政府間開発機構の調停により2015年に漸く停戦への道筋で合意、今年四月にマシャール元副大統領が副大統領職へ復職し停戦となったところ。暴騰ン微記しました戦闘は、こののちの会合に際し始まったもので、実際のところ停戦合意後も戦闘は収束していません。自衛隊のPKO任務は今年10月まで、となっています、部隊の安全確保の観点から必要な措置を採る為の重装備の増派、検討しておくべきやもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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特集【第24回参議院選挙と安全保障】第八回・・・危機管理、国際テロと巨大災害への対応

2016-07-09 23:20:28 | 北大路機関特別企画
■参院選投票日前日
 ジュールベルヌが思い描いた世界を無着陸横断可能な航空機が一般化した時代からおおよそ半世紀、世界は故人となられたアルビントフラーが予見したとおり高度に情報でむすばれ、人々の行動範囲はアーサーCクラークが予見したよりも早くに全地球規模へと発展しました、ただ、HGウェルズが予想したようには世界大戦後の世界は調和に向かわず、今日に至ります。

 危機管理という視点、安全保障という視点から参院選においてわが国民の代表を選ぶ上での幾つかの視点を示してきましたが、明日は参院選投票日当日です。そこで前日である今回はテロ対策や大規模災害、との視点から考えてみましょう。危機管理では従来型の武力紛争という体系を越えて従来の法制下では対応が難しい実情が生起しています。実際問題として、日本が世界に置いて活動するためには邦人の活動範囲は世界規模に展開している一方、世界規模でのテロの脅威は広範化している為、どのような地域において邦人が危機に曝されるかは容易に判断する事は出来ません。

 一方、テロリズムの脅威は一旦政情が安定していると考えられる地域においても突如として情勢が悪化し、邦人が孤立する可能性がある為、邦人救出へ独立した航空作戦能力と恒常的な戦闘任務へ対応できる集団として、自衛隊の海外での任務をどの程度柔軟性を持たせるか、という視点が必要となります。正直なところ、日本が仮に途上国であるので救出する能力がない、との事情があるならば別ですが、能力と国力があるのに対し、自国民の生命が左右される状況において救出へ消極的施策を摂るならば、日本という国家は平和という題目を掲げた人命軽視政策を執る国であるとの印象を世界に示してしまうでしょう。

 邦人救出という命題を前に安易に自衛隊の海外での活動を認めない、という施策を突き通しますと、海外において邦人が孤立した場合、戦闘地域へ突入し救出する能力、更に、戦闘に曝される状況下において責任を以て部隊を投じ、且つ過酷な運命とも直面しなければならない状況下において、その指揮系統を維持できる集団は自衛隊を置いてほかになく、危機に際しての自衛隊の行動に責任を持つ事が出来る施策を呈示できる政党が必要です。

 大規模災害への対処ですが、東日本大震災とこれに続く福島第一原子力発電所事故、2011年は災厄の一年でした。実際問題として、伊勢湾台風や阪神大震災という巨大災害は戦後前だけを向いて進んだ我が国民に心の傷を残すほどの被害を及ぼしましたが、東日本大震災とその後の数十時間、数日間、十数日間、明日日本という国は残り得るのか、という、見知らぬ明日、が大きく将来を閉ざしている事に本能的危機を感じさせられたものでした、実際問題、第二次世界大戦後長きに渡り、先進国で一日で数万が犠牲となりその数倍の人命が危機に曝された事態はありません。

 南海トラフ連動地震、東日本大震災の被害は今なお戦慄すべき規模であり、原発事故は今日も現在進行中ですが、南海トラフ連動地震の危機は、政府想定では死者数で東日本大震災の十六倍、東京名古屋大阪という日本の経済中枢であり人口中枢が甚大な被害を受け、東京湾、相模湾、駿河湾、遠州灘、伊勢湾、紀伊水道、尾坂湾、播磨灘、土佐湾、豊後水道、沿岸部全てが津波に襲われ、小田原、静岡、浜松、名古屋、津、四日市、和歌山、高知、徳島、宮崎、主要都市だけでこれだけが直撃を受けます、由良水道を越える津波は大阪を襲い、豊後水道を突破した津波は広島に被害を及ぼします。

 巨大地震への対応は、防災と減災という施策を公約に様々な政党が盛り込みますが、平時の法律が全く機能しない状況が生起しますので、状況が鎮静化した際に法的責任を受ける覚悟で、超法規的措置を執る覚悟が求められます。もちろん、平時の法律に依拠した施策を饗応的に進める事も出来ますが、この場合は不作為による死者数が想像を絶する規模となります、もちろん、不作為に甘んじた事で、想定通りの犠牲者が生じた場合でも、選挙民により選ばれた政治家によるものですので、主権者には政治家を選んだ責任というもの、受け入れなければならない部分もあるでしょう。

 危機に際し、平時の認識を捨て必要な措置を執る事が出来るのか、右往左往し必要以上の措置で現場を混乱させるのか、これらは主権者が選ぶ政治家の施策によるものです。さて、今回までに八回にわたり、政党の公約をどう云った視点から見るかを、一つの視点から踏み込んで提示してみました、結局、政治家の失政失策は選んだ主権者の利益不利益に直面する重要な課題です。今回の参院選から有権者が20歳以上から18歳以上へと大きく広がりました、参院議員、よく考えたうえで、主権者の権利を行使するように、したいものですね。

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平成二十八年度七月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2016.07.09/10)

2016-07-08 21:31:17 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 台風一号が台湾からその猛威を振るう様子が伝わり、南九州からは記録的な豪雨の報道が続く中、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 今週末の自衛隊関連行事ですが、例年この時期に実施されます富士学校開庁記念富士駐屯地祭が一週間前倒しとなり先日開催されました。阪神基地隊サマーフェスタ2016のみが行われます。この他、参院選が行われますのでこちらへの配慮、という事も含まれるのでしょうか。なお、阪神基地隊サマーフェスタ2016は、土曜日と日曜日と両日行われます。

 阪神基地隊サマーフェスタ2016、神戸市の海上自衛隊阪神基地の一般公開です。補給艦ときわ、護衛艦うみぎり、護衛艦とね、更に掃海艇など艦艇5隻の一般公開が実施され、交通船による港内体験乗船、呉音楽隊による音楽演奏、陸上自衛隊と航空自衛隊の装備品展示などが予定されていまして、JR摂津本山からシャトルバスが運行されるとの事です。

 さて、旭川のホッケ刺身、帯広の牛肉鮨、御殿場の天麩羅、千歳のジンギスカン、佐世保の佐世保バーガー、江田島の牡蠣、舞鶴のホルモンうどん、横須賀のカレー、浜松の餃子、東京駅の牛タン、まあ、いろいろな美味しい物、駐屯地を廻りますと、こんなにおいしいものが、と驚くことは多々あるものです、毎回思うのは、遠くに来たからには美味い物を、と。

 しかし、美味しい物を探すには情報が必要でして、ぶらりいい旅いい酒、酒場放浪記、等を参考に散策することも確かにいいのですが、実際には名店ばかり行きあたる、ということはありません、その場合なのですが、やはり隊員さん情報を、例えば装備品展示の際の雑談で聞いてみる事が有用です、さすがは自衛隊、安くてうまい店情報収集も抜かりない。

 そんななかですが、駐屯地祭は日曜日に行われる場所が多いので、いざ足を運んでいきますと、日曜日休業のお店、かなり遅くから開くお店、進められた時間帯には営業していない、という事もあったりします、例えば富士地区、馬刺しが美味しいという話なのだけれどもその店昼間に馬刺しは提供せず、遅くまでいると終電が、となったりもしました。それでも、いろいろな美味しいものの生の情報は、旅を思い出深い事と仕上げてくれるでしょう。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・7月9日・10日:阪神基地隊サマーフェスタ2016…http://www.mod.go.jp/msdf/hanshin/hanki_news/week/2016sama-.html

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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特集【第24回参議院選挙と安全保障】第七回・・・公約の矛盾、TPP食糧安全保障と反原発政策

2016-07-07 22:52:18 | 北大路機関特別企画
■公約矛盾見極める視点が必要
 公約の矛盾はないか、それはは未熟な政党であることを示す具体例です、そこでTPP食糧安全保障と反原発政策という視点から見てみましょう。

 今回の参議院選挙において経済政策や安全保障協力法制等の筆頭の論点と共にならんで一つの論点となっているのはTPP環太平洋包括協定、そして原子力問題についてです。ただ、ここで考えなければならないのは政策提案と公約に矛盾点が無いか、という事です。政策矛盾の最たる事例が減税と歳出拡大というものですが、この他にもTPPと原子力問題などはその一例と云えます。実のところ、この二つの要素はシナジー効果をもつ相関要素があり、一方の施策を具現化した場合、一定以上の政策を採ることでもう一方の政策へスピルオーバーし、方向性を確定してしまう分野でもあるのです。

 公約に矛盾はないか。TPP反対の議論は野党連合を中心に多くみられる施策で、交渉過程が不透明である、としたもの、食料安全保障の観点から反対としたもの等が挙げられます。交渉過程が不透明であるとの指摘ですが、これについてはTPP枠組みの交渉プロセス画定の時点で、参画を不透明としていました時代の政権が責を負うものですので、現在野党となっている旧与党は、果たして合意形成までの交渉を秘匿するという枠組み形成を放置した訳ですので、今更不透明性を事由に反対することは、矛盾しているでしょう。

 政策の相互関係に配慮して公約を立てる事が出来ない政党には政権運営能力はありません、政治家ではなく理想化の集まりであり実務へ反映できない為です。この部分で、食料安全保障ですが、シーレーンが確実に確保されるのであれば、実のところ問題となりません、たとえばイギリスは第二次世界大戦中において食糧自給率が三割程度でしかなく、このためシーレーン防衛が国家存続を左右する重要要件となりました。しかし、大量の護衛空母、護衛駆逐艦を建造し、アメリカからも大量に輸入、その費用支払いは実に1997年までかかったという国費を投じてですが、シーレーン防衛に成功、食糧自給率は防衛力によって解決できることを示しました。

 TPP反対に食料自給率を呈示している事例では、民進党は聖域とされた主要な農産品5項目の交渉対象化を理由に反対していますし、共産党は関税撤廃と農産物輸入の急増が食料自給率低下させるとの視点から反対、社民党も農産物重要5項目の3割が無関税となる点が食料自給率の観点から反対しています。ただ、原子力政策では共産党は即時原発ゼロと再稼働反対を、社民党も原発稼働を直ちにゼロにとの主張、民進党だけは過去の2030年代原発稼働ゼロ政策を民主党から民進党へ転換した際、原発に頼らない社会を目指すとしました。

 有権者に受けが良い政策だけを列挙するだけでは、実現する事は出来ない、若しくは実現する事で失われる他の利益の方が大きい。日本も海上防衛力を一定規模の水準で整備し、シーレーン防衛を持続して遂行できるならば、食糧自給率は問題となりません、が、シーレーン防衛の実行には海洋哨戒航空機、水上戦闘艦、またシーレーンに直接航空攻撃が加えられるならば航空防衛力が重要となります、この部分で食糧自給率を高める施策をとるならば、防衛力の増強に歯止めをかけられるとの視点は成り立つかもしれません、が、このシーレーン防衛は食料安全保障と同時にエネルギー安全保障と密接な相関関係を有していることを忘れるべきではありません。

 二つの相反する政策を並列させてはそもそも実現させるつもりがないか、その矛盾転移気付かない集団である、若しくは党内の意見調整すらままならない集団だ、といえるでしょう。ここで視点を戻しますと、エネルギー安全保障、我が国は国内に有力な石油資源を発する油田をもちませんし、天然ガスについては南西諸島近海に埋蔵が1970年代に確認されましたが、その直後から大陸からの軍事圧力にさらされることとなり、この天然ガス開発には親中国政策を掲げた民主党政権下でも具体化しませんでした。

 このため、現実的に可能なエネルギー持久政策は、ととわれれば、ウラン燃料と再生核燃料であるMOX燃料を用いる原子力政策以外は有効ではなく、再生可能エネルギーなどは国内の需要を完全に担うには現在の発電能力では全く現実的ではないことが挙げられ、その上でエネルギーを自給自足するには原子力政策を暫定的でも推進せざるを得ないことに気づかされる。再生可能エネルギーの能力向上に期待したいところですが、これを現実の政策として受け入れられるかと問われれば、巨大駅階段に振動発電装置、全世帯風呂釜を発電用に転用、あまり現実的ではない施策を集積していますので、短期的な政策として反原発を呈示する政党、例えば今世紀中の代替エネルギー開発と次世紀までの原発廃止、というような施策ではなく、即座の停止、とされますと説得力ある代案を出すべきでしょう。

 現実問題としまして、エネルギー安全保障政策の裏付けなくして食糧自給率を完全自給可能となった場合でも、エネルギーが枯渇すれば、その食料を都市部など人口密集地へ輸送する手段がありません、石炭燃料を再度開発し輸送用に蒸気機関車を整備稼働状況へ復帰、牛馬の輸送用への転用、農村部への大規模食料疎開、どれも現実的施策とはなりません、シーレーン防衛の維持により食糧自給率へ固執せずとも国家を維持できる可能性は開けるのですが、同時にシーレーン防衛を放棄し食糧自給に邁進した場合でもその食糧を輸送するにはエネルギーを輸送しなければならないことにはかわりありません。

 このあたり、一つをたてれば一つが立たない、シナジー効果とスピルオーバーの問題が具現化します。TPP離脱を提唱し、その上で食糧自給率を背景とする第一次産業保護を掲げる政党は、同時にエネルギー自給政策へ再生可能エネルギーが普及を完了する少なくとも今世紀いっぱいまでは原子力政策を進める施策を掲げなければ、政策として矛盾してしまう、こうした視点から、原発論争とTPPにシーレーン防衛を加えた政策論争を、みてゆく必要があるでしょう。原子力政策と食料自給率からのTPP反対は両立しない。これは一例ですが、公約を見たならば、矛盾する政策は無いか。支持政党を選挙において選ぶ際に、一方の政策を強調すれば必然的にもう一方が成り立たなくなる施策を盛り込んでいないのか、見極めなければなりません。

北大路機関:はるな くらま
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特集【第24回参議院選挙と安全保障】第六回・・・『その時』に防衛費負担増を政策化できるか?

2016-07-06 22:55:15 | 北大路機関特別企画
■防衛力整備増大を説明できるか
 危険がある中で対策を怠り、危険が具現化した際に責任から逃避する政治が行われるならば、その国民は不幸です。さて、今回は『その時』が来た場合に防衛費負担増を政策化できるか、という視点から。

 国民に我が国の防衛に関する現実を知らせ、且つ防衛力負担という厳しい現実を制作へ反映させることはできるのか、これは安全保障協力法制廃止を掲げる野党連合と安全保障協力法制を成立させた連立与党ともに突き付けられる厳しい現実です。今週、NATO北大西洋条約機構は冷戦後最大の防衛力増強計画を発表、ウクライナ内戦とクリミア併合を受けてのロシアとの関係悪化に対する必要な措置を政策へとして具体化しました。我が国では顕在化した懸念すべき脅威に対し、具体的政策をどう示すのか、と。

 南西諸島の防空、中国機が一日当たり二回の頻度で我が国防空識別圏へ侵入し、その中でも従来の中国空軍の偵察機に代わり戦闘機による接近事案が増大、この中でも同じ一回二回という回数に関わらず、複数編隊に分かれての接近事案が頻発している為、航空自衛隊は従来の要撃機二機による緊急発進では対応出来ず、四機六機と那覇基地から離陸させ対処しなければなりません、正直、此処までの状況の変化は想定外と云わざるを得ません。

 冷戦時代のソ連軍でもここまで露骨な行動をとったのは1950年代まで、大規模演習を実施する場合においては例外的な事例があったとは聞きますが、今回の様に異常な防空識別圏への侵入回数が三か月間もの期間に渡り常態化する事はありませんでした。更に懸念すべき状況は、現在の高頻度の緊急発進、戦闘機による我が国要撃機への示威的な行動が鎮静化する見通しが、現時点のところ全く見通しがたっていない、ということでしょう。

 そして、この異常な対領空侵犯措置任務の増大は、冷戦期における最も緊張度が高かった時期と同程度に達している一方、我が国は要撃機で70機当時より少なく、そして当時は補助戦闘機として使用可能である高等練習機が60機配備されており、有事の際の航空防衛力には実に130機もの差があります。幸い、現代の自衛隊には航空教育集団に戦闘機戦闘訓練用の飛行隊があり最後の際には転用できますが、これを云いますと冷戦時代の自衛隊には機関銃と爆装が可能な中等練習機が一定数配備されていました。

 冷戦後の平安な時代は終わりつつあり、また始まる厳しい緊張の時代へ戻りつつある、こうした実情を受け入れ、国土と国民を戦災の災禍に曝さず済むよう防衛政策について必要な措置を取るうえで必要な予算措置を国民に対し説明し、且つその負担の同意を合意形成至らしめる事が出来る政権であるか。防衛力を縮小し福祉に充てるという政策提案は簡単にできるものですが、提案したものの国土が戦場となった場合の国民負担はその比ではありません、だからこそ、この難題を調整できる能力が政党には求められる。

 防衛費を減らせ、しかし、他国との防衛協力は行うな、米軍基地を減らして日本だけで対応しろ、武器を輸出すれば安くなるとしても輸出するな、装備が足らなくとも徴兵制は考えるな、こうした矛盾を提唱する政党には日本の将来は任せられません。それは反原発政策と原発再稼働を、医療費圧縮と医療費負担軽減を、同時に進める施策を掲げる事と変わりない為です。現与党は一国での対応に限界があるが故の集団的自衛権行使の施策、予算圧縮下での装備調達へ共同開発と輸出を、掲げていますが野党連合はどうなのでしょうか。

 防衛費を無計画に増大しろ、という政策提案についても、やはり簡単に同意できません、無計画な施策は短期的に印象を付けた後、長期的に継続できません。当然ですが、財政的な裏付けなしに防衛力を無制限に拡大しようという政党にも歳入以上の歳出を呈示する訳ですから、やはり任せる事は出来ない、そこで主権者である選挙民が投票行動に先んじて公約を可能な限り理解し、その提示する政策を見極めなければならない。

 参院選は日本国憲法施政下では政権を選ぶ選挙ではありません、が、野党連合を形成する民進党と共産党に社民党は、同盟国と安全保障における協力を強化する、日本国の領域外において本土への具体的な被害が及ぶ可能性を抑制しようとする、との安全保障協力法制への反対を示していますが、その上で一国で防衛負担に立ち向かう必要が生じた場合、どうするべきか、万一の際に備えを怠り、あの東日本大震災の際に当時の民主党政権が乱発したような、想定外、という言葉に逃避しない政党を見極め、投票したいものです。

北大路機関:はるな くらま
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富士学校富士駐屯地創設62周年記念行事(2016-07-03) X-20撮影速報

2016-07-05 21:36:49 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■富士学校祭二〇一六
 富士駐屯地祭二〇一六速報、日曜日に撮影しました富士学校祭の様子をEOS-7DmarkⅡ写真より一足早く、同時に撮影しましたX-20写真によりお伝えします。

 富士駐屯地、富士山を望む陸上自衛隊の駐屯地、御殿場駅からバスにて9kmほど、足を運ぶことが出来ますが、最寄駅は御殿場線足柄駅となっていまして、標高は900mを越える比較的高い標高、富士の裾野というよりは富士山の中腹という立地にある駐屯地です。

 富士学校、静岡県駿東郡小山町須走に所在する陸上自衛隊富士駐屯地に置かれている陸上自衛隊の教育部隊です。陸上自衛隊の様々な職種、旧軍でいうところの兵科の専門教育を行う部隊で、諸職種の協同運用を念頭に普通科、機甲科、特科、の統合教育を担います。

 富士駐屯地、正門を入りますと、式典会場まで斜面をゆっくりと登る緩やかな傾斜となっていまして、富士山の斜面であることを認識させてくれる情景、近くには東名高速道路も走りますが、須走は富士浅間神社が近く、富士山信仰の登山口としてから知られていた場所です。

 駐屯地祭は、駐屯地正門から少し上った場所が式典会場となっていまして、富士山山頂側に観閲台、そして観閲台右手が一般席として開放されています。観閲台後方の斜面も一般席として開放されまして、その上で地元席が観閲台に隣接、地元重視の駐屯地としても知られる。

 戦車部隊の観閲行進の規模が非常に大きく、機械化部隊と特科部隊の迫力も特筆でき、東千歳駐屯地祭や旭川駐屯地祭に霞目駐屯地祭と並ぶ規模の行事です。そこで観閲行進を正面から、斜めから、迫力ある角度で撮影できる場所、に多くの人が集まります、やはり迫力ある一枚を撮りたい。

 職種学校。普通科は歩兵、機甲科は戦車、特科は砲兵、富士学校はこの三職種の教育を一手に担う部隊です。元々は、前川原駐屯地の普通科学校、習志野駐屯地の特科学校、相馬原駐屯地の特車教導隊、と別れていましたが、近代戦が現代戦へ発展する過程で1954年に統合されました。

 編成は、企画室、総務部、管理部、普通科部、特科部、機甲科部、富士教導団、部隊訓練評価隊、となっています。初級幹部の基礎幹部課程教育、上級幹部課程での専門教育、戦術研究と新装備運用試験、将来装備に関する調査研究などがその任務として知られるところですね。

 富士教導団は、富士学校隷下の運用部隊で団本部、本部付隊、普通科教導連隊、特科教導隊、戦車教導隊、偵察教導隊、教育支援施設隊、富士教導団教育隊、富士教導団音楽隊、という編成を採っています、そして主要装備が一通りそろっている点も特色といえるかもしれません。

 教導団の任務、それは実際に部隊を動かさなければ部隊運用感覚を実感出来ませんし、試験場ではなく実戦環境を再現しなければ装備品は個々の能力数値を把握できません、そこで一定規模の部隊を編成し、指揮及び運用させることで机上の理論と実戦の能力へ昇華させる、これが任務です。

 富士学校は様々な職種教育を担っていますが、陸上自衛隊には職種ごとに教育訓練部隊を有しています。この他に一例として、勝田駐屯地に施設学校、下志津駐屯地に高射学校、久里浜駐屯地に通信学校、明野駐屯地に航空学校、土浦駐屯地に武器学校などなど。

 普通科教導連隊の編成は、連隊本部、本部管理中隊第1中隊、第2中隊、第3中隊、第4中隊、重迫撃砲中隊、対戦車中隊、となっています。各中隊は 89式装甲戦闘車、 軽装甲機動車、 高機動車、96式装輪装甲車、と中隊ごとに装備していまして、89式装甲戦闘車は数が少ない優秀装備の一つ。

 普通科教導連隊には120mm重迫撃砲、79式対舟艇対戦車誘導弾、中距離多目的誘導弾等も配備されていまして、第一線用装備も01式軽対戦車誘導弾に87式対戦車誘導弾と81mm迫撃砲、110mm個人対戦車弾、84mm無反動砲、MINIMI分隊機銃から89式小銃、9mm拳銃まで一通りを持つ。

 特科教導隊、その編成は、隊本部、本部管理中隊、第1中隊、第2中隊、第3中隊、第4中隊、第5中隊、第6中隊 、第303観測中隊、となっていまして、装備は特科火砲のほか、各種観測装備、対砲兵戦闘用装備等一通りを揃えています。火砲から自走砲にロケットとミサイル等、文字通り一通りある。

 特科教導隊の装備を見ますと、155mm榴弾砲 FH70二個中隊、99式自走155mm榴弾砲、203mm自走榴弾砲、多連装ロケットシステムMLRS 、88式地対艦誘導弾、12式地対艦誘導弾、対砲レーダ装置JTPS-P16、気象測定装置JMMQ-M5、遠隔操縦観測システムFFOSなど。

 戦車教導隊は、編成について、本部管理中隊、第1中隊、第2中隊、第3中隊、第4中隊、という四個中隊を基幹としていまして、ワシのマークの10式戦車、マークは流星の90式戦車、ハチのマークの90式戦車、天駆けるペガサスの74式戦車、と中隊マークを掲げる。

 戦車教導隊、その練度は神業というべきもので、富士総合火力演習に見慣れますと忘れがちですが、自衛隊最高水準であると共に世界でも最高水準の能力を有しています。ただ、せっかく世界最高水準ですが、戦車削減の影響から第1機甲教育隊と統合され、数年内に富士駐屯地から移駐するとのこと。

 富士駐屯地祭、それは各種最新装備が最初に配備される駐屯地ということで、最新装備を実際に見てみたいという多くの方や、北海道と富士駐屯地にしか装備されていないので北海道は遠いのだから富士に行ってみよう、としまして、此処さえ行けば、という行事の一つ。

 今年は伊勢志摩サミット、熊本地震、水陸機動団新編準備、様々な出来事が重なり、縮小開催となりました。式典と観閲行進のみ、縮小され実施されないのは訓練展示模擬戦と模擬売店に装備品展示と車両試乗、模擬戦と模擬店がないとの事で滋賀、足を運びますと驚き、一般席の面積も縮小となっていました。

 一方、富士駐屯地は首都圏から日帰りが可能で、早朝に出発すれば京阪地区や中京地う空も日帰りが可能であるため、来場者の増大が著しく、開門数時間前から正門前に長蛇の列が、という傾向が近年続いていました。これも縮小開催となり、半分程度の来場者となっていましたので、今年は余裕があった事も特筆すべきでしょう。

 富士駐屯地祭、しかし観閲行進終了後には戦車機動展示として戦車教導隊による74式戦車、90式戦車、10式戦車、三世代協演の見事な機動展示が行われ、装備品展示はありませんでしたが偶然、機動戦闘車がよく分かるところに駐車していたりしまして、富士駐屯地祭、やっぱり凄いなあ、という一日を過ごす事が出来ました。

北大路機関:はるな くらま
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特集【第24回参議院選挙と安全保障】第五回・・・反安保法協力,民進党・共産党の安保政策不一致

2016-07-04 22:33:46 | 北大路機関特別企画
■野党間の矛盾する防衛政策観
 共産党と民進党の野党連合、安全保障関連法制への反対を掲げ呼号し候補者の一本化を図っていますが、現実的に可能なのでしょうか。

 民進党の民主党時代の防衛政策は、代議士個人の防衛理論としては、西村代議士、前原代議士、長島代議士、かなり踏み込んだ議論がありましたが、党の政策として政権公約画定の際に具現化することができませんでしたので、党内にも様々な施策があることを示しますが、政権与党を担った事がありますので、その具体例だけはおぼろげながら見えています。

 民主党政権時代には、ヘリコプター搭載護衛艦いずも建造、動的防衛力として現在の統合機動防衛力整備への指針、F-35戦闘機選定、防衛大綱への機甲師団維持、潜水艦部隊の大幅な増強の防衛大綱への盛り込み、など具体的な施策は示されています、ここに共産党は同意しているのか、と。

 こうした意味で、民進党の防衛政策は民主党政権時代の論点が応用できますし、いわゆる非正規戦力への攻撃へも自衛隊と警察海上保安庁の合同任務を可能とする領域警備法を整備する案を野党時代にも提出、安全保障関連法制へは反対していましたが、自衛隊海外派遣を政権交代以前の野党時代には自民党の特措法を根拠とする時限的な施策に反対し、安全保障への国際任務での恒久法整備を提唱していました。

 また、自衛隊の海外派遣も自衛隊のアフガニスタンへの復興支援を提要したのは政権交代以前の民主党であり、自民党以上に自衛隊の海外任務への積極性を掲げていました、もちろん、装備の充実なしに後方支援など任務を問わず部隊を送ることは人員の損耗に直結しますので、なにをやるにも装備の充足と、装甲車両の充実なしには当方は反対でしたが、積極的な指針が示されていたことは理解できるでしょう、しかし、共産党と防衛政策で合意できるのか。

 共産党の防衛政策ですが、長らく人民戦争を提示していました、綱領からは削除されていますが、代わりとなる防衛政策が示されていませんので、実質的にはこの理論のほかに腹案がないことを示しているとしかいえません。共産党は戦後初の総選挙を経ての日本国憲法制定決議に際し、自衛戦争の権利を放棄している、という視点を含め反対しました。

 自衛権の必要性を提示した共産党、しかしその後、自衛隊には反対しますが人民のための軍隊編成を代案として長らく堅持し、さらには山村工作隊として1950年代半ばまで武装ゲリラ闘争と交番襲撃などを実施していました。具体的には国民皆兵制を冷戦時代には提示していました、この歴史を振り返り、手のひらを翻し、護憲と非武装を掲げるようになっていまして、どうしても不信感が拭えません。

 それは、専守防衛を掲げつつ、しかし、専守防衛とは国土が戦場になるまで防戦しないという非常に過酷な犠牲を強いられる施策であることを示さず理想だけを提示されていますと、万一防衛政策を担った際の、専守防衛の損害が国民国土ともに及んだ場合、責任転嫁されないかが不安でなりません。過去の国民皆兵制度推奨路線、山村工作隊の非道、これらと向き合って真摯な反省を示してのみ、次に進めるのではないか、と考えます。

 これらの違いをふまえ、安全保障関連法案の廃止を掲げるのであれば、領域警備と国際貢献の充実を具体化し、さらに集団的自衛権に頼らずとも国土防衛を実現できる防衛力の強化を盛り込んだ、法案を、名称は国家防衛法でも国民平和維持法でもよいのですが、公約と合わせて具体化し、示すことができるような安全保障面での野党合議を先に行い、示すべきではないでしょうか。

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アメリカのリスク 大統領選にみる変容と国際公序再構築【6】 在比米軍撤退と地域安全保障

2016-07-03 22:22:41 | 国際・政治
■自由主義の恩恵
 アメリカは自由主義を防衛する事により大きな恩恵を得ていまして、そのために展開する上で最良の地域で世界で最も厚遇される基地環境を得ている、これが在日米軍基地です。

 アメリカは世界での自由主義の国際公序を定着させることで国家が利益を得ている訳で、この自由主義の一つ、通商の自由を担保するための海洋自由原則、そして地域の不安定化を防ぐことで国家は大きな恩恵を受けています。その国際公序を軍事力により防護する西太平洋地域での最大拠点として、在日米軍基地がある。

 在日米軍の施設ですが、アメリカの世界戦略を展開する上で必要な施設である為に運用を継続しています事は既に記しました、こうした状況を踏まえ仮に在日米軍の施設を使用出来ない場合は、まず艦艇基地などの距離が第一線から大きくなりすぎ、幾つかの装備を使用する事が事実上できなくなります。

 グアムのアプラ基地を基点とした場合でも西太平洋地域での行動には、特に沿海域戦闘艦LCSとして設計されたフリーダム級やインディペンデンス級等は航続距離が不足する事となりますし、艦船の補修設備として横須賀や佐世保を利用しないとなれば、重整備はハワイの真珠湾か本土のサンディエゴまで戻る必要が生じる。

 こうして本格的に艦船の航続距離と総数が不足します、勿論、中国海軍及びロシア海軍の行動へ無関心となり、東南アジア地域が人工島を拠点とする中国海軍により制圧され、北米沖をロシアの巡航ミサイル潜水艦が自由に示威行動を行う状況まで展開したとして、地域のブロック化という施策をアメリカがどのように考えるかが問題となるでしょう。

 海洋占有とアメリカ排除の地域、これをアメリカが看過する、という度量があるならば、もちろん日本からの米軍撤収は理に合う話ではあります、アメリカ第一主義を掲げアメリカ本土から出ないのであれば、永遠にアメリカ自身が観るのは一国しかいない閉鎖的な世界観の上でのアメリカ第一に他なりません。

 こうした後退政策のリスクは、状況が悪化し引き返せない状況まで自動的に回避する事が出来ない状況まで進む可能性がある、ということでしょう。これは実際にアメリカが撤退した場合の影響の大きさをどう評価するか、というもので、一例としてフィリピンからの在比米軍撤退、この1992年にアメリカが実施した施策がその具体例として視る事が出来るかもしれません。

アメリカはフィリピンから後退しましたが、これは1991年のフィリピンピナトゥボ火山噴火、1983年のセントヘレンズ火山噴火を遥かに超える20世紀最大の火山噴火により航空母艦二隻の母港であったフィリピンのスービック海軍基地、更にヴェトナム戦争を支え滑走路などの規模では沖縄の嘉手納基地を越えた規模を有する航空団展開拠点、クラーク空軍基地を放棄しました。

 ピナトゥボ火山から40km圏内にあったクラーク空軍基地は火山活動により1m近い火山灰が降り積もり、日中でも暗闇に包まれ空軍基地の機能が完全に喪失した状況となっていました、何故ならば火山灰は航空機に対しエンジンでの凝結閉鎖や導電性を持つため電気系統の破壊、更にピトー管に詰まる為計器機能不随、など問題が生じる為です。

 このため一時的に後退した事を契機にフィリピン政府は米軍の駐留延長を拒否、事実上米比相互防衛条約のみが残り在比米軍が撤退しましたが、この空隙を狙い中国軍がフィリピン領ミスチーフ環礁を不法占拠し、今日に続く南シナ海での不法な海洋進出は新しい段階となった訳でした。ただ、この際に僥倖であったのは、在比米軍の撤退部隊の多くを日本が破格の条件を提示し駐留を受け入れたという事でしょう。

 在日米軍は施設費用の全てとその電気代や借地料、周辺地域騒音対策から住民補償はもちろん、米軍住宅の借地と造成に建設と管理、娯楽施設の運営から人件費に日本人警備員雇用費用からサービス要員の人件費等全てを日本が負担しており、そもそもこれ以上の負担を求めるならば、軍事任務以外の複利厚生水準を自衛隊の官舎や基地施設程度にとどめる、在韓米軍の様に在日米軍へも家族同伴を不可とするよう求め費用を抑える養成さえ出てくるかもしれません。

 ここまで同盟国へ負担する事例は日本以外ありません、サウジアラビアやクウェートでも実施してきませんでした。この条件が不服ならば、米本土以外アメリカ軍を受け入れる国は考えられません、他方ここで引くことは将来的に上記のような脅威の増大を看過する事に他ならない事も忘れてはなりません。

北大路機関:はるな くらま
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中国機,沖縄鹿児島の南西諸島での活動増大 対領空侵犯措置任務4~6月で200回以上実施

2016-07-02 17:11:06 | 防衛・安全保障
■自衛隊南西防空の緊張
 中国機の南西諸島での活動増大について、防衛省はその活動が異常に増大していると発表しました。

 防衛省の河野克俊統合幕僚長は6月30日の記者会見において、今年4月から6月までの三か月間に実施された航空自衛隊による対領空侵犯措置任務において、中国機による南西諸島方面への接近が極めて異常な規模で増大しており、昨年度の同時期よりも80回以上増大し、昨年度の114回と比較し1.5倍以上となっているとのことでした。

 中国機に対する沖縄県及び鹿児島県の南西諸島への対領空侵犯措置任務は、今年1月から3月にかけて既に200回を超える非常に憂慮する状況となっており、今回の記者会見では4月から6月までの期間も、1月からの異常な数値が常態化し推移していることを示しています。併せて、中国海軍はこの航空機による異常な活動に呼応するように、今年尖閣諸島付近での接続水域において航行を実施しており、不測の事態の緊張が否定できません。

 河野統幕長は、更に中国航空機の接近が、従来鹿児島県島嶼部へ接近する経路を主としてとっていた事に対し、昨今は沖縄県南部、先島諸島及び尖閣諸島方面への接近が異常増大しているとのことで、現在、先島諸島は自衛隊の駐留が宮古島分屯基地のレーダーサイトのみで、この脅威の急激な増大に対し自衛隊の駐留による防衛体制の整備を計画中です。

 対領空侵犯任務は、防空識別圏に飛行計画を提出せず侵入した国籍不明航空機に対し、全国の航空自衛隊基地より要撃機を緊急発進させ、国籍不明機を誰何するもので、領空侵犯へ展開する事を阻止するという平時における重要な位置づけを有しています。防空識別圏は我が国民間旅客機の航空管制管区に合わせて設定される飛行情報区に合わせて設定されているため、国籍不明機の侵入は民間航空機へも重大な懸念が否定できません。

 防衛省では、那覇基地の第83航空隊を第9航空団へ改編させ、戦闘機を従来の1個飛行隊から2個飛行隊へ増勢すると共に、第603警戒飛行隊を新編し、早期警戒機による警戒管制任務を強化していますが、この増勢措置を含めた場合でも、一日平均の規模がこのまま推移した場合、平時の防空任務は飽和状態となる懸念が生じるでしょう。

 那覇だけで一日平均2回以上、飛行場の発着枠には上限があり、那覇基地は那覇空港と滑走路を共用しており、併せて那覇空港は日本有数の過密空港として知られています、今後さらに緊急発進が増大する場合、民間機が嘉手納基地等へ行先変更の必要性が生じる可能性があります。この為、翁長県知事が那覇市長時代から那覇空港第二滑走路工事として埋め立て事業を推進しており、工事が完了する事で、多少は滑走路の発着枠へ余裕が出るのでしょうか。

 任務増大、嘉手納基地あたりに航空自衛隊の補助飛行場がそろそろ必要になりそうな状況とも言えます。また、場合によっては訓練時間を確保し、且つ事故発生率を縮小する観点から、F-35と並行し調達する支援戦闘機という位置づけ、これまで当方は有事の際には航空消耗戦となる観点から、運用基盤を補助基地と併せる事で航空優勢を維持できる、との見解を示してきましたが、平時の挑発に対して、長期化するほど中国軍の行動が常軌を逸しているとは想定外でした。

 アメリカ製造が維持されているF/A-18F戦闘機の導入、米空軍が運用するF-15CやF-16Cの余剰機取得や貸与の要請、欧州製戦闘機のJAS-39などの取得など、戦闘機の増勢は真剣に検討する必要性が分水嶺を越える時期が近いといえるやもしれません。他方、もう一つは戦闘機数に対して操縦要員と整備要員を増勢し、機体当たりの稼働率を高める措置を、そろそろ検討しなければならない時期になっているのかもしれませんね。

 ただ、忘れてはならないのは我が国が沖縄戦の悲劇を繰り返してはならない、という事です。沖縄戦においては、沖縄第32軍からの防衛戦力を抽出し弱体化させ、航空戦力は飛行場のみ建設しましたが必要な航空戦力を展開させない事で連合軍の上陸を許し、県民多数を巻き込む凄惨な地上戦へ展開させてしまいました、無防備こそ平和との誤解がありますが、無防備が生んだのは沖縄戦で戦力を増強した台湾や九州へは上陸していません。防衛費で如何に負担があろうとも、同胞を見捨てない決意が改めて、必要です。

北大路機関:はるな くらま
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