直観的にわかりやすいときに使われるのではないかと義弟から指摘された。これは「数学・物理通信」6巻7号に書いた私のエッセイへの感想である。そうかもしれない。
私の調べた文献では比と比例式の突っ込んだ説明とか理由とかはほとんど分数式で与えられているという事実であった。
しかし、比と比例式は初等幾何学でも使われているが、そこまで突っ込むことをしなかった。比と比例式を分数で表すことがわかれば、初等幾何学でも役に立つということは知っている。
前にもこのブログで書いたが、比例式を分数式で表すことになじんだのは大学受験で勉強していたころ化学の計算問題においてであった。津田栄さんという化学教育者の書いた『化学計算問題の解き方』(旺文社)という本を読んだからである。だから、比例式を分数式で表すことを狭い意味の数学で学んだのではない。
その学び方のせいか、それが正しいかどうかだとか、または、その根拠とかをあまり気にしないでその事実だけを用いてきた。それを反省したのが「比と比例式を考える」という「数学・物理通信」6-7のエッセイを著した動機である。
そこからわかったのはどれも比と比例式を数学的に根拠づけているのは分数式表示の比例の表し方であるという事実だった。
もっともユークリッドの『幾何学原論』には比例式が等しいというルールである、「内項の積と外項の積が等しい」という命題(定理?)の証明が与えられているというから、それが分数式を用いないでどのように証明をされているか知りたいところである。
(注) 遠山啓さんが三角形の相似比などをどう取り扱っているかを、『数学の広場3 2次元の世界』(ほるぷ出版)で調べたら、遠山さんは比例式を分数式で表しており、また比例式とか相似比という語は索引には載っていなかった。ところが『数学の広場 別巻 数学ハンドブック』』(ほるぷ出版)「比と比例式」の項には比例式の性質があまり詳しい説明なしに出ていた。内項の積と外項の積が等しいという性質も分数式の表示での説明はなかった。これは単に「数学公式集」であるからしかたがないかも知れないが、ちょっと気になるところである。
いま気がついたが、三角比とよばれるものはすべて分数式で表されており、sin x=対辺:斜辺と書かれたものを見たことがない。すべてsin x=対辺/斜辺といった形である。もっとも三角比という名前でよばれるのはきわめて教育上は短い期間であり、すぐに三角関数を学んで以後はあまり三角比とはとよばれない。