岩波のPR誌『図書』12月号に身につまされるような話が出ていた。高橋三千綱さんという作家の書いた「感動の人生」というエッセイの冒頭の部分である。引用してみよう。
三年半前に千七百円の値段で出版された単行書が古書店で二百円で売られていた。書き始めてから脱稿するまでに十一年かかった作品である。棚から手に取った本を抱え、後ろめたい気持ちでキャシャ―に並んだ。代金を支払うとき自分が頬かむりしているように感じられた。(引用終わり)
いや、作家の方でもこういうことがあるのですね。そうだとすれば、私の本などどうなってもおかしくはないか。
先ず値段が大体同じくらいだ。1700円に対して、私の本の値段は税抜きで2000円である。高橋さんは11年の年月をかけたというが、私だって7年くらいかもっと年月をかけている。
『四元数の発見』は私の書いた本であるが、この作家高橋三千綱さんの本のような運命をたどっているのだろうな。そう思うと高橋さんが気の毒になった。もっともこのことを高橋さんは『図書』に書いたからいくぶんは救われただろうか。
そして私はこのブログで自分の本のことを書いたことによって、いくぶんか救われているだろう。