(講談社)を読んでいる。解析接続の仕方について調べるために県立図書館で借りて読んでいる。はじめ解析接続とかリーマン面のところ(本の後ろの方)を先に読んで、つづいて前の方から読んでいる。
応用の複素積分のところまでやってきたので、あと数十ページを読めば、この本を全部読み終わる。私には数学の本などはじめから終わりまで読んだことなどまったくない。もちろん、自分が書いた本を除いてだが。
この本については、アマゾンコムでもさすがに文句をつける書評など一つもない。私も5つ星を与えるだろう。
もっとも注文がないわけではない。だが、それは私の度の過ぎた要望であろうか。これはこのブログでも繰り返し書いたので、またかと思う人もあるだろうが。
一つは分岐点の述べ方は悪くはないのだが、分岐点はその点のまわりでは多価関数なのに、その点では一価となる点だとはっきりした方がいい。もっとも私が知った、分岐点のこの定義を明らさまに書いてある本はあまりない(注)。
もう一つは解析接続のしかたのところで比較的多くの例がでているのはいいのだが、解析接続のしかたの種類をはっきり書いた方がいいと思う。これについては
(1) 級数展開による方法 (2)積分表示による方法 (3)関数関係
の3つだと書いてあるのは今村勤『物理と関数論』(岩波書店)である。ただこの書は例をあまりあげていない。
この3つの手段の他に、挙げてあるのはSchwarzの鏡像の原理をどの複素解析の本にも説明があるが、これの例をあげている本を見たことがいままでない。友人の数学者の N さんに以前聞いたところでは、電磁気学の導体近くの電場を求める映像法がSchwarzの鏡像の原理のいい例だと聞いたが、自分でまだきちんと調べたことがない。
(注)ベル『数学をつくった人びと』下(東京図書)p.194、安倍斉『応用関数論』(森北出版)pp.41-42とか矢野 忠『物理数学散歩』(国土社)pp.54-56くらいであろう。