物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

Grassmann

2019-03-01 15:35:07 | 数学

Grassmannはその一生を今でいえば、中学校と高校の教師(ドイツではこういう学校をギムナジウムという)として過ごした。いまや、このGrassmannの数学は微分形式やベクトル解析等で欠くことのできないテーマとなっている。

最近、若い日本の研究者が職を見つけられないために、30歳代の途中で研究者以外の職業を探す羽目になっているが、そういうチャンスさえGrassmannにはなかった。

もっとも、これはGrassmannの数学が時代をとても先んじていたからであり、同時代の人々からは理解されなかったという。これはその成果をなかなかわかりやすい言葉で表すということができなかったためだとも言われている。

同じような仕事をしたHamiltonの四元数の発見はすぐに一般に知られるところとなり、これが現在のベクトル解析のもう一つの端緒をなしている。ベクトルのスカラー積とかベクトル積とかはHamiltonの四元数の積から出てきたものである。

同時代人であり、大数学者だった、GaussもGrassmannの数学の書き表し方が哲学的にすぎているという判断だったという。幸いなことにGrassmannの考えを理解して、それを簡易化してくれた物理学者のGibbsをはじめとした学者がいなかったら、世間に知られずに終わってしまったかもしれなかった。


『ナブラのための協奏曲』

2019-03-01 11:27:55 | 数学

『ナブラのための協奏曲』(共立出版)を図書館から借りて来た。いい本だったら、自分でも購入したいと思っているが、アマゾンコムの書評があまりよくなかったから、心配になったのである。

ちょっと癖のある本だと思うが、それでも自分でも買って持っておくべき本だとの結論に達している。これと競争するようなベクトル解析の本を書くのはかなり難しい。

それでも、いつかこの本とは相補的な本を書いてみたいなどと、たいそれたことを最近考えている。この書は太田さんが自分で考えて書いた本だと思うが、私にもちょっと頭をかしげるところがある。それはそうだが、それでもそれを補って余りある、長所がこの本には十分にある。

この本にも「ガウスの定理とストークスの定理等は微積分の基本定理の一般化である」という主張をちゃんととりいれられている。やはり太田さんはみるべきところはきちんと見ている。

(2019.5.9付記)  結局、『ナブラのための協奏曲』は自分でも購入した。しかし、わるいことに自分で持ってしまうと読まないという悪癖が出ている。本は図書館で借りて読むべきかもしれない。