物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

『数学解析』を借りてきた

2019-03-13 12:18:46 | 日記

溝畑茂『数学解析』下(朝倉書店)を図書館から借りてきた。この本には直接的にはベクトル解析の章はない。

だが、「第7章 曲面積分」 にガウスの定理やストークスの定理が出ている。それについて溝畑先生がどう書かれているかに関心がある。

まだ全く読んではいない。ただ、ちょっと見たところベクトルを文字の上に矢印をつけた、ちょっと古い表示であり、これは出版社がベクトルを太字にしたらと、著者にアドバイスをすべきではなかっただろうか。

ガウスの定理やストークスの定理についていえば、あとがきのところの各章の解題で「これらの定理が微積分学の基本定理の自然な拡張だ」と明言されている。この書は初版が1973年なので、日本でのベクトル解析の書での「ガウスの定理やストークスの定理は微積分学の基本的定理の自然的拡張だ」という主張が出たはじめではないかと私は思っている(直下の文をきちんと読んでほしい。この主張はもっと前に遡れることがわかった)。

====================================================================

念のために、あまり読んだことのない、岩堀長慶『ベクトル解析』(裳華房)p.200のストークスの定理のところを見たら、ちゃんとこれに「ストークスの定理は微積分学の基本定理の拡張だ」と書かれてあった。この書は1960年初版なので、日本語で書かれたテキストとしての歴史は、すくなくともここまで遡れることがわかった(注)。

====================================================================

私自身は元高知大学の数学者で、「数学・物理通信」の共同編集者の新関さんから、このことを聞いていた。いま、いつかのベクトル解析のテクストを見てみると、この説明があるテクストは結構多くなっている。

北野正雄さんの『マクスウエル方程式』(サイエンス社)とか、志賀浩二さんの『ベクトル解析30講』(朝倉書店)とかである。太田浩二さんの『ナブラのための協奏曲』(共立出版)などもそういう説明を採用している。

横田一郎『わかりやすいベクトル解析』(現代数学社)にも上に書いたことは言明されているので、私のテスト基準に合格である。志賀浩二先生の『ベクトル解析30講』の説明が特によかったという印象をもっている。

以前に、「そういう説明のないベクトル解析のテクストはもうベクトルの入門のテクストとしては時代遅れだと思う」と書いたが、その言は撤回するつもりはない。

一緒に借りて来た『微分積分学講義』下(京都大学学術出版会)は図が多くて、説明は詳しいし、印刷が鮮明なのでいいが、この点はちょっとミスっている。これは翻訳なので、しかたがない。この本は高価なだけあって説明は詳しいし、特色のある本ではある。

一般的に言って朝倉書店の発行する数学書はあまり印刷がよくない。内容はいいテクストがあるのに、印刷がわるいと損をすると思う。

(注)印刷発行されたテクストにはなっていないが、「物理のかぎしっぽ」グループのJohさんが書かれた「ベクトル解析」の解説ではやはりちゃんとこの点が踏まえられている。

 (2023.11.24付記)『江沢洋選集』VI(日本評論社)には必読文献として江沢洋さんが、この溝畑茂『数学解析』(朝倉書店)を挙げていることを知った。ただ、ベクトルの記号は太字にすべきだと個人的には思っている。


C'est une expression.

2019-03-13 11:15:26 | 日記

先日、ドイツ語で「言い回し」をRedewendugenというと書いたが、いまNHKのラジオのフランス語の講座を聞いていたら、表題の表現が「決まりきった言い回しです」という意味で言われていた。

これはIl tombe des cordes. という表現が決まりきった表現だというのである。フランス語に何年も接しているが、初めて聞いた表現である。直訳すると「縄が落ちてくる」である。

これでは普通には、フランス語を母語とはしない我々にはわからない。tombeといえば、「雪が降る」というシャンソンはTombe la neigeというふうに歌っている。あのシャンソンの出だしはTombe la neige, Tombe la neige, tu ne viendra pas ce soirだったか。

もとにもどって、普通に雪が降るなら, Il neige. である。ilは人称代名詞の彼を意味するが、天気とか時間をいうときにはilという代名詞を使う。こういうilは非人称代名詞という。ドイツ語ならば、これは中性の代名詞esである。雨が降るならば、ドイツ語ではes regnet.であり、雪が降るならば、es schneit. である。

これがフランス語ならば、il pluet.が雨が降るだし、雪が降るならば、il neigeである。おかしいのはどういう天気ですかという問いは

   Quel temps fait-il ?

というのである。直訳すると「どんな天気をつくっているか」とでも訳せようか。faireという語は「つくる」とか「する」というときに使うとても用途の多い語であるが、天気のときにも使うのである。

そういえば、暑いとか寒いとかもIl fait chaudとかIl fait froidとかいう。ここでもfaireを使っている。または風があるとかでもil fait du vent という。天気がよければ、il fait beauだし、わるければ、il fait mauvaisである。 faireのオンパレードであった。

(注)tempsには天気のほかに、時間という意味もあるが、時間を聞く場合にはtempsはつかえない。「今何時ですか」このごろはIl est quelle heure ?(イレ ケル―ル)という。むかしはこれを倒置した、Quelle heure est-il ? と教わったものだが、だんだんくだけた口語的表現が教えられるようになった。

これはもう私たちの若いころのことだが、大学の宿舎に住んでいたころ、妻がこのケル ウウル エティールという文句だけを知っていて、花についた害虫のアブラムシを方言でケラレというが、誰かよその奥さんがそんなフランス語がありますねといったときに、即座にそれはフランス語で「何時ですか」という意味で、「ケル ウウール エティール」というと言って、近所の奥さんから学があると感心されたことがある。彼女はこのフランス語だけしか知らなかったのに。

 

 


1024

2019-03-13 10:50:26 | デジタル・インターネット

車で仕事場まで妻に送ってもらっているときに、横に止まった車の番号が1024だった。あれ、これは2の10乗ではなかったかなと思ったが、よくは覚えていなかった。

そこで、すぐに暗算しようとしたが、私は暗算が下手ときている。2の6乗が64(=8*8であるから)であることぐらいはすぐにわかったが、それ以上だともう暗算ができない(注)。仕事場について、2の倍数はなんかの数表の載っていたのではないかとまずは吉田武『オイラーの贈物』(海鳴社)を見たが、この巻末には2の倍数の表は載っていなかった。

しかたなく、林桂一(森口繁一増補)『高等関数表』(岩波書店)の巻末のほうを探したら、2の倍数が出ていた。これによると確かに1024は2の10乗である。

車の中で「にごろ」256を思いだしていたが、それが2の何乗だったかもその表でわかった。2^{8}=256であった。

パソコンをいじることが好きだった子どもから「にごろ」という文句を教えてもらったのも、もう何十年も前である。

(注)「物理学をやっていたのに暗算が下手ですね」とよく言われる。近代の優れた数学者と言われたポアンカレが暗算が下手だったとか、どこかで読んだ記憶があるが、定かではない。