物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

思い違い

2023-02-15 12:17:55 | 数学

森正武『数値解析』(共立出版)の直交多項式の漸化式のページをフォローしてそのメモをどこかにファイルしたはずだと思って一昨日と昨日探したがでて来ない。

だが、よく考えてみるとどうもそれは私の記憶まちがいである可能性が高い。確かにその漸化式を使ってクリストッフェル=ダルブーの恒等式の導出のフォローをしたので、それをこの漸化式の導出をしたと勘違いして覚えていたらしい。その部分をどうも漸化式の部分の導出だったと思っていたらしい。どこにもそのメモが見つからないのだから。

式を書いたという記憶があったのだが、どうも怪しいのではないかと思い至ったのはそのメモを2日もかけて探した後である。確かにその箇所も本で読んだのだが、どうも紙面上ではフォローしなかったらしい。本に書かれた式を目で追って読んだことは事実なのだが、手を動かさなかったらしい。

上述の『数値解析』では、ガウス数値積分の一般論を簡単に示しておられるので、私の長年の喉のつかえがとれた感じである。それにクリストッフェル=ダルブーの恒等式を用いて、私が『数学公式III』(岩波書店)で知って用いた関係式も証明できたので、このことを前に書いたエッセイ「歩行者のためのガウス積分」に付け加えておく必要ができた。こんなことは数値計算の専門家にはつまらないことであろうが、私のような非専門家には重要なことである。

これは単なる推測にしか過ぎないが、私にガウス数値積分のことを教えてくれたNさんは文献から重みを求める公式を証明しないで、そのまま使って私にプログラムをつくってくれたのだろう。それで私がその重みの式の求め方を知りたいと言ったときに、前に証明したが、忘れてしまったという言い訳をしたのだと思っている。その点は数値計算の専門家であったYさんとは違っている。Yさんはガウス数値積分の一般論も明らかに知っていると思う。もっとも、このYさんが著した数値計算の書からは私は「ガウス数値積分の一般論」を理解できなかった。

重みを与える数値はちょっとした数表には出ている。それで私の1年先輩のHさんなどもその数値を用いてガウス積分を行ったのではなかろうか。

Nさんは数年前に亡くなったが、Hさんの方はまだ存命であるので、彼に尋ねることもまだ可能である。

 

 

 


ガリレオ・ガリレイ

2023-02-15 11:24:57 | 物理学

    これは「力学の道草」というエッセイの一つである。

 

ガリレオ・ガリレイ

ガリレオ・ガリレイ(1564-1642)は近代科学の父と言われる。彼は哲学的・思弁的であった、それまでの科学に実験的な手法を導入して仮説を検証するという方法を意識的に導入したのであった。

フィクションなのか事実なのかははっきりしないが、ピサの斜塔から重い砲丸と軽い銃弾とを一緒に落として、それらがほとんど同時に落ちるということを実験的に示したといわれている。アリストテレス(B.C. 384-322)の力学体系では思い物体ほど速く落下すると考えられていたので、スコラ哲学者たちはその事実を認めることを拒否したという。

望遠鏡をつくり月面が凹凸していることを観測したり、木星に衛星が存在することを発見したり、コペルニクスの地動説を支持して宗教裁判にかけられ、ローマ法王庁からその説の撤回を迫られて、仕方なく自説を撤回したものの「それでも地球は動いている」とつぶやいたとか。

当時の宗教裁判の過酷さはその一端をたとえば、ウンベルト・エーコ原作でショーン・コネリー主演の「バラの名前」に見ることができよう。しかし、武谷三男か森毅だかによればガリレオ。ガリレイは論争術にも優れた自信満々の男で宗教裁判にかけられてへこむような男ではなかったともいわれる。ともかくエピーソドには事欠かない。少年のころ教会の天井からぶら下がっているランプも揺れる周期を自分の脈拍を用いて測り、振り子の等時性を発見したという。まさに天才の名に値しよう。

ガリレオ・ガリレイの一番大きな業績は地上の物体の運動学を樹立したことである。うまく斜面を用いて落下運動を研究し、現在知られている落体の運動法則を確立した。すなわち、自由落下運動は等加速度運動であり、重力は落下物体の速度に単位時間当たり一定の変化を引き起こすことを把握していた。また力が働かない物体は等速直線運動をするという「慣性の法則」をも認識していたのである。

ガリレイが実験を盛んに行ったというのは後世の人たちの創り出した虚像で本当は思考実験的な研究が主であったという説もあるが、最近亡くなったある学者の詳細な研究によれば、やはり実験を主にして仮説を検証するといったことは後世の人の創り出した虚像ではないらしい。(1995.3.3)

 

(2023.2.15付記)

これは『数学散歩』(国土社)にも収録された「力学の道草」というタイトルのエッセイの(2)である。これは工学部の材料工学科の力学演習を3人の教員グループで受け持っていたときに、同僚のK教授から演習資料の埋め草に書くことを勧められたものである。そういう事情を『数学散歩』にも書いていない。ここではじめて明かす事情である。このことを知っている人は私も含めて3人しかいない。