双対ベクトル空間がわからない。ベクトル空間はわからないわけではないが、双対ベクトル空間がよくわからなかったことをようやく思い出した。これを意識しだしたのは北野正雄『新版 マクスウエル方程式』(サイエンス社)を読んでからである(注)。
この双対ベクトル空間の一番いい例は結晶学での逆格子空間である。ところがもう一つこれについて納得がいっていないことも原因である。しかし、数学書でこの結晶学での逆格子空間のことに触れた数学書はあまりない。
私としてもX線結晶学に堪能だと思われる、ある方に逆格子空間を含む結晶学のことを「数学・物理通信」に書いてもらえないかと一度頼んだことがあるが、この方は私よりも年下だが、すでに数年前に大学を定年退職した方である。だが、ある企業から材料工学の授業を2年間頼まれているので、そのシリーズの講座を書くことができないと断られてしまった。
材料工学がつまらないなどというつもりはないが、双対ベクトル空間の重要さには劣るのではなかろうか。もっともこの方にはむしろ材料工学は新しいテーマであったのだろうと思う。だから、その講義のための準備に時間がかかるということだったであろうか。
どちらにしてもいつかはきちんと逆格子空間のことをまとめておかなくてはならない。そしてその知見からもっと双対ベクトル空間をもっと身近に感じられるようにしたいと考えている。
(注)北野さんにこの本を送ってもらった。いい本なのだが、北野さんは双対空間をできるだけわかりやすく述べたという。そういいながら、その結果に北野さん自身が満足はしていないらしいこともわかる。難しいのはどの本を読んでもすっきりしないことからもわかる。志賀先生の『ベクトル解析30講』(朝倉書店)を読んでも同じである。この本も一生懸命書かれているのに。