【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

◎平成23年度本予算(案)を閣議決定 語呂合わせは「国を思う良い一郎」

2010年12月24日 18時45分32秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意
 (数字は未定稿)

 さあいよいよ、平成23年度(2011年度)本予算の政府案を閣議決定しました!
 スキームだけで、まだ中味は見ていませんが、一般会計は92兆4116億円で「国(92)を思う良い(41)一郎(16)」と語呂合わせができ、菅直人首相・民主党代表が2012年3月31日まで、小沢一郎さんに「国を思う良い一郎」であるようにいて欲しいというメッセージを発信したのかも知れません。政策としては、「成長」「雇用」「国民の生活が第一。」が詰まった予算になっていると思いますので、精査してみます。

【一般会計は92兆4116億円、当初に限れば過去最大】

  一般会計は、歳入(収入)・歳出(支出)とも92兆4116億円です。当初では過去最大となりますが、2つ前の年度には、麻生4月補正(14・5兆円増額補正)に比べれば、決算ベースでは、2つ前の年度を下回る可能性があります。一般会計の具体的な施策、特別会計予算(案)、政府関係機関予算(案)の総予算(案)の概要は、このエントリーを書いている段階では、まだ情報不足で分かりません。ただ、一般会計→特別会計への繰り入れ・繰り出しや、特別会計の翌年度への繰り越しなど、昔の香港・九龍城(くーろんじょう)のような複雑怪奇・反デモクラシーな予算は、おそらくシンプルなものになっていると考えます。

【スケジュール】

 政府原案は独立行政法人の「国立印刷局(旧財務省印刷局)」が印刷・製本して、1月下旬ごろには国会に提出される運びだと思います。平成22年度総予算(案)は、来年1月下旬(?)に審議入りし、3月末までに可決・成立する運びです。「平成23年度の赤字公債発行の臨時特例法案」(仮称)の採決が一つのヤマ場となります。

【歳入(収入)】

 税収はリーマンショックで落ち込んでいた法人税収回復などから、41兆円を見込みます。国債発行は44兆3000億円ということで、前年を下回ったとはいえ、緊急事態は続きます。いわば低血圧をムリヤリ輸血して延命している状態です。わが国経済が今後大きく拡大するとは思えないので、消費税率の引き上げは不可避。

 いわゆる「埋蔵金」である税外収入は7兆2000億円と昨年より減りましたが、財務省はよく頑張りました。内訳として、ことしだけの財源ですが、旧鉄建公団の埋蔵金から1兆2000億円が入りました。このほか、財投特会の積立金・運用益を取り崩しが1兆1000億円。外為特会(外貨準備高)からは2兆9000億円で、その運用益は当分の間、一般会計の孝行息子となってくれることになっています。

 なお税制改正では法人減税、個人増税となりましたが、民主党税制の基本である「控除のシンプル化」により、低額所得者や非課税者には控除廃止・縮小による影響はあまり出ませんから、ご安心下さい。

【歳出(支出)】

 総務省所管の地方交付税交付金は、16兆8000億円を確保しました。今後は、紐付き補助金を自治体が自由裁量で使えるマネーに変え、やがては税源そのものを自治体に移す政治スケジュールが必要不可欠です。

 国債償還費(借金返済)を除いた、一般歳出つまり国の政策的経費は54兆0700億円を計上しました。前年度よりアップしましたので、景気を安定飛行する揚力はなんとかなりそうな気配です。ただ、社会保障財源の伸びは、どうしても財政の硬直化につながりますので、メリハリがとても難しい予算編成だったと考えます。

【予算編成では玄葉政調会長兼国家戦略相が調整役として存在感?】

 官邸や財務省にはエントリーカードがないので分かりませんが、玄葉光一郎・国家戦略相(民主党政調会長)の調整力が評価が高い、と報じられています。玄葉さんは6月4日の菅民主党発足での記者会見では、「第22回参院選をマニフェスト見直しのきっかけにしたい」としていましたが、選挙にボロ負けしたため、10修正マニフェストよりも09マニフェスト(第45回衆院選)で与野党も含めて政策が語られる状態が続いています。もちろん10修正マニフェストには工程表が付いていないという問題点もあります。野田佳彦財務相も泰然自若としていて、政治家としての精神力の強さを、TV画面越しに感じました。

 とりあえずきょうは予算のフレームだけ。中味については、今後、私も吟味していきたいと考えます。

 ただ、私としては
 ①JR東海のリニア新幹線建設を政治判断で止めさせ、その費用を国庫に生かせないかとも思います。
 ②いずれにしろ、消費税アップは、(大半の)国民、(民主、自民)各党、年金と社会保障の所要額の見通し、政財官界の一致した落とし所。2011年、菅民主党は「政治とカネ」でクリーンになり、かつ身を切る(歳費と定数の削減)で、早期に消費税アップをお願いできる状態にしなければなりません。
 ③前述しましたが、地方交付税交付金や地方一括交付金から段階的に、税源そのものを自治体に分権していく。ここでも消費税が地域ごとの偏りが少ないので、役に立ちます。
 ④企業の厚生年金保険料を労使とも下げ、「リタイア後」→「現役社員」にマネーをシフトする。事実上の法人税の実効税率下げにもなります。この辺で、官・銀行・大企業に共通の利益があるような気がするんですが、私はちょっと勉強不足でよく分かりません。

 とにもかくにも平成23年度予算案を組み上げました。これだけの予算を自民党は組めるでしょうか?組めません、野党ですから(笑)。しかし、ここまで“動脈硬化”した予算を見ていると、もっと早く、国民のみなさんに政権交代を選んでほしかったと思います。新進党が13年前の12月27日に解党していなければ、第42回衆院選で政権交代できていたと考えているのは私だけではないでしょう。

【防衛大綱→中期防、事業仕分け、税制大綱が反映された平成23年度予算】

 これに先立つ、事業仕分け、平成23年度税制改正大綱、防衛計画の大綱(向こう10年間以上)と中期防衛力整備計画(向こう5年間)をまとめた、蓮舫行政刷新相、民主党政調の税制改革プロジェクトチームの中野寛成座長、北澤俊美防衛大臣もお疲れ様でした。民主党の城島光力政調会長代理らがやった国民新党、社民党との事前協議は不調に終わりましたが、平場の本予算審議の中で、公明党も含めて、修正論議が高まることを期待したいと考えます。2月、3月は国会議員の10分の1の予算委員は大忙し、他の議員は国会では暇ということがありますが、利権にとらわれず、様々な人脈を試みて、与野党とも政府原案の議論を年明けもやってほしいと考えます。

 2011年1月下旬の野田佳彦財務相の衆参本会議場での財政演説、衆・予算委での趣旨説明を経て、予算審議がスタートします。2月は衆・予算委、3月は参・予算委が主戦場です。わが国の政府と議会では、予算政府原案はワンパッケージとして、一気呵成に与野党が攻め守り、採決されます。30日ルールがあるので、衆議院での過半数があれば成立しますので、予算の成立は確実。しかし、国債発行のためには、「平成23年度の赤字公債発行に関する臨時特例法案」への参議院での公明党などの賛成が必要です。他国では当たり前の国会での予算の修正議決も考えられるでしょう。政府が組み替えるよりも、国会が修正する方が望ましいと思います。かなり技術的には難しいでしょうが、与野党合意で修正議決する。それが熟議かつ安定国会の各党の出発点かもしれません。

 この後、27日午後5時に民主党本部が仕事納め。ことしの政治日程は終わります。昨年は菅直人副総理(当時)の新成長戦略が12月30日となりましたが、ことしは余裕を持った年納めです。小沢新党がなくなって、ホントウに良かった。とはいえ、12月24日ごろ政府案決定→1月下旬の通常国会での予算審議での答弁スタートの1ヶ月間の間に内閣改造が多い傾向があったという歴史は参考情報としてお伝えしなければなりません。

 大局観を持ち、1月からしっかりスタートダッシュしましょう。

 今後、五月雨式に情報が入ってきますから、感想も交えて以下のページに箇条書きしていきますので、ご参照下さい。予算審議は2月に本格化します。

[宮崎信行の雑記帳]平成23年度(2011年度)予算案 (当初、政府原案)

[冒頭写真]左上から時計回りに、菅直人首相、野田佳彦財務相、片山善博総務相、玄葉光一郎民主党政調会長兼国家戦略相、蓮舫行政刷新相、逢坂誠二総務政務官、城島光力民主党政調会長代理、平野達男内閣府副大臣、櫻井充財務副大臣、細川律夫厚労相、馬淵澄夫国交相、鹿野道彦農相の平成23年度予算編成でがんばったみなさん。

2011年今後の政治日程を以下のブログで更新しています。

下町の太陽プラス1先読み政治日程
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