【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

稲田大臣がんじがらめ!法律、所信、公約 衆・内閣委など常任委で一般的質疑

2013年03月15日 20時20分00秒 | 第183通常国会(2013年1~6月)附則・附帯決議

[画像]六法全書を持ちながらの答弁を強いられた稲田朋美・行政改革担当大臣、2013年3月15日(金)、衆議院インターネット審議中継から。

 衆議院は予算委員会を1日お休みして、衆院各常任委員会で大臣の所信表明とそれに対する一般的質疑、日切れ法案の審議入りがありました。自民党、公明党、日本維新の会、みんなの党の新人議員の多くが質問デビューを飾りました。

【2013年3月15日(金) 衆院内閣委員会】

 きょうは内閣委員会の各大臣の所信に対する一般的質疑を現地で傍聴してきました。民主党の政権交代へのシナリオが見えてきました。

 民主党の後藤祐一さんが稲田朋美行革相に質問。大臣所信を読みながら、「公益法人改革に触れていない」と指摘しました。これに対して稲田さんは「公益法人改革は所信で触れなかったからといって取り組まないわけではない」と答弁。後藤さんがいつまでに法案を出すのかとつっこむと、「いつまでにというのは大事ではないと思います。中身が大事」と苦しい答弁。

 ここで後藤さんは六法全書を取り出しました。

 
[画像]六法全書を取り出して、稲田行革相に問う民主党の後藤祐一さん、衆議院インターネット審議中継。

 自民党政権時代の2008年施行の「国家公務員制度改革基本法」の4条に「政府は(略)基本方針に基づき、国家公務員制度改革を行うものとし、このために必要な措置については、この法律の施行後5年以内を目途として講ずるものとする」と書いてあり、稲田答弁は法律違反の可能性もあると指摘しました。

 ここで弁護士でもある稲田大臣は同じ法律の11条に「内閣官房に内閣人事局を置く」と書いてあるのに、民主党政権は実現できなかったと反論。この条文が後で、思いもよらぬところで、再反撃されることになります。

 後藤さんは、内閣人事局が設置できなかったことは「法案を国会に出して与野党で意見が合わなかったからだ」とし、「あなたは国会に法案を出していない。この通常国会に出さなければ立法府への冒涜だ」と語りました。

 さて、つづいてみんなの党の新人です。なお、新しい任期の通常国会が始まって1ヶ月半。このブログはあえて、固有名詞を多く上げるように心がけています。しかし、特段国会議員名をあげたからといって、その人を私が推奨しているわけではありません。3年前は「三宅雪子さんまずは合格」というよけいなことを書いてしまい、その後、「三宅さんのパーティー券を買って一緒に行こう」とつきまとわれる迷惑を受けました。まさに類は友を呼ぶという感じでした。名前を出したり、画像をあげたりしたら、私がその人を好きなわけではありません。私は私です。どうか、読解力をもって、冷静に当ブログをお読み頂きたく存じます。

 この後、みんなの党の大熊利昭さんが登場。今週は、予算委、本会議についで3度目の登場で本会議で麻生副総理から「早口で質問が何問か分からなかった」と先制攻撃を受けたにもかかわらず、「きょうは60分(質問時間を)いただいているので早口でなくやらせていただきます」とタフなところを見せました。

 「所信の順番に沿って質問します」とした大熊さん。これも一般質疑では珍しいことで、当たり前のようで、新鮮さを感じました。 

 稲田さんが所信の中で「国家国民のために」行革をする、と述べたとして、後藤さんもあげた基本法の第1条に「国民の立場に立ち」とあることと矛盾していると指摘しました。稲田さんは「国家国民のために、と国民の立場に立っては同義語だ」としましたが、大熊さんは「国家というと、その中に官僚が入る」と語りました。私もその通りだと感じました。ここで稲田さんは「日の丸官僚をつくることが大事だ」と述べました。

 この後、大熊さんとの厳しいやりとりが続き、「さきほど大臣は、日の丸官僚といったが、省庁別でない日の丸官僚の採用の話がなくなったのはなぜですか」と問いました。稲田さんはさきほどの後藤さんへの答弁の余勢をかって「それは基本法11条の、内閣人事局を設置する、が民主党政権で実現しなかったからです」と答弁。ここで、大熊さんは「それは幹部人事ですよ。内閣人事局は採用をするのですか」と聞くと、稲田さんは「採用はしません、すみません」と答弁撤回に追い込まれました。

 この後、国家公務員制度改革基本法の逐条ごとの実施状況の質問に窮した大臣はついに秘書官から六法全書(おそらく三省堂の「模範六法」)を手に取りましたが、開く時間がなく、大臣が六法全書を持ったまま、答弁席に立つという異例のシーンとなりました。

 

 このほか、日本維新の会の山之内毅さんがデビュー質問のなかで「稲田大臣の所信の中に農業の規制改革がなかった」とつっこむと、稲田規制改革担当大臣は「農業の改革についてはTPPに入ろうが、入るまいが、必要だと思います。ただ、幅広い議論が必要なため、産業競争力会議で議論し、必要があれば規制改革会議で議論する」と珍答弁。これは吹き出しそうになる珍答弁で、稲田さんが悪いわけではないのでしょうけれども、自民党がJA農協などに配慮しすぎている実態を感じました。

 きょうの審議は7時間に及びましたが、散会の5分前に、甘利明・内閣府特命担当大臣が別の答弁の中で「政権がスタートしてまだ2ヶ月。稲田大臣は我が党を代表する女性議員のエースだ」とフォローする場面がありました。しかし、稲田さんが要求大臣ではなく委員室にいなかった時間帯に、森まさこ少子化担当大臣が「私の所信表明の中で言及しています」として、自らの所信を朗読して、野党の委員に「よく読んでみてください」と促す場面があり、自民党お得意の女性同士、弁護士同士のたたかいも垣間見られました。森まさこ大臣は「民自公3党合意にもとづく子ども子育て3法の付帯決議(参院では19本)の中に幼児教育の無償化を入れたので、自民党公約に入ったのです」と胸を張りました。

 ところで、予期せぬ、後藤さんと大熊さんのリレー攻撃の後、2期生である後藤さんが質問を終えた直後の大熊さんに歩み寄り、名刺交換する場面がありました。行革、公務員制度改革の「民み共闘」の始まりです。私、誰と誰が名刺交換していたなどと言うことはあまり書きませんが、このシーンはうれしかったのでご紹介しました。

 法律、議事録、公約を追及していく。それを議事録に残していく。2012年6月15日の社保税一体改革3党合意で、2015年10月の消費税10%時までの「民自公」路線は確実です。3党の幹事長や国対委員長の覚え書きもいいですが、法律、議事録に残してしまった方が正統性が高い。

 そして、いずれ、言行不一致をつく。「至誠にもとるなかりしか」は同義語です。そうやって材料をとっていけば、いずれチャンスはきますから。ここで自民党は言質をとられようと答弁していても、いずれ言行不一致が出てくるのは政権を担う以上、あがなえないことです。運命に任せて、「いざとなったら、民主党よ、天皇陛下を守ってくれよ」と思いっきりやりたいことをやればいいのです。

 民主党は夏の参院選の改選議席を大きく減らしても、向こう3年間、衆参とも野党第1党はほぼ確実です。

[追記 2013年3月19日 午後1時]

 稲田朋美行革・規制改革相の所信表明は次の通り。

第183回国会 内閣委員会 第2号 平成二十五年三月十三日(水曜日)

○稲田国務大臣 行政改革、公務員制度改革、クールジャパン戦略、再チャレンジ担当大臣、規制改革を担当する内閣府特命担当大臣として、所信の一端を申し述べます。

 真の改革は伝統を守りながら創造することであり、不断の改革を行う必要があります。日本経済の再生に向け、規制改革の推進は極めて重要です。ひるまず、大胆に、迅速に規制改革を実現できるよう、取り組んでまいります。
 このため、新たな規制改革会議を設置し、議論を開始いたしました。当面は、雇用、エネルギー・環境、健康・医療といった重点分野を初め、経済再生に資するものから優先的に見直しを行ってまいります。
 行政改革については、行政機能や政策効果を最大限向上させるとともに、政府に対する国民の信頼を得るために、極めて重要な取り組みであります。行政が経済社会の変化や国民のニーズに的確に対応したものとなるよう、本当の意味での行政改革に積極的に取り組んでまいります。
 このため、本年一月に、全閣僚から成る行政改革推進本部を設置するとともに、そのもとで行政改革に関する重要事項を議論するため、関係閣僚と有識者から成る行政改革推進会議を立ち上げ、二月に第一回会議を開催したところであります。
 今後、当本部や会議において、幅広いテーマについて検討してまいりたいと考えており、当面は、無駄の撲滅、独立行政法人改革、特別会計改革という三つの分野を中心として、しっかりと取り組みを進めてまいります。
 公務員制度につきまして、公務員が誇りと希望を持って国家国民のために職務に邁進し、そして、若い優秀な人材が公務員を目指すことができる制度とすることが必要です。
 公務員制度改革は大変重要な課題であることから、これまで国家公務員制度改革基本法に基づき提出された法案に対してさまざまな議論があったことも踏まえ、過去の経緯の総括を行った上で、必要な改革を進めてまいります。
 クールジャパン戦略について、その推進は、安倍政権が直面する日本経済再生のための喫緊の重要政策の一つです。各府省及び官民連携によるクールジャパン戦略の推進、発信力の強化を行ってまいります。
 また、何度でもチャレンジできる社会、一度やめても、もう一度職場に復帰できる社会の構築に向けた再チャレンジ支援に関する取り組みを進めます。
 公文書の管理については、公文書が民主主義の根幹を支える基本的インフラであることを踏まえ、制度の適正かつ円滑な運用に努めてまいります。
 官民競争入札等・公共サービス改革については、より良質かつ低廉な公共サービスを提供する観点から、公共サービス改革法に基づき、官民競争入札等を着実に推進してまいります。
 新公益法人制度について、その移行期間が本年十一月末に終了することを踏まえ、移行を希望する法人が期限内に申請できるよう、法人の支援に取り組むとともに、引き続き、公益認定等委員会と協力して、柔軟かつ迅速な審査に努めてまいります。
 以上述べてまいりましたように、改革を進めることにより、日本の経済再生とあわせて、社会正義の実現に向けて、職責を全力で果たしてまいります。
 平井委員長を初め、理事、委員各位の御理解と御協力をよろしくお願いいたします。

[追記おわり]

【野党6党の予算修正実務者協議スタート】


[写真]野党6党による本予算修正の実務者協議の第1回会合、玉木雄一郎さんのブログから。

 衆・予算委が休みだったこの日、衆参野党6党(民主党、みんなの党、日本維新の会、生活の党、社民党、みどりの風)が本予算修正の実務者協議をスタートしました。民主党から玉木雄一郎さん、岸本周平さん、みんなの党から柿沢未途さんが出席。衆・予算委での質問時間を社会党結党58年目にして初めて失った社民党の新人議員も集まったようです。ぜひ、参議院での本予算修正に成功してほしいです。与野党ではなく、国会のためです。

 自民党の第2次与党期は、「暫定税率」「特別措置法」を積み重ねていって、自ら日切れ法案の国会対策で致命的なミスをおかしたガソリン国会により政権から転落しました。

 第3次与党期の自民党は手強いですが、とにかく、議事録に残していけばいつか自民党が政権をすべり落ちる日は必ず来ます。至誠にもとるなかりしか。言行不一致はないか。野党の仕事というのは、本質的には、それだけだという感じがします。


 

[お知らせ1 はじめ]

 「国会傍聴取材支援基金」を設けました。他メディアにはない国会審議を中心とした政治の流れをこのブログで伝えていきます。質素倹約に努めていますが交通費など諸経費がかかります。

 「国会傍聴取材支援基金」の創設とご協力のお願い

 ご協力ください。どうぞよろしくお願いします。

[お知らせ1 おわり]

[お知らせ2 はじめ]

 会員制ブログで今後の政治日程とそのポイントを解説しています。

今後の政治日程 by 下町の太陽

 最初の1ヶ月は無料で試し読みできます。取材資金にもなりますのでご協力下さい。

[お知らせ2 おわり]

[お知らせ3 はじめ]
 このブログは次のホームページを参考にして、記事を作成しています。

 最近の法律・条約(内閣法制局ホームページ)
 衆議院議案(衆議院ホームページ) 
 今国会情報(参議院ホームページ)
 予算書・決算書データベース(財務省ホームページ)

 衆議院インターネット審議中継
 参議院インターネット審議中継
 国会会議録検索システム(国立国会図書館ホームページ)

 民主党ニュース(民主党ホームページ)
 goo ニュース

[お知らせ3 おわり]