[写真]質問に立つ玄葉光一郎さん、2013年2月28日(木)、民主党ホームページから。
【首相訪米など外交に関する集中審議 衆議院予算委員会 2013年2月28日(木)】
民主党・無所属クラブ57人は、「全員が予算委員」という気構えでのぞんで欲しいし、結党以来初の「唯一の予算理事」である長妻昭さんはさしかえが利きませんので、プロデューサーに徹して、ドンドン先輩を起用して欲しいです。野党衆議院議員で、予算委員会の質問に立ちたくない人などイマドキいません。自民党国会対策委員会は「野党に審議拒否させないことが予算を早く採決する秘訣」と思っているようですが、実際には、「ドンドン審議したい」ということで、集中審議、修正案の提案理由説明と質疑などドンドンやって、本予算を会期末ぎりぎりまでしっかり審議して成立させる方が国益です。
玄葉光一郎さんが急遽、予算委員に起用されて、質問に立ちました。玄葉さんは在職19年目にして衆議院予算委員会での質問は4回目だったようで、少し不慣れでした。
その中で、天才政治家の片鱗を見せる場面がありました。
「例外なき関税撤廃」なのか、それとも「聖域なき関税撤廃」なのか。
私は非常に気になっていました。聖域という言葉は小泉元首相(自民党総裁)がキーワードにしましたが、Sanctuaryは「聖域、聖所、神殿、寺院」という意味だからです。
玄葉さんは安倍首相に対して、TPP(太平洋パートナーシップ条約)について、「安倍総理とオバマ大統領の間で、【例外】という言葉は使っていないと思うんですね。おそらく、【Sanctuary(聖域)】という言葉を使ったと推測いたしますけれども。あのー、これから、交渉に入っていって・・・」玄葉さんは一拍止めました。そして、パッと次のように聞きました。
「米(こめ)は除外を求めますね?」
この質問への首相答弁ははぐらかしに終わりましたが、次に立った前外務副大臣の山口壮さんに言質をとりました。
安倍首相は次のように答弁しました。
「選挙において嘘をついてはならない。(自民党内のTPP推進派とTPP反対派の)両派が合意できる一点を探したところに最終的に一致したのは『聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する』という文言にして、党の公約にしたわけであります。【聖域】とは何かと言われればですね、それぞれの国には、それぞれの事情、国柄(くにがら)があるって、それを守るためには、いわば関税撤廃できないところがあるんです」
つまり、自民党マニフェストの「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する」という公約が、オバマ大統領から「聖域」を設ける文書をとったことで、前提がとれた。だから、TPP交渉に参加できる、ということになります。そして、その「聖域」とは。それは、日本では「米(こめ)」であり、米国ではおそらく「自動車(トラック含む)」ということになるでしょう。
そして、この後の本会議の施政方針演説の中に「日本は瑞穂の国です」として棚田を守るなどと演説した部分は、報道によると、自民党農林部会との調整のうえで入った文言のようです。
一連の安倍答弁からすると、「聖域」とは「米(こめ)」のことであることは明らかです。すでに大統領との共同文書ができたので、公約は達成され、事前交渉に参加できると考えられます。
米(こめ)。
御神酒は日本酒であり、日本酒は米でできています。ちなみに酒税は戦前は国税収入のトップだった時代もあります。現在でも酒造業者は酒税を毎月末に申告し納税しなければなりません。消費税が年2回なのとは大きく事情が違います。これが影響してか、造り酒屋の息子から、自民党県議になり、衆議院議員になるという政治家キャリアが我が国にあります。これは、竹下登さんであり、金丸信さんであり、宇野宗佑元首相であり、そして、玄葉光一郎さんもそうです。
ちなみに、玄葉さんの実家である「有限会社玄葉本店」の大吟醸あぶくまは、インターネットでも販売しているようなので、興味がある人はこちらをクリックしてみてください。
[写真]有限会社玄葉本店の「大吟醸あぶくま」。
このように造り酒屋としての米の大事さと、税と酒、そして、自民党県議としての経験の中から、政治における「聖域」が「米(こめ)」であることを玄葉さんが知っていたことは間違いありません。しかし、玄葉さんは自民党猫の目農政のように、米を聖域として、米価を上げたり、細かい補助金制度で縛り付けるような政治家ではありません。ミッションスクール大学出身の初の外相として、タフな交渉をこなしました。こんな「非世襲7期生48歳の元外相」が自民党にいるでしょうか?民主党にはもう一人、「非世襲7期生48歳の元内閣官房長官」の枝野幸男さんがいます。
私も米(こめ)に関税をかけるのは当然だと考えます。沖縄県のサトウキビも。大豆、小麦、じゃがいもは、農業直接支払いの制度をうまく使えば農業者の生活は維持できるのではないでしょうか。
米を聖域にするのは国柄ですが、一人一人の有権者たる米農家はいつまでも、「米(こめ)は聖域」という意識でいると、「自民党・JA」の奴隷になります。田んぼを農業生産法人に貸したり、売れば、すぐに現金収入があったうえで田んぼは続きます。田んぼを潰してJAローンでアパートを建てるなど言語道断。ただ、複数の兄弟姉妹のうち、1人が農業を継いだ際に、現行の相続税制だと相続税額が増えかねない設計なので、ここは「聖域」として2015年1月の相続増税までに長期的な税制改正を検討してみる必要があるかも知れません。
米(こめ)の大事さを知る玄葉光一郎さん。ご存じの通り、第45回衆院選で民主党でただ一人、農政連(JAの政治団体)から単独推薦をもらった候補者ですが、TPPを推進する玄葉外相はJA福島会長から「あんたには何を言っても無駄だ」と言われたそうです。しかし、統一地方選に立てた4人の元秘書の候補の演説ですべてTPP推進を入れたと報じられています。しっかりグリップできているからこそ、TPPを推進できるこれが政治家です。2013年3月1日付け日経新聞でカーラ・ヒルズ元米通商代表の「私の履歴書」 が始まりました。
[写真]左から2人目はカーラ・ヒルズ米国通商代表(USTR)、3人目は渡部恒三通商産業大臣、四極通商サミット、会津・磐梯高原、渡部恒三さんホームページから。
現在のカーク通商代表という方のお名前は知らないし、そもそも通商代表は閣僚ではありません。それは別として、TPPのみならず、FTAAPなど、自由貿易としての日本の復活にかけて。かつて人情味がある通産大臣に涙した通商代表がいたとか、いないとかいう話がありますが、今は昔。血の汗流す、タフネゴシエーター玄葉外交の復活までこれから4年~18年ぐらいかかるでしょう。臥薪嘗胆です。そして、そのとき、桜田門外の変に倒れても「花の生涯だ」と言える玄葉さんであって欲しい。
当ブログはこれからも玄葉光一郎さんらと、自由貿易を全力で応援していきます!
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