[写真]前川清成ネクスト法相。
最高裁判所は、民法第900条第4項但書の「非嫡出子の相続は半分とする」との婚外子(たとえばシングルマザーの子、隠し子など)を差別する条項を憲法第14条「法の下の平等」などに違反すると決定しました。民法(明治31年6月21日法律9号)が日本国憲法違反とされたのは初めて。
海老蔵が隠し子報道ですぐ認知して、「かっこいい」と言われましたが、海老蔵が男を上げても、その子は、相続では「半人前」とされてしまうのです。今の日本では17人に1人は、ひとり親(シングルマザー)の子供であり、世帯年収は200万円以下という壮絶な状態にあります。親の平均年齢も最近では高齢化して40歳以上となっています。チルドレンファーストの民主党としては、生まれながらに子どもが差別されることは許せません
海江田万里ネクスト首相は記者会見で「差別ですね」と断言。「それはやめるべきだという考え方でありますから」「民主党はそういう考え方を国会が始まったら出していくということは続けていきたい」と語りました。
実はこの民法900条第4号但書を削除する法案は、先の通常国会に出されていました。第183参法5号で、民主党・みんなの党・社民党の共同提出でした。しかし、自民党から「浮気が増える」と訳の分からないことをいわれ、付託すらされず、吊るされたまま廃案となりました。
「民法の一部を改正する法律案(第183参法5号)」です。
筆頭発議者は前川清成ネクスト法相。
法案の発議者は民主党・新緑風会から、小川敏夫さん、高橋千秋さん(前職)、桜井充さん、松野信夫さん(前職)、みんなの党の真山勇一さん、社民党の吉田忠智さんでした。条文は民法900条第4号但書を「削る」というシンプルな内容。施行日は「公布の日から起算して一月を経過した日」としていました。
前川さんは「非嫡出子かどうかなんて、自分が選んで生まれてきているわけではない。生まれによる差別そのものであり、自分の努力ではいかんともしがたい差別であり、差別と同じだ」と喝破。
「この種の差別を是認しないことが近代人権思想の当然の結論だ」と語っています。
たしかに、その通りだと思います。いわば「差別しなさい」という条項が民法900条第4号にきょう時点で残っているということです。このような「生まれながらに差別しなさい」という条項が民法にあると知り、驚愕しております。
民主党は4日コメントを発表し「民主党は1998年以来、16回にわたって法案を出してきた」としました。ただ、これはほかの内容とセットになっており、婚外子差別を抜き出した法案は第183通常国会が初めてでした。
これについて、自民党の中川雅治・政策調査副会長(清和会)が「浮気が増える」との呆れた理由で法案を門前払いしたことが分かりました。
婚外子の相続が「2分の1」から「1」になったら浮気が増える。たとえば、バブル期に養子が29人いたという富豪がいたそうですが、この場合は、相続税の人的控除が2億9000万円になり、今の税率50%ならば1億4500万円の節税になります。しかし、養子ではなく、婚外子では養育費がかかりますがから、相続対策としての隠し子作りなどありえません。
この発言をした中川議員は麻布中学・高校、東大法学部、大蔵官僚、自民党議員という現在日本の最大のエリートコース。
そして中川さんの奥さんと町村信孝清和会長は、祖父母が同一人物。奥さんのお父さんは、内務省特別高等警察課員から自民党議員というエリートコースを歩んだ原文兵衛元参議院議長。中川議員は大蔵省から、義父が大臣を務めた環境庁に転じて事務次官になり、義父と同じ選挙区から参議院議員になっています。「浮気はダメよ」の中川さんは、愛妻家とかでなく、浮気をすると、すべてを失う。未入閣なのにすべてを失う。こういった清和会的理由で、「浮気が増える」。
それに対して「正義」と、「チルドレンファースト」を平然と突きつける民主党。
前川法案は短いものですので、全文引用します。
[民法の一部を改正する法律案(183参法5号)から全文引用はじめ]
民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
第九百条第四号ただし書中「、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし」を削る。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。
(経過措置)
2 この法律の施行前に開始した相続に関しては、なお、この法律による改正前の民法の規定を適用する。
[全文引用おわり]
以上です。
第185臨時国会では、閣法としてではなく前川法案で、衆参可決成立、公布、施行とまいりましょう。
ちなみに「非嫡出子」という言い方は「まともではない子」という意味合いにもなるので、「婚外子」という言葉で報道されているようです。
さて、第三者保証の禁止の法案では前川さんが答弁に立ちましたが、この中で、彼の正義感を感じる印象深いシーンがあったので紹介します。
2013年6月11日(火)の参法務委。
みんなの党の真山勇一理事の次の発言。
「民法といいますといわゆる基本法というふうに言われているものなので、それを変えるということの影響が大き過ぎるというような意見もあるわけなんです」「やはり今法制審議会が進行中であるということで、法制審議会の意見、パブリックコメントなど、そういうものを踏まえながら今後ももう少し慎重に審議、議論を進めるということも必要なのではないですか」との質問です。
前川さんは次のように答弁しました。
「長く続いたこの戦後の体制の中で、基本法を作るのが法制審だというふうなある種の誤解が私たち国会議員の側にも生まれているのではないかと。 釈迦に説法ですが、憲法41条で、国会こそが国権の最高機関であって唯一の立法機関でありますから、法制審が議論をしているから国会で議論をしてはならないなんということはあり得ないだろうと私は思います。私たちは、選挙民に選ばれて法律を作るために国会にやってきている わけですから、法制審が議論をしていようがしていまいが、国民の生活のことを考えて法律の提案をさせていただいて、そしてそれについて様々な意見を忌憚なく述べ合うと、私はむしろ当然だと思っております。」
参院奈良というと、妻殺し小沢グループで、小沢一郎氏がご遺族にお金をわたして裁判を取りやめてもらった中村哲治元議員のイメージがありますが、それとはうってかわって前川さんのような正義の政治家もいる。
仕分けされて前川さんが今ネクスト法相になっています。
民主党もまだまだ捨てたもんではありません。
◇
民主党が発表したコメントは次の通り。
2013(平成25)年9月4日
非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1と定める条項を違憲とする最高裁判断を受けて(コメント)
民主党政策調査会長 櫻井 充
本日、最高裁は、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1と定める条項を違憲とする判断を行った。
民主党は、今回の最高裁判断を歓迎する。
これまで最高裁は、1995(平成7)年の大法廷による合憲判断以降、2009(平成21)年まで合憲の判断を踏襲してきた。しかしながら、1995(平成7)年の判断において、5名もの最高裁判事が反対意見を述べており、また、その後合憲判断がなされたすべての場合において、反対意見や立法府による解決を期待する補足意見等が述べられている。
非嫡出子の相続差別は、生まれによる差別そのものであって、非嫡出子自身の努力ではいかんともしがたいものである。この種の差別を是認しないことが近代人権思想の当然の結論である。
民主党は、1998(平成10)年以降16回に渡って婚外子相続差別規定を削除する民法改正案を野党共同で提出してきた。加えて、2013(平成25)年2月27日に大法廷に回付されたことから、緊急な改正が必要であると考え、第183回通常国会においても法案を再提出した。
しかしながら与党は、私たちの議員立法に対して審議にさえ応じず、その結果、違憲判決以前に立法府の良識を示すことができなかった。
政府は、今回の最高裁判断を受けて、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1と定める条項を削除する法改正案を秋の臨時国会に提出し、成立を期するべきである。