【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

◎教育委員会を諮問機関に格下げの抜本改革法案 下村文科相が第186通常国会提出へ

2013年09月25日 10時39分17秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

[写真]自民党の下村博文・文科相(兼)五輪相。

 日本の教育委員会行政については、朝日新聞が圧倒的に強い影響力を持っています。私が聞いた話では、「広島支局時代に広島県教育委員会事務局だけを担当していた」ということで、朝日は県教委専任記者がいる。もちろん、高校野球もありますが、「県立高校の入学試験の概要一覧表」なんかも記者が打ち込んでいて、あれは人生にもかかわるので、若手とはいえしっかりと責任をもって、県教委事務局を担当しているそうです。多少の経費節減で状況が違うかもしれませんが、教育行政関係者は朝日新聞を購読しているので、その影響力は圧倒的です。

 2013年9月25日(水)付朝日新聞は1面トップで下村博文文科相から「今後の地方教育行政」について諮問を受けている中央教育審議会(中教審)が、地方教育行政の執行機関を教育委員会から首長に移す案を盛り込んだ中間とりまとめを9月26日に分科会で議論し、年内に大臣に出すといった趣旨の報道をしました。

 下村文科相ら自民党政権は第186通常国会(2014年1月召集)に、地方教育行政の組織および運営に関する法律などを改正する法案を閣法として提出する見通し。

 私も十数年以上、教育委員会の廃止も含めた抜本改革を持論としてきただけに、大いに応援したいところです。

 現在、衆議院では、維新の会が提出した「教育委員会廃止法案」(183衆法25号)が全会一致で継続審査となっています。このほか、民主党が出した法案も継続審査となっています。

 まず、読者の方に問いたいのは、おすまいの自治体の教育委員5人の名前を一人でも知っているか、ということです。政治・行政の基本は情報公開ですが、顔も名前も知らない委員に教育行政の責任を任せられません。たとえば、「私が解雇されたのは小泉首相のせいだ」という人はいても、「私が英語ができないのは中学校のころの教育委員の責任だ」と言う人を聞いたことがありません。

 地方教育行政の組織および運営に関する法律では、「都道府県、市町村に教育委員会を置く」(第2条)とし「教育委員会は、五人の委員をもつて組織する。ただし、条例で定めるところにより、(略)町村(略)の教育委員会にあつては三人以上の委員をもつて組織することができる」(第3条)となっています。
 そして、「委員は」「地方公共団体の長が、議会の同意を得て、任命」しています。「委員の任期は、4年」で「委員は、再任されることができ」ます。「教育委員会は、委員のうちから、委員長を選挙し」「委員長は、教育委員会の会議を主宰し、教育委員会を代表」しています。

 ところが、地方教育行政の長は、教育委員長ではありません。

「教育委員会に、教育長を置く。教育長は、(略)委員(委員長を除く。)である者のうちから、教育委員会が任命する」とあります。

 つまり地方教育行政の長は、教育委員長とは別にいる、教育長(兼)教育委員です。このことをどれだけの人が知っているのでしょうか。

 そして、「教育委員会の権限に属する事務を処理させるため、教育委員会に事務局を置く」とあります。新聞の地域面で単に「県教委は、」という主語では始まる記事は、この県教委事務局の課長などをさしている場合が多いです。そして、これは県教組によって、あるいは県内自治体でも温度差がありますが、教職員が県庁・市役所に入り、課長などを経て、教育長、市長になっています。たとえば神奈川県川崎市の前市長は76歳のときに今の市長に敗れ、3期12年務めた市長の座を降りましたが、「本当は(市長より)校長になりたかった」と落選の弁を述べました。教育長は、首長が副知事・副市長につぐ県庁・市役所採用の幹部職員を任命するケースと、県教組が推薦している教育委員会事務局の課長などを務めた教育委員が任命されるケースがたいていだろうと思います。この辺は、自治体によって、事情はかなり違います。

 朝日新聞が報じている案だと、教育委員会を執行機関から格下げし、教育基本方針などの諮問を受け、教育長に答申するといった機関になるようです。首長は教育長を直接任命・罷免できるようになるようですが、これはおそらく現在も事実上、首長と議会の関係と変わらないのではないかと推測します。

 今後は、教員の不祥事への対応を教育委員会が決定できるのかどうかという細部も詰めていかないといけないように思います。

 そして、最大の抵抗勢力は、教育委員は、「月1回の会議に出席するだけで月収20万円」というケースも多いようですから、全国の都道府県市区町村の教育委員、全体で9000人ほどいるはず。執行機関から諮問機関になれば、月給が下がる傾向になるでしょうから、抵抗があるかもしれません。ただ、維新の会の「教育委員会廃止法案」も全会一致で継続審査になっていることからすると、案外簡単に改正できて、「この65年間の教育委員会制度はなんだったのか」という日本的なあっけないフィナーレになるかもしれません。

 群馬県出身という理由だけで清和会の下村大臣ですが、さすがは民社党推薦で都議会に初当選した骨のある政治家です。

 下村大臣はよくやっていると思います。